法務・法律問題

April 30, 2019

用意しておくとよい質問について

なんだかよくわからないタイトルですいません。昨夜,「#新人法務パーソンへ」のタグ付きでつぶやいたことのまとめ+αです。
#いただいたコメント(ありがとうございます)を踏まえて,一部加筆した。

契約書の審査依頼という業務は,まあ,企業の法務ではよくある業務なんだけど,文案だけ送りつけられて,見てください,みたいな依頼のされ方をすることが多い。もちろん,それだけで対応可能な場合もあるし,そのほうが楽なのかもしれないけど,法務担当者としては,そこで一旦立ち止まって,依頼元の担当者に依頼の背景事情などについて,質問をしてみても良いのではないかと思うのでありました。

そういうことをする理由として重要と感じているのは,そもそも依頼元が送ってきた契約の内容をどこまで理解しているのか,ということを確認するという意味あい。内容を理解していることを前提に,中身の問題点を指摘して,自社にとっての改善案というか修正案を示せば足りるのか,それとも,そもそも中身を読んでないから,中身を理解してもらうところから始める必要があるのか,いずれかによって契約書の審査の結果の折り返し方は異なってくるだろう。
また,そもそも契約のスキーム自体に問題(個人的な経験の範囲では,税務面で問題が生じることが多かった)があるような場合とかは,契約書の中身を審査する以前に,スキームの組み直しが必要になる場合もある。そういう話には内部調整も含め時間がかかるので,そこの洗い出しは,早めにしておくべきなので,可能であれば,初動のところでそこの可能性は把握したいところ。

では,何を聞くか。契約類型如何に拘らず,汎用性のあるものとして,僕が思いつくのは例えば次のようなもの。この他に契約類型ごごとに定型的に訊くべき内容もあると思う(例えば,NDAで言えば,自社のグループ会社などへの開示が想定されているか。想定されているなら,外部への開示禁止の例外措置としての対応を想定することになるだろう)。ざっくり分類しつつ,挙げてみる。

スキーム自体の理解に関する部分
  • 契約書に出てくる当事者の役割。当事者の名前は冒頭にあることが通常なので,そこだけはざっと見た上で,それぞれが何をするという立て付け(のはず)かの確認
  • モノ,情報,カネの流れとその順序。どうやったらこちらがもらうものをもらえるのか,というところをざっくりと。いわゆる商流とか,サプライチェーンも訊ける範囲で。
  • 自社の供給するモノ・サービス等の内容と性質。役割とも絡むけど。製品とかに弱い部分があったりするなら,そこは把握しておきたいところ。
  • 自社がこの契約を締結することにより,いかなるメリットを享受するのか。メリットはないけどなんとなく,みたいなものについては,そもそも契約締結をすべきではないかもしれない。
関係者との関係
  • 契約書に出てくる他の当事者との取引歴。付き合いの度合いで,取れるリスクの度合いも異なるのはある意味当然のところだし,時として,同じ相手と締結している他の契約書との整合性を考える必要もある。なので,ここの把握は必要。できれば,当該相手とのトラブルの有無も訊けると,リスクの発現の仕方の有り様を考えるうえで有用。
  • 他の当事者との間の力関係。いろいろ修正意見を述べても,力関係で押し切られるなら,むしろ,覚悟すべきリスクの指摘と自社で取りうる回避策・軽減策を考える方に注力すべきかもしれない。その見極めのための材料として重要となることもある。
  • 契約書の修正余地については,力関係の反映ではあるけど,特にリクエストがあるかも訊くほうがよい。この辺は後で出てくる交渉の状況とも関係する。今更直せないというようなタイミングで依頼が来た場合は,苦言を呈したほうが良い場合もあるだろう。
時間軸
  • 直近の次のアクション。依頼元にいつまでに返事をかえすかの締切について,正味の見極めのために必要。場合によっては,次のアクションの方を遅らせるという手を講じないといけないこともあるかもしれないから把握しておきたいところ。
  • この契約書の締結及び履行完了前後に何かあるか。短期的な話というよりも長期的なお話。例えば,一旦NDAを取り交わして,情報をもらってフィージビリティ・スタディをして,共同開発の可能性を探って,行けそうなら共同開発を,というような段階的なお話の場合は,そのステップも踏まえて最初のNDAから見ておくほうが良いわけで,単体の契約書だけを考えるだけでは不十分なお話というのも往々にしてある。そういう全体像を把握することは重要。
  • 検討対象の契約書の締結交渉のステータスも大事。修正余地とかにも絡むけど。
依頼者本人との関係
  • 本人が特に気になるところ,見てほしいと思っているところ。現場を直接知っている人間の目から見て,懸念している点があれば,聞いておくのも良いと思う。

まあ,こんなところか。この程度のことは,法務担当者としては,訊く癖を付けておくとよいのではないと思う。
ここ一年の間にインハウスの面接を受ける機会があり,ある企業で模擬契約書レビューの面接があったのだけど,その場で,こういうことを訊くことができない候補者が多かった(それをしたこちらは高評価を得た)という話を面接側から聞いた。普段から意識していないと,そういう場でもなかなかやりづらいと思うのでありました。



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dtk1970 at 14:55|PermalinkComments(0)

April 21, 2019

Business law journal 2019年6月号



珍しく?,発売日の21日に届いたので,その日に目を通した記事について,箇条書きで簡単にコメントを(単につぶやいたものをまとめただけだけど)。出たばかりなので,一部はネタバレ防止の観点から内容を伏せるがご容赦あれ。

  • 無双様のレビューは,そこ来るかという某分野(ネタバレ回避のために伏す)。イラストで(?)有名な某先生の某書まではこちらも目を通したが,その先を視野に入れているのは流石。
  • ハーレム先生のあれは平常運転。この分野の契約書を読む層でこの連載を読む人がどれくらい居るのか,読者がこの記事を読んで参考になる確率がどれくらいあるのかは疑問だがそれは野暮というものだろう(だったら言うな)。
  • 中西先生の記事は,経験豊富な先生の要を得たまとめ,という印象。ただ,専任された社外取締役への対応の記事であって,如何にして選任するか,というところも知りたかったところ。選任過程のうちから,研修とかは始まる思うので。もっとも,そこは「中の人」(またはその経験者)が書くべきところなのだろう。
  • 何とかのデザイン,という記事は,てっきり某大陸に出られた某先生かと思ったら,別の先生の記事だった。内容は,まあ…(自粛)。とりあえずアルファベットが多すぎて縦書きだと読みにくいとだけ。
  • いつも楽しみにしている法務部インタビュー。コンプライアンスと言いそうなところをフェアトレードとしているのが味わい深いかも。
  • 知財法務の力も、権利化ありきのアドバイスはしない、というのは、説明で納得。
  • 内部通報制度の再点検の特集は,正直内部通報系のお話に接した機会がないので,正直ピンとこないところが多かったけど,弁護士の先生方の解説はなるほどと思った。でも,読み応えとしては,企業の方々のアンケートとかナマの声のほうがある。
  • DeNAの例の件の記事は,あまり分析っぽい感じがなくただの事実のおさらいという部分が強い印象だが,それはともかく,固有名詞については,全部イニシャルでもよかったんでは?まだ記憶に残っている人が多いだろうとはいえ。
  • 独禁法の道標は,労働法との交錯に関しての整理の仕方がわかりやすく感じた。


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dtk1970 at 21:02|PermalinkComments(0)

April 12, 2019

【改訂新版】良いウェブサービスを支える 「利用規約」の作り方 / 雨宮 美季 (著), 片岡 玄一 (著), 橋詰 卓司 (著)



著者の方々からご恵投いただきました。ありがとうございましたm(_ _)m。6年前に出たものの改訂版。
最初に著者紹介のところを見て,橋詰さんの紹介のところにマンサバが出ていないのを見るのは,諸々感慨深い(それと細かいことだが,雨宮先生のところの「司法研修中」は「司法修習中」ではなかろうか)。

それはさておき,法務とかでない方でも読める難易度(厚さや文体も含め)で,日本でサービスを主に国内居住者に提供しようとする側であれば,これを読んでおけば大怪我はしないところに収めていて,アドバイスも現場からも理解の得られそうな範囲で書かれていて有用度は高いのではないかと感じる。それ故にあちこちで出ている高評価も頷けるところ。

…とだけ書いても面白くないので,以下,細かいけど(前記の点は左右しないレベル),こちらが気になった点,疑問に思った点をメモ。
  • 海外からサービスを利用するユーザーとの関係で,利用規約上で準拠法を日本法,裁判管轄を日本の裁判所で,というのは,アイデアとしてはわからないではない。ユーザーが他所の国に提訴して,サービス提供側が他の国で裁判に巻き込まれたり,その際に他の国の法での裁判となることを避けるという意味ではメリットがあるのは否定しない。でも,逆の場合は?と疑問。適法に提訴できても,送達ができない可能性があり,そうなると,その場合には問題が生じるのではないか。そういう場合を想定する必要がないという判断があるのかもしれないけど,そのあたりの説明がないので,想像は付くものの,疑問は残った。
  • 雛形がDLの可能という表記が中程にしか無いのはいまいち親切ではないような気がした。雛形集の章の表紙?の部分に記載というだけではなく,表紙脇とかにも記載があってもよかったのではないか。まあ,迷ったらぐぐるとサポートベージが出てくるだろうから,良いのかもしれないけれど。
  • まずこの一冊,として紐解いてもらえるように,細かい話とかは捨象してあるように見えたのだけど,その分,この本だけで足りなくなった場合の対応の仕方の水先案内のようなものもあるとよかったのかもしれない。弁護士さんへの相談の仕方については,「おわりに」に書いてある内容が参考になるが,それ以外にも言及するべき話はあるだろうし,この先に紐解くべき分野ごとの書物,サイトの案内があってもよかったのではないかと思う。
  • これは,こちらの勉強不足ゆえのことかもしれないけど,不当条項規制との関係では,B2Cが前提となっているからか,消費者契約法の話に終止していて,債権法改正の定形約款の規制の話がでてこなかったような気がしたんだけど,それでいいのだろうか?商事法務の村松=松尾本のQ43を消費者契約法10条と改正民法548条の2第2項とは適用範囲や適用時の考慮要素も異なり,適用の先後関係もなく,両者が選択的に主張される可能性もあるようなので,B2Cであっても消費者契約法10条だけみておけば良いという話ではないのではないように思うのだけど…。


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dtk1970 at 22:23|PermalinkComments(3)

March 31, 2019

遅れ馳せのお返事をー司法試験・商法H29,30について

 先月,大杉先生とTL上で司法試験の商法の問題についてやりとりさせていただいたところ,先生の法学セミナー4月号の原稿を拝見する光栄に浴した。何かお返事を,と思ったのだが,書けないまま…3月の年度末に。

 原稿の中で,先生が「法科大学院での法曹養成や、この問題に関心のある方々には、商法という科目の枠を超えて本稿をお読みいただき、議論していただくことを希望している」と書かれておられた。能力はさておき,現時点では関心がないわけでもない。そこで,大杉先生に大きく反論する内容にはならないものの,燃料を投下,ではないが,能力不足を棚に挙げて,エントリにしてみる次第。H29については,現場で答案を書き(この年合格した。商法はA評価だった),H30についても諸般の事情で,受験生の答案を拝見する機会のある者としての若干の感想ということになる。



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dtk1970 at 21:00|PermalinkComments(0)

March 24, 2019

Business Law Journal 5月号



BLJの記事の感想を幾つかメモ。下書きモードでつぶやいたことやこちらの呟きへのレスポンスを基に。レスポンスをいただいた方にはお礼を申し上げる次第(なお,以下の内容の文責はこちらのみにあるのはいうまでもない)。

特集は債権法改正を踏まえた契約雛形の見直し。
大事務所の先生方の解説は,施行が近づいてきたからか,経過措置への言及が目立った印象。あと,契約不適合の扱いについての規定案が複数の記事で言及されていて,先生ごとの規定ぶりの差異も興味深い。
仕様書の精緻化が重要という指摘をされている先生が起案された条項案において,仕様書との合致について言及がないというのは?というところは疑問が残った。別の先生の案では言及があったので気になった。あと,仕様書の精緻化って何をするの?というところも疑問。この辺りは企業内で対応だろうから,外の事務所の先生には解説が難しいのかもしれない。この点,企業担当者の座談会でも,仕様書の記載の充実についての言及があるのは,上記とも符合していて,なるほどと思うところ。
とはいえ,それを企業内で誰がどのようにやるのか,ということを考え始めると簡単ではない(だからTLでレスポンスをいただいたのかもしれないけど)。商品役務やそれに関する技術についての知識が法務担当の持っているものでは足りない可能性もあり得るだろう。特に最近の流動化もあって,生え抜きでなく,かつ,法務部門しか経験のない法務担当者では,覚束ないというのが正直なところではないか。また,そもそも商品役務等が多く,仕様書の種類も多ければ,人的資源の面で対応しきれないというところもあろう。
そういう意味では,仕様書の内容の詳細について知見のある部署(品質管理などの部門になろうか)が法務部門とともにチェックする前提で,当該商品役務について,事業上での責任を負う事業部門が起案する,法務部門や品質管理部門は,研修や雛形の準備などにより,事業部門(所謂現場という範囲で考えるべきか,というと個人的には事業部門の上まで含めて考えるべきと思うが)が起案できるように,サポートする,というような役割分担が相応なのかもしれない。社内の役割分担は外部からはわかりにくく言葉にしにくいように思うが,上記の限度のことくらいは言えるような気がする。


長くなったので,残りについては箇条書きで,順不同でメモ
  • BLJ独禁法の道標。私的なenforcementの側面のまとめとして個人的には有益だった。このあたり,司法試験の選択科目として勉強したときには,スルー気味だったので。特に証拠収集の手段のあたりは,証拠の偏在に対して,どこまでのことができるのか,という辺りが興味深かった。
  • DeNAの一連の事件についての記事は,今回は,当該会社をdisるだけになっている感もあるが,次回以降に話が続くみたいなので,様子見かと。
  • 成年年齢の引き下げの記事は,そういう改正があること自体忘れていたので,内容の詳細に初めて接し,単純な年齢の引き下げではないことに気づく(汗)とともに,実務対応上のポイントの指摘になるほどと頷く。消費者契約法H30年改正も知らなかった(汗)。
  • ハーレム教授の英文契約書応用講座。映画輸出ライセンス契約の話は興味深いけど,その種の契約を見る機会のある人ってどれくらいいるんだろうという疑問は感じないではない。
  • リコール対策のオーストラリア編は制度紹介それ自体興味深い(時間制限が厳格なのは大変そう)けど,運用実態も踏まえた相場観とかがないと,過剰対応になりそう。その辺りは,今が連載第1部だけど,第2部で対応されるのだろうか?
  • SNSについての人事労務/リスク管理の記事は,公式アカウントの運用については,ここまでやればそりゃ安全にはなるかもしれんけど,きっと面白くもなんともないアカウントにしかならんよなという感想。著者のお二方は,あまりSNSを利用したことなく,特に発信側に回ったことはないんだろうなと感じた。


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March 21, 2019

キャリアアップのための 知財実務のセオリー ―技術を権利化する戦略と実行― Practice of IP for career Dev. (ビジネスセオリー) / 岩永 利彦 (著)



長らく「積読」だったのだが,某用件で一読したので感想をメモ。 著者は,企業でエンジニアから知財部門に移り,弁理士を経て,弁護士になられた方。blogでの辛辣さも個人的には印象的。

僕自身は,企業法務の担当者としては,知財にそれなりの陣容が整っているところにしか席を置いていないので,知財が具体的にどういう業務をしているのか,正直なところ,よくわかっていなかった。本書は,知財部員のOJTのテキストとして優れているのみならず,知財は何をしているのか,知財以外の人にも解説する本としても優れていると思うので,法務部門の方も読んでいてしかるべき名著といえると思う。

何がすぐれているかというと,まず,例の使い方が挙げられる。つまり,同じ一つの発明(発明の内容も技術的知見に欠ける人間にも分かりやすい)を例にして,特許の権利化及び権利化後の活用の,それぞれの局面において,どういう点が問題となり,それについて何をすべきかがわかりやすく解説されている。
次に,要所要所ではいるまとめや概念の説明図が適切で,内容が理解しやすくなっている点も個人的には特筆に値すると思う。
もう一つ法務の視点から印象的なのは,エンジニアから知財に来る人に対する心構えとか契約書の審査などの業務に関するスキルについてのアドバイス。法的文書の読み方・書き方の辺りは,理系のバックグラウンドの人にはこういうふうに見えるのか,という意味で新鮮だった。特に,文書の書き方を身につけるための最高裁判例の写経というのは,司法試験の勉強で優秀答案の写経はしたことがあったものの,こういう文脈で写経というアイデアは思い至らなかったので,なるほど,と感心した次第。

他方,気になった点もいくつか。 そもそも,内容の大半は特許法の話で,意匠とか商標の話はあまりない。著作権の話はないに等しいので,「知財実務のセオリー」というよりも「特許実務のセオリー」という題名して,特許に絞ったほうが良かったのではないかという気がした。知財実務と言っても,特許メインでない知財実務もあるのではないかと思うのだが,どうなんだろう(正直わからない)。
また,知財実務の入り口を示すという感じではあるのだけど,この本の先を示すというのが割にあっさり目で,特に一人知財の方とかを想定するともう少し読書案内については詳しめでも良かったのではないかという気がするところ。
あと,「おわりに」で知財の名著は改訂版がでないと書かれているが,この本についても改訂版を期待したいところ。多くの部分は普遍的なところなので,それほど改訂すべきところは無いのかもしれないけど,特許法のH26改正後の実務や判例とかを反映する改訂は会ってしかるべきだろうから。レクシスで出していた本は第一法規が引き継いで出しているケースが多いように思うのだけど,この本はどうなっているのだろう?


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dtk1970 at 23:59|PermalinkComments(0)

March 17, 2019

That's NOT what I want

備忘のためのメモ。例によって,既につぶやいたこととも重なるが。 タイトルはこちらの曲の一節が脳裏をよぎったので,もじってみた。

 

某芸能人の某薬物事件(以下の内容に関係ないので,伏せる)に関連して,出演等した作品の回収・配信停止などが問題となっている。 性犯罪のように,犯行を犯した人間の声や姿に触れることで,被害者にフラッシュバックが生じる懸念があるような事案は別の考慮が必要かもしれないとしても,薬物事案のようなものについて,被疑者となった人間の過去の作品について,発売を自粛したり,回収したりする必要があるとは思えない。被疑者が罪を犯したのであれば,その点について,個別に刑罰に服せば足りる話であり,作品と作者は別のものである以上,作品に罪はないはず。そして,一つの作品が世に出るまでには,多くの人の手がかかっていることからすれば,特定の誰かの行いのせいで,作品自体がどうにかなるのは,罪のない他の関係者との関係では,その方々の努力の成果を一方的に奪うことにもなりかねず,妥当とは言えないと思う。

…というようなことが言いたいのではなく,回収等の騒ぎの中で,配信物の音楽が聞けない等の事態が生じているようで,そちらが気になるところ。僕自身は円盤で購入できるものは購入するようにしていて,配信物はあまり購入しないのだが(配信のみの場合などにやむなく購入等の対応をすることはあるが…その種の事態に僕自身は今の所は遭遇してはいない),配信側の都合で購入したはずのものが鑑賞できなくなるのは,作品の受け手の一人としては,困る。そもそも購入などしていない所謂サブスクリプション型のものについても,同様に聴けると理解していたものが聴けなくなる,という事態が生じるのであれば,それも同様に困る。

こういう事態が生じるのは,今回のような事態に際して,何もしないでいると,そのことに抗議する人たちが居て,それへの対応との兼ね合いなのだろう。そういう立場の人に理を尽くして説明するしか無いのだろうが,理を尽くして説明して納得するかどうかは別の話。事態が炎上し続けることも想定は可能だろう。そういうときに,僕も,自分が配信側の法務担当者であれば,選択肢の一つとしてこういう対応は思いつくだろうし,対応策の案を考える中には含めるだろう。そういう立場であれば。

とはいえ,受けての側からすれば鑑賞したいものを好きな時に自由に観賞するために,費用を支払っている以上,その自由について,如何なる理由であれ,他人から干渉されたくないし,そういう危険込みのものは,どういうものであれ,僕は欲しくない。僕が欲しいのはそういうものではない。 (ついでにいえば,どなたかが指摘されていたが,配信側が勝手に変更できるならば,鑑賞できないようにすることで,人々の鑑賞可能な範囲をコントロールすることもできることになりかねないわけで,これまた危険な気がする)

サブスクリプションとかが全世界的に流行っているのは知っているが,それでもほしくないものはほしくない,と言い続けることも重要だと信じているので,自分の備忘のためにメモしておく次第。個人的には可能な限り配信系は避けていくつもり。

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March 09, 2019

原発訴訟 (岩波新書) /海渡 雄一 (著)



出てしばらくした後に,戦士さんのエントリを見て,買うだけ買って(挟んでいるレシートを見たら2012年2月の日付だった:発行は2011年11月),長らく放置していたが,今更ながら目を通した。 福島の事故のすぐ後の時点での原発訴訟の現状について,原発を批判する側の弁護士さん(某政治家の配偶者で,その関係のエピソードも出てくる)の手による解説。ベテランの弁護士さんだけあって,ある程度冷静に過去の原発に関する訴訟について,振り返ると共に,今後(上記時点での今後だが)の展望も語る本。

福島の事故から相当の時間がたった時点で,司法試験,修習が終わった後に読むと,まず,行政訴訟の解説として,実例があるのが分かりやすいと感じた。 また,原子力発電の仕組み及び訴訟を取り巻く種々の事柄についての解説も分かりやすかった。
次に,裁判所が,所謂「原子力ムラ」寄りの判断をしがち(例外がないわけではない)なところ,それでもなお,先生方が,闘争を続けて,少しづつかもしれないけれども,成果を出していることに,原発に対してのスタンスは抜きにして,僭越ではあるが,素直に敬意を評したいと感じる。背後に支援してくれる人々がいることがあってのことなのだろうが,諦めないことの重要さを実感する。

この本が出てきてから,原発及び原発訴訟についても,更にいろいろなことが起きているので,この本の続編を期待したいところ。この国に原発が既に存在している以上,好むと好まざるとにかかわらず,原発については,その負の側面も含めて,理解をしておくことが望ましいと考えるし,理解をする上では,裁判に関する側面からのものではあっても,理解を助ける良著だと思うから。



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March 02, 2019

裁判官は劣化しているのか / 岡口基一 (著)



何かと話題の岡口裁判官の本の感想をメモ。

第1章では,御本人の来歴とか思い出話とか。「要件事実マニュアル」が如何にして作られたか,作り得たのか等の話が面白い。また,同書が出版に至った経緯,及び,同書についての裁判所内部での圧力を如何にしてはねのけたか(共に某元有名判事が関与していた…)点も面白い。

第2章では,かつての裁判所における「智」の継承について語られていて,結果的に要件事実入門の入門みたいな形になっている。御本人のSNS上での発言を見る限り,意図的にそうしていたようにも見える。本来,当事者の主張の整理のためにあった要件事実論が,事実認定の場面でも使われるようになったという指摘や,学者と実務とでの要件事実についての理解が食い違ったままである点についての指摘が,個人的には興味深かった。

第3章では,裁判官の劣化について語られている。劣化の原因として,「飲みニケーション」の不足と新様式判決への移行が槍玉にあがっている。
これらについて,そもそも裁判官が本当に劣化しているのかどうかについて,コメントできるだけのものを僕は有していない。
また,新様式判決の移行についても,判決起案が省力化できるようになったというのであれば,その事自体は評価すべきだろうし,岡口さんも,その点は評価はしているようだった。むしろ,時間を要する反面で,法的な整理を緻密に行い,その過程が「当事者の主張」欄に可視化されていたことで,誤りを減らす,若手裁判官の理解の正否がわかり指導しやすかった,等の旧様式のメリットが失われた点は他の方法でカバーすべき話だったのではないかという気がしないでもない。
そして,「飲みニケーション」については,世代的にはそういうものの恩恵に預かった口ではあるが,個人的には,そういうものを嫌がる世代の気持ちもわかるような気がする。なので,そういう場でなければできないと考えられる理由を解消する方法を考えたほうが良いのではないかと感じた。そのためには,何よりも,まず裁判所全体としての余裕が必要だろうし,その余裕のためには裁判所のリソースの増加が必要なのだろうけど。

最終章では,現状で可能な改善策についての提言がある。弁論準備の場での両当事者代理人弁護士も交えての「当事者の主張」の整理と,司法修習中に要件事実をしっかり自習しろ(そのための手段として,岡口裁判官の「要件事実問題集」がある)という辺りが,提言の中心に見える。
前者は,裁判官が心もとないとなれば,そうなってもおかしくないという程度のことは推測はできる。後者については,修習では民事裁判以外もあるし,他の科目も含め,色々やる中で,あれをやるのは正直重荷に感じたので,結局手を出さなかった(大島判事の本と心中覚悟であの本だけをやったが,少なくとも二回試験では,不可にはなることはなかった)。それでよかったのかというとやや疑問だが,確かに修習が終わった後であの問題集をやる気力はないので,その限りでは適切な指摘なのだろう。




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dtk1970 at 20:39|PermalinkComments(0)

February 28, 2019

ご利益のほどは

時事ネタからは距離を置くことを心がけているのだが,思うところあって,若干のメモを。

某皇族の関係で話題になっていた某氏がUSでのLLM*1の後,NYBarを受験するという報道があり,日本での弁護士資格がないのに,NYの資格を取ることの意味について疑問を呈する声を見た。僕も,その後で日本の資格を取ったものの,USでのLLM+NYBarだけの資格で仕事をしていた期間がそれなりにあるので,過去のそのような経験から若干のコメントを。当然のことながら,以下は当方の経験に基づく感想(当然のことながら,僕自身に有利な形での,ある種のポジショントークというか色眼鏡での評価が含まれる)なので,そういう意見もあるという程度に過ぎない。

また,以下では,USでのLLMそれ自体のご利益については,省略する。英米法の知識だの何だのの知識の習得のご利益はそれなりにあるとは考えているが,その話は本題とは直接関係ないと思うので。
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February 24, 2019

Business Law Journal 4月号



BLJの感想を箇条書きでメモ。下書きモードでつぶやいたことを基に。

第1特集について:
  • 冒頭の戦略参謀になれという記事は,反論しづらい位ご説ごもっともな感じ。特に事後に勉強会をやってというのは,素晴らしい。でも,他方で,会社全体がM&A慣れしているところでないと,いろんな意味で相当大変なことになるだろうし,法務側についても,M&A対応に割けるリソースがどこまであるのかを考えずにやろうとしても,大変なので,こういうことが言えるだけの前提条件の確認は必須だよな…と思うのでありました。
  • 特集の題名から執筆を予想した人の多かった(僕もそうだけど)柴田先生の記事は,手堅いとは思うものの,新味に欠ける感もあって,先生もご多忙なんだろうなと謎の感慨を抱いたのでありました。
  • 法務DDのメリハリの付け方については,なるほどというところ。個人的には,DDが限定的な場合には,いきなり合併せずに,一旦子会社化して,対象会社に問題がないか確認すべき,という指摘がよかった。その辺りで,困った経験がないではないので。
  • PMIの進め方は,こちらが経験した範囲から考えると,総論としてはなるほど,というところ。もっとも各論レベルでは色々あるだろうけど。各論レベルではIT(システム統合とか)や労務(労働条件のすり合わせ)とかが大変な気がした。
  • 企業の担当者のコメントも,大半は,外部弁護士としてM&Aの経験のあるインハウスの話で(第2特集の内容とも関係して,事務所からインハウスへという人の流れを受けてのことなのだろうけど),そういう方々は,それまでの知見でカバーできる部分がある反面,そういう経験のない人がやる場合にどうするかという話があまりないのは,寂しいところ。
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dtk1970 at 21:00|PermalinkComments(0)

February 23, 2019

儀式と言えるのか?

さて。昨日の某宴会では,打ち上げ参加者については,併催の勉強会を適切に野次ることが想定されていたようだった。しかるに,うまくできなかった。野次るのにはスキルと人徳がいるところ,両者(特に後者)が欠けていたためと思われる。悔しいので,一点についてだけ(他にも野次りたいことはあったが色々考えてネットに書くのはやめておく),その後に考えたこと等も含めつつ,エントリを書いてみようかと。以前書いたこととかぶるかもしれないけど,その点はご容赦あれ。
*以下については,@keibunibu先輩からのご示唆を踏まえております。ありがとうございますm(_ _)m

ーー

会場で,業務効率化の一環として,@kataxさんが,NDAなんてセレモニーだから内容吟味する時間をかけないという趣旨のコメントをされていた*1。その種の物言いはよく聴くところ。僕が勤務していた某米系企業日本法人でも直属の上司の米人はそういうことを言っていた*2。確かに,NDA書面は,大量に締結することになるものの,その御利益が見えづらい。情報のやり取りに問題がなければ,NDAに基づき相手と議論することもないし,そもそもNDA違反で紛争になったという話もあまり聞かない*3から,そういう考えになるのも理解不可能ではない。

しかし,ホントにそこまで言い切って大丈夫なの?と思うのでありました。確かに,セレモニー的に見えて*4,内容をきっちり審査せずとも実際問題として大丈夫ということもあり得るし,NDAという名前の書面全体にその種の書面が占める割合は,低くないとは思うのだが…。

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dtk1970 at 13:08|PermalinkComments(0)

February 17, 2019

BLJ3月号 2019法務の重要課題



年ごとの法務の課題について考えるという特集もブックガイド同様にBLJ誌上で定番化しているように思われる。定番が多すぎると雑誌がマンネリ化するような気もするが,企業法務界隈の世間相場を知る手がかりとしては有用なので,定番化が正当化されたということなのだろう。特集についての個人的な感想を箇条書きでメモしておく。

  • グローバル化への対応,ビジネス支援の強化という辺りは,まあ,そうだろうなというところ。後者については,昨年話題になった某報告書とかの影響もあるのだろうか。
  • 債権法改正周りは,法務内での準備はするとしても,法務外への説明,約款などへの反映はまだ道半ばというところが見受けられたのは,施行までの日程を考えるとやむを得ないのだろう。
  • 外部弁護士の活用,というテーマについては,費用コントロールに関する指摘や起用する弁護士のポートフォリオの拡大というところは興味深い。個人的には,後者の過程で,年代的に上になりすぎた先生との顧問契約を解除する際の留意点なども知りたいところ。
  • 業務効率化周りも興味深いが,最新技術の活用という話ではあるが,他方で,自分たちで手を動かさなくなることで,能力を養うまたは維持する機会が減るという側面もあると思うが(以前某先生がTL上で指摘されていたが),その辺りは今後問題になるのかもしれない。
その他の記事で目を通せたものについても,感想を,これまた箇条書きでメモ
  • ZOZOTOWNの法務のインタビューは,某騒ぎがあったこともあり,タイムリーさが印象的。経営者リスクに関する問いに対する応答が興味深い(詳細は略)。
  • 確約手続についての解説は,不勉強で知らなかったので,有用だったが,確約計画について公取が何をどこまで求めるかによっては,事業者側の負担が過度なものとなる危険があるという指摘が印象に残った。その辺りの事例の蓄積による”相場観”めいたものができないと,使いづらくなるかもしれない。
  • カーブアウトM&Aの解説は,カーブアウトということからすれば,そうなるだろうな,という印象。


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dtk1970 at 00:37|PermalinkComments(0)

February 11, 2019

相続道の歩き方 / 中村 真 (著)



漫画入りblogでお馴染み(?)の,中村"マコツ"真先生の一冊(ちなみにご自身の宣伝エントリはこちら)。箇条書きで感想をメモ。

  • 先のエントリで紹介した,相続事件の21のメソッドが,実務的に悩みがちな点を事例に基づき解説している感じなのに対し,本著では,相続実務について,相続前でできることから初めて,遺言相続の場合と法定相続の場合に分けて,時系列に沿う形で,平易に解説してくれている。その意味では,2冊のうち,こちらから読んだほうが良かったかな,と感じたところ。(内容的に込み入っている遺留分周りの話は必ずしもわかり易くなかったが,制度そのものに起因する話だと思う)。
  • 手続き的な事項(例えば公正証書遺言作成時に必要な書類とか)についても,一定程度カバーされているので,実務的にも便利そう。
  • blog同様のノリではあるものの,解説の丁寧さは,前に書かれた法律相談本と同じ感じ。
  • 原稿の遅れのために,相続法改正が成立したことをうけ,改正法についての解説もある。これはこれで,個人的には助かる。
  • 漫画も上手いと思うけど,絵のセンスは古めかもしれない。
  • 相続実務の入門書,という立ち位置のようなのに,参考文献というか,further readingsについての記載が無いのもいまいち。
  • 実務家及びその予備軍が想定読者層の割に,判例とかの出典の明示が必ずしも十分でないように思われるところがあるのは残念。索引も欲しいところ。
  • 個人的な好みの問題だが,この字組は,紙面がうるさく感じられて,必ずしも読みやすくないように感じた。


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dtk1970 at 23:00|PermalinkComments(0)

February 03, 2019

こんなところでつまずかない! 相続事件21のメソッド/ 東京弁護士会親和全期会 (著)



この歳になると,相続事件について友人知人関係からいつ訊かれてもおかしくないので,購入。新人・若手弁護士向けに,この種の事件の悩みどころ等について,経験談を踏まえて解説した本。

相続事件は,同年代の話を聞いていても,ある種身近に感じられるようになってきたものの,司法試験とかで親族相続法についてそれほど真面目にやったわけでもないのと,何より,制度が複雑(しかも最近法改正もあったし…)ということもあり,とっつきにくい感もないではない。とはいえ,諸先輩の,いかにもありそうな体験談に基づく解説は,紙面がよく整理されていることもあって,非常に読みやすく,学ぶところも多かった。

もちろん,これだけ読んだだけで,すぐに何かができるようになるわけではないが,不安が和らぐことも事実なので,このシリーズは他のものについても,時期を見て,目を通しておきたいところ。業務としてやる・やらないと関係なく,ある種の基礎教養という意味で。





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dtk1970 at 22:32|PermalinkComments(0)

January 25, 2019

法務担当者による米国民事訴訟対応マニュアル /三輪 泰右 (著), 池田 俊二 (著), 三橋 克矢 (著)



出版時に確保していたものの,長らく積読だった一冊。もっと早く読んでおくべきだった…。
財閥系大手電機メーカー法務部の方々の手によるもので,米国で民事訴訟の相手方とされた際の対応についての解説。日本企業が被告等になった場合の対応について解説したものなので,こちらから提訴する場合における特有の問題,たとえば,どこで提訴するかのフォーラムショッピングや,弁護士選びのいわゆるビューティーコンテストのような事柄についての解説はない。とはいえ,そういう事例よりも巻き込まれる事例のほうが多いだろう。訴訟の進行に応じ,各段階ごとにすべきことについて,平易にかつ簡潔にまとめられているので,有用だと思う。対応の詳細については現地弁護士と相談することが必要になるので,相談の前提となる知識及び「中の人」のすべきことについての解説という意味では,詳細になりすぎず,手頃な分量にまとめられている点も良いと感じる。

従前のエントリでネタにした関戸先生たちの本が,あくまでも,外部弁護士側の視点で書かれているのに対し,会社の法務という「中の人」の立場から書かれている。訴訟費用の予算取りとか,和解受け入れについての社内調整といった,「中の人」にとっては通常必要となるプロセスについての,経験に基づく解説が興味深かった。 先に挙げた関戸先生たちの本と共に読むことで,いかなる対応が必要になるかという点がより立体的に理解可能となると思う。事実,参考文献で,先に挙げた本の元の本も挙げられている。なので,両者併読を推奨。

この他個人的に印象に残った点をいくつかメモ
  • 個々の議論の根拠となる法令または判例・裁判例について脚注で言及があるのは,ネタ元にあたりやすいという面で良い。 
  • 先の関戸先生以下の本についての感想の中で書いたことと関連するが,様々な申立のサンプルが含まれているのは有用で良いと思った。訴訟の内容に関する部分の記載が省略されているものの,どういう感じの書面になるのかのイメージは相対的にはしやすくなるので。 
  • トライアルそのものについての対応よりも,そもそも如何にトライアルに至らずに済ませるかということに関しての解説が多かったのも印象的。解説にあるようにトライアルまで行ってしまうとどうなるか読みにくいし費用もかさむから当たり前なのだが。 
  • 正直,管轄周りの議論がわかりにくかった。解説は極力平易にしようとされているので,もともとわかりにくいということの反映と思われる。 
  • 訴訟ホールドについては,こちらで前にエントリにしたように,四半期に一度程度の周期で繰り返すことが重要と思われる所,その辺りの記載があまりなかったのがやや残念。一度出して終わりではないはずなので。


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dtk1970 at 23:30|PermalinkComments(0)

はじめての著作権法 (日経文庫) /池村 聡 (著)



この分野に詳しいが故に点が辛い(と思われる)戦士さんが,比較的高評価(と,僕は理解した)をされていたことなどもあり,買って読んでみて,雑駁な感想をメモ。そういう次第なので,まともな紹介は先にリンクした戦士さんのエントリを参照のこと。

個人的には,パーソナルな事柄(黒歴史に属すると思われるものも含め)や世間の耳目を集めた事柄を素材に,正確さよりもわかりやすさ優先で,初心者向けに著作権法を読みやすい形で解説した良著,という印象。戦士さんが,書かれているように,マニアックな話も含まれていて,そこは,初心者向けとしてどうなのかというところはないではないけど,多少はマニアックな話があったほうが,初心者をマニアに誘ううえでは適切なのだろうと思うので,個人的には特に気にならなかった。
こちらは,冒頭に出てくる,著作権オタクとしてイニシャルのあがっている3名の方についても,最後の1人は皆目検討もつかない(最初のお二方は,見当がつくけど)程度の人間なのだが…。

類書という意味では福井先生の本が想定可能なのだけど,福井先生の本と違うのは,発売時期と若者向けに限っていない点と,文化庁の「中の人」をやられていた際の経験談及び経験を踏まえてのコメントがある点だろう。どちらも良い本だと思う。

この手の本は時事ネタを使っている分,風化しやすいし,時事ネタは,知らない世代にとっては,却ってわかりにくいと思われるので,適宜のタイミングでの内容のupdateを期待したいところ。



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dtk1970 at 00:48|PermalinkComments(0)

January 05, 2019

BLJのブックガイド(2019年2月号)特集の感想



遅ればせながら,毎年恒例のブックガイドの感想をメモしてみる。
まずは,どう考えても手間暇の膨大なこの特集が続いているのは,凄いと思うので,編集部及び関与された執筆者他の皆様に,経緯を表する次第。

といいつつ,全体的な印象としては,なんだか発散気味な印象。純然たる法務分野以外の本への言及が多くなったから,そう感じてしまったのだが。

確かに,純然たる法律または法務業務に関する本だけ読んでいればよいというものでもないし,特に後者については,そもそもその外延が明確とは言えないから,多少は広めに紹介の範囲に入れるという選択肢も理解はできる。しかし,今回は,外延部分又はその外に属するものが多すぎると感じたし,肝心の中心的部分についての紹介が薄くなってしまった感があって,その点,個人的には違和感が残った。
もちろん,外延又はその外に属する部分についても,取り上げられたのが,旬の分野であるともいえることから,取り上げたことが無意味ということはなく,相応の意義はあると思う。しかし,読者層にばらつきがあることを考えると,これで良かったのか,という疑問は残った。長年読んでいるような人間には,こういう回があっても悪くないのだけれど,はじめての読者にとってこれでよかったのか,というと個人的にはやや疑問。

個人的には定番本についての,より突っ込んだ議論(もはや古すぎて役に立たないというような意見が出る余地のあるものもあったので)を見たかったという気がした。
また,個々の執筆者が紹介されていた本の中では,これから刊行予定ではあるものの,アルプスの方の「米国法適用下における商取引契約書」が気になったので,見つけ次第確保しようと思っている。

最後に,一番のお楽しみ?の座談会については,議論のかみ合わせが難しかったのかもしれないという印象。どういうメンバーなのかは,必ずしも定かではないが*,ある程度議論が進むような事前のお膳立てが必要だったのかもしれない。
*昨年の某やり取りを思い出したが,詳細は略

座談会で印象に残ったのは,債権法改正絡みで,某誕生本への言及がなかったのが残念(切られた?)だった反面,Aさんご指摘の京大系の学者の意見の相対化についての記載が興味深かったのと,内田講演録が読みたくなった(単なる野次馬根性)ことと,Bさんの某革命本と某戦略と法律本への辛辣なコメントのあたり。

…色々書いたけど,2020年版ではどういう形で特集が組まれるか,既に今から楽しみにしている。




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December 29, 2018

英文契約書レビューに役立つ アメリカ契約実務の基礎 /石原 坦 (編著)



買う・読む機会を逃していたのだが,先日ブックオフで見つけて捕獲して読んだもの。僕は,レクシスネクシス版を購入したが,今では第一法規で出版されているので,上記のリンクは第一法規の方に張ってある(なお,第一法規版との内容の差異は確認していない)。

英文契約書が,いわゆるグローバルスタンダードとなっているのは否定しがたいので,英文契約についての書籍が,その前提,つまり,特定の法域での法適用を必ずしも前提とせずに書かれることもあるが,本書はそれとは異なり,アメリカ法の下での英文契約の検討の実務に資する法律の解説をしている。USでLLMを修了された先生方のコラムも,実務の参考になるとともに,同様のコースを目指す方の参考になるだろう(個人的には,NY州の資格を取るためのプロセスの情報について,僕の頃よりも遥かに手間がかかる形になっている点が印象的だった)。

コンパクトな分量で,上記の範囲で,重要度の高い点を解説した本であり,網羅的ではないものの,出てくる頻度の多い点の解説になっているので,アメリカ法下での英文契約の検討をする上では,手元にあると有用と感じた。元はデータベース上の連載ということもあって,個々の章は読みやすくまとまっている。UCCの条文の摘示や,判例(裁判例)の摘示が細かくなされていて,必要に応じて原典まで辿りやすいことも有用度を上げていると思う。

個人的に一番印象に残ったのは,best efffortについてのNY州法下での規律についての解説。具体的基準がないと,best effort義務の違反を問えないことがある(むしろ問えるほうが例外的)というのを不勉強で知らなかったので(まあNY州法を準拠法とする契約を厳密にレビューした経験自体が多くないけど:勤めていたUS企業はNY州法ベースで雛形作っていなかったし(汗)),なるほど,と思った次第。
(解説の直接の題材はこちら,だが基準を明確に要求しているのは,こちらで,先の裁判例でも引かれてている)

もう一つ印象に残ったのは,FCPA違反防止のための契約上の手当てについての解説。FCPAの概要のまとめがコンパクトでわかりやすかったのと,手当として書かれているものが,勤めていたUSの企業で講じられていたのと方向性として同じだったので,なるほど,と思ったのだった。

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December 28, 2018

わかりやすい米国民事訴訟の実務 / 関戸 麦 (著), 高宮 雄介 (著), 森田 茉莉子 (著), 片桐 大 (著)



日本企業のための米国民事訴訟対策 」のupdate版,という感じの本。タイトルは変わっているものの,章立ては同じ。他方で,関戸先生単著だったのが,同じ事務所内で米国での訴訟に関与する先生が増えたこともあり,共著にしたとのこと(「はしがき」による)。

訴訟が提起されてから,トライアルまでのやり取り,トライアルを経て判決,上訴に至るまでの流れに沿う形で解説がなされていて,前著の読みやすさを維持しつつ,内容が更新されているのが良い。また,訴訟ありき,ではなく,訴訟の回避方法について,従前同様に相応の言及があるのも,好ましい。これらの意味で,米国での訴訟の可能性がある日本企業の法務部門では,手元においておくべき一冊ではないかと感じるところ。

再読(という言い方が適切かどうかはさておき)してみると,こちらの知識が増えたこともあり,なるほど,と思うことが増えた。特にこちらの日本の民事訴訟法の理解がました分,日本の訴訟法との比較での解説のわかりやすさがより良く実感できた気がした(特に当事者主義の徹底のあたりとか)。

解説としてはこれ以上は望みにくい気がしたが,いくつか,個人的に物足りなく感じたところなどをメモしてみる。
  • 前著への感想でも書いたが,個人的には要所要所での書式例がついているとなお良いのではないかと感じた。特にdiscovery前提のため,discvoery前の訴状段階では,主張が抽象的にとどまる反面,漏れがあると困る(放棄と取られる危険がある)ということから,広めの主張がなされるとのことだが,どの程度書かれるのか,というところが気になった。
  • eDiscoveryとの関係では,AIを使って費用削減を図る例が出てきているものと考えているが,その当たりの言及がもう少しあっても良かったのではなかろうか。費用削減は,当事者にとっては大きな問題なので。
  • 秘匿特権のところで,秘匿特権の放棄(waiver)と結論付けられた場合に,秘匿が認められなくなる(開示をせざるを得なくなる)範囲が今ひとつ実感できなかった。具体的なケースでの実例の紹介があったら良かったのではないかと感じた。




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ここしばらくの仕入れ

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 最近やってなかったので。一部ブックオフで買ったものも含む。 冬休みの自分に期待しすぎかもしれない…。 まりやさんのRCA時代のものは,そもそも持ってなかったし,聴いたこともなかったので揃える所存。今聴くと音作りに時代を感じたりする。

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dtk1970 at 19:38|PermalinkComments(0)

December 23, 2018

第2版 実務英文契約書文例集-サンプル書式ダウンロード特典付- / 黒河内 明子 (著), ムーン・キ・チャイ (著)




以前感想を書いた本
の,債権法改正を踏まえた改訂版について,目を通したので感想などをメモ。

手にとったきっかけは,毎度おなじみマンサバさんのブックガイド。内容については,昨年いささか意見を述べさせてもらったのと比して,概ね違和感はないものの,一つ違和感が大きかったのは,英文契約についての某書籍というか某辞典(敢えてリンクはしない)。かの本一冊を必携とするのは,ちょっと違わないか,と思った。内容的に有用なのは争わないにしても,高いし,重くてかさばって紐解きにくいので,必携と評価することには違和感があった。
(かの辞典については,増補版になって,CDROMがつかなくなり,文例のテキストデータが得られなくなったというご指摘も某先輩からいただいた。手でテキストを打つと,typoの危険もあるうえ,手間が面倒なので,この措置は改悪と思うので,余計に上記の違和感が加速された気がした)

とはいえ,じゃあ代わりは?と考えると,英文契約で一冊だけ,というと,なかなか思いつかない。個人的には一冊でなんとか,というのは不適切と思っているから。
敢えて一冊を選ぶなら?と考えてみると,おそらく一冊だけなら,きっと例文集が良いのだろうと考えるに至った。英文契約について悩むのは,自分でドラフトするとき,というのがもっともありそうな気がするし,その際は,例文があったほうが良いだろう。例文がしっかりしていないと,解説だけあっても,こと英文契約に関しては,結局どう書くの?というところははっきりしないかもしれない。逆にしっかりした例文があれば,記載の意味するところが不明瞭であってもそれを調べることは可能だろう。

そこで,値段,重さなどの点でお手頃で,広範な契約類型をカバーして,かつ,例文のしっかりしたもの,ということで考えてみると,今回ご紹介のこの一冊ということになろうと考えた次第(なので,その旨つぶやいた)。

USのローで教育を受けたUSの資格者で,USの法律事務所での実務後に日本の事務所で長く働かれている方(ゆえに日本の実務にも知悉していると考えられる)と,同じ事務所の日本人の日本資格者の方が共著の形で出来ている本書については,まず例文の質については安心して良いのだろう。
また,例文のワードデータをDL可能な点(初版ではCDROMだったが,最近はディスクドライブがない端末が多いので,二版ではDLの形にした,という対応の仕方も興味深い)も,本文を見て打ち込む手間及びその際にtypoの危険が少ないという点でも有用だろう。
さらに,書式例に修正を加える際に留意すべき点についても一定の記載があるのも間違いを減らす上では有用。
(なお,十分に明示的には語られていないようだが,書式例は,日系企業と外資との間の契約で,日系企業側に有利になるように起案されているものと思われる。読者層を考えれば当然のことだが,その点は明記すべきだったと思う。そういう前提で作られているのであれば,相手方側の立場でこの書式例を使う場合は,調整すべき点があるということになるわけで,その種の事態は,日本語の文例集でもあてはまるので,ことさらに言うほどのことではないのかもしれない。しかし,読者の文例の使い方が様々なものであることが想定される以上,念のために,注意喚起しても良かったのではないか*1)。

これらの点だけで,同様の条項に対する文例のバリエーションがあまり多くないという問題点を差し引いても,手元に置くべき一冊としての資格を満たしていると考えるところ。
なお,文例集なので,個々の文例についての解説はあっさりめ。ある程度英文契約について理解していないと,使いこなせないと思われる。*2

…というだけで終わってもよいのだけど,以下,気づいた点を箇条書きでメモ。前記の個人的な評価を左右するものではないが…。
  • 一般条項に関しての解説が,通知条項から始まるというのは,法的効果が通知によって生じることが多いことに鑑みてのことだろうけど,なかなか類書ではないのではないか。
  • 準拠法・紛争解決機関についての条項は,仲裁に付す前に課した相互交渉について,両当事者によって有効的に解決できないときには仲裁に付す,とあるものの,両当事者によって有効的に解決できないとまではいえない,と争うことで,仲裁に入るのを防ぐという攻撃防御が生じるような気がした。機械的に日数制限(起算点も規定した上で)で切る形を取るほうが無難なのではないか。
  • NDAの非保証条項の解説のところ及びその他のところで全部大文字にしている部分に関しては,そのような措置の淵源の一つとして,UCC2-316への言及程度はあってよいのではないか。
  • 売買基本契約のところで,USの再輸出規制との関係で条項を設ける場合について言及があるが,その場合のサンプルがあってもよいかもしれない。実例を見たことがないと分かりづらいので。もっとも,そういうのはUSの会社が当事者のときで,そっちが用意するから要らないという割り切りかもしれないし,それであれば,一応理解可能ではあるが。
  • サービス契約書とかでcommercially reasonable effortが出てくるけど,誤解しやすいところだと思うので,マンサバさんのいつぞやの記事にあったような,意味合いの説明とかはしておくべきではないか。
  • サービス契約とコンサルティング契約で業務内容の別紙の例もあるのは一応評価すべきか。実務レベルで評価できるほどの出来かどうかは疑義がのこるとしても,何も参考になるものが無いよりはマシなので。
  • 共同研究開発契約については,新しく発明が生じた場合の措置として両者持ち分均等で共有となっていて,ある種玉虫色なドラフトにも見える。しかし,それだと,両者の意思が一致しないと処分などはできないということになりかねないので,そういうドラフトでも良いのか,正直よく分からなかった。技術ライセンス契約については,ライセンシー側でライセンス技術を元に改良発明が生じた場合の扱いが規定されていないように見えたけど,規定しなくても大丈夫なのだろうか・・・いずれの点も,こちらの経験不足で判断がしにくい。
  • 製造物供給契約は,第二版で追加。確かに請負系の契約類型の文案があるのは重要。
  • 契約の付属的な文書ともいうべき,催告書,変更契約書,及び,解約合意書についての文例があるのも,有用と感じる。いざ作ろうと思うと迷う時があるので。





*1:日本語・英語に関わらず,契約書の実例または書式を見る際には,前提となっている当事者の素性,力関係等をふまえて見ないと,参考になりにくいと思っている。その意味で,その辺りの文脈なしに,条項だけ見て,議論することには,あまり意味がないのではないかと,個人的には思っている。
*2:なお,英文契約についての一番最初に読む本という意味では,いろんな本があるが,個人的には,僕自身も最初に読んだ,英文契約書の基礎知識,及び,英文契約ドラフティングハンドブック(2册セットで読むのが良い)がオススメと考えている。



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December 19, 2018

二回試験対策についての個人的なメモ

以下,知り合いの72期の修習生の方で今から二回試験が不安という方に送ったメールから抜粋(内容的に,広く公開するに適さない内容は除外等している→補足:従って,以下の内容に加えて適宜補足が必要となる(そこは察してくださいな…))。任官任検や,修習での好成績を求めない方向けというところか。


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December 11, 2018

二回試験合格していました

速報,ではありますが(証明書類はこれから来るので),上記のとおりです。
その他の点は追って…。




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December 10, 2018

新・実践刑事弁護——昇平弁護士奮闘記 / 東京弁護士会刑事弁護委員会 (編集)

二回試験結果発表直前で落ち着かないけど,積読の解消をしたので感想をメモ…
(読んでいる間に新版が出た…orz)

刑事弁護に将来的に関与するかどうか自体,必ずしも明確ではないが,受任した場合には,時間制限の厳しい中で対応すべき部分があり,事案によっては洒落にならんので,今のうちに予習(?)しようと思った。刑事弁護については,既に手元に諸々の書籍はあるのだけど,時系列にそって,何をどうしたらいいのか,順を追って解説してくれる本がほしいと思ったので,この本を購入した次第。東京地裁及び東弁での実務を前提にしているので,それ以外のところでは適宜補正が必要かもしれない。

慣れてしまえば,大したことではないのかもしれないが,慣れるまでは不安が残るわけで,そういうときに手元にこういう本があって,常に紐解けるという状態にあるのは,安心材料の一つになり得るし,それが,結果的には単純ミスの危険を減らす要因になるものと考えるところ。
叙述は端的だし,全体の分量はコンパクトなので,とっさのときでも紐解きやすそうに見える。個人的には,接見時に持参すべきもののリスト(リスト化されていると出かける前とかにチェックするのにも使いやすそう)や,手土産の扱いというあたりが,興味深かった。

国選弁護をする新人弁護士向けのようで,取り上げられている事案も,否認事件ではなく,相対的にはやることの少ない事件のようなのだが,それでも結構大変そうに見える。もっとも,大変そうに見えたうち,相当数が法テラスへの手続まわりなので,この辺がもう少し何とかならないのかと思わないでもない。




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November 28, 2018

法律事務の手引き 全訂第9版

今から思えば,実務修習中に読むべきだったのに,読まなかったので,読んだ一冊。別にこの本,という意味ではなく,弁護修習中に,事務員さんが何をしているのか,もっと見ておけば,もっと知っておけばよかったと後から感じたので,今更ながらではあるが,事務員さん向けの本を読もうと思って,弁護士会館の地下の本屋で色々見比べて最終的に買ったのがこの本

さすがにそれ相応の年数企業で働いていたので,今更ビジネスマナーめいたところに記述が割かれている本を買う気はなく,弁護士事務所特有の事務について,詳しめに書かれている本がほしいと思って,見比べてこの本にした。大阪弁護士会制作の本なので,他のエリアでは異なる実務があるのかもしれないが,別に自分が事務員をするという趣旨で買っているわけではないので,その点が大きな問題になるとは感じていない。

そういう理由で買った本なので,弁護士事務所特有かつ事務員の方がするであろう事務について,丁寧に説明があるのが良い。法律知識が十分ではないかもしれない事務の方も想定読者に入っていることと,執行保全分野では事務員の方が担う作業が多いことから,執行保全周りの解説が丁寧にされているのが良い。民事弁護の予習の副教材にこの手の本を使うのはありかもしれない(実際そういうことをしている方を見たし)。

判型が大きいので正直邪魔なのだが,豊富な書式例を4 in 1で紹介するという荒業のためのようなので,まあ仕方ないかと思うことにする。CDROMで書式データがついているのも,気分的には心強い。





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November 25, 2018

武器としての情報公開: 権力の「手の内」を見抜く (ちくま新書) /日下部 聡 (著)

「仕入れ」エントリにするまでもなく(追記:と,いいつつ,先日の「仕入れ」エントリに追記した),買って即日読み終わった一冊。

誰でも使える情報公開制度の使い方,を朝日新聞の記者の著者が,自分が使った経験及び英国での公開制度との比較も混じえて解説している。
末尾に,情報公開制度の一覧が出ているのが有益。
また,実際に著者が制度を利用した経験については,石原元都知事の接待の実態や海外出張の実態を追及した例や,特定秘密保護法案の裏側(法務省や警察庁から異論があったこと,内調も危うさを認識していたこと),憲法解釈変更の検討記録がないことの解明,英国での体験談が記されており,特定秘密保護法案の話と憲法解釈変更の話が個人的には特に興味深かった。

情報公開というと,修習との関係で山中弁護士が活用されているのを思い出すのだけど,山中先生にも,活用方法とかを語っていただきたいところ。

一点違和感が残ったのは,刑事記録について,他の国では,墨塗りなしでアクセス可能であることから,日本でも同様にすべきとの意見。現状の日本社会を前提にすれば,被害者・加害者への二次被害を生む危険がある(マスコミがそれに加担しかねないのはいうまでもない)ので,おそらく無理だろうと思うし,そうすべきでもないと思ったのでありました。



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白石先生のご講演

昨日の白石先生の講演についてメモ。長くなってすいません。
独禁法に触れるのは,司法試験本番以来,という感じで(汗),久しぶりに,最先端の議論に接するのは,修習により遠ざかった感のある部分に久しぶりに接した,という感じ。

こちらにレジュメがある。配布されたものにはQRコードがついていて,上記のものにアクセスできる(記載のリンクは見ていなくても講演を聞く上では支障はないとのことだった)
が,以下では,レジュメに従って,こちらのメモ・記憶に基づき,肉付けを試みるもの。
【】はこちらの呟きというか感想。





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November 22, 2018

最近の仕入れ(2018年11月下旬)

二回試験は終わりました。疲れました。そのネタは追ってメモをするかもしれませんが,それとは別に…。
(2018/11/26 追記あり)

White Albumは,ボーナスディスクにつられて一番大きいのを買ってしまった次第。
最所さんの本は,先日のものとセットで読むのが良さそう。
百間の本はもってなかったので。ビールなどについての独自の決めごとが如何にもという感じ。
ウエーバーは,政治のほうを読むつもりで買ってみた。

米国訴訟の本は,関戸先生の前著のアップデート版という感じなので,買ってみた。
ローマ法は,気の迷いで(汗)。


Dsmt68AVsAAlZp3続きを読む

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November 01, 2018

年末恒例カレンダー企画のお知らせ(2018)

今年もあと60日余りとなったところで、BLJのブックガイドと並ぶ?恒例企画の話が出てきたので、ご紹介。性懲りもなく(汗),下の世代の@kanegoontaさんを突いてみたところ、企画を立ち上げてくれた次第。ありがとうございます。
(こういうことをしている場合か>自分…というのはさておき)。

法務系 Advent Calendar 2018

つぶやきはこちらにまとめられる模様。

ちなみに、
2017年のカレンダーはこちらで,つぶやきのまとめはこちら
2016年のカレンダーはこちらで、つぶやきのまとめはこちら
2015年のカレンダーはこちらで、つぶやきのまとめはこちら
2014年のカレンダーはこちらで、つぶやきのまとめはこちら
2013年のカレンダーはこちらで、つぶやきのまとめはこちら

ご覧いただければ分かる通り、見ているだけよりも参加する方が面白いので、こちらをご覧の諸兄におかれては、ご都合の許す範囲でご参加いただきたく。特に若手の皆様におかれましては、こういう機会に情報発信の第一歩を踏み出されては如何でしょうか?

そういえば,今回は打ち上げというか新年会はあるんでしょうか(謎)?

*エントリの内容が,昨年のこの種のエントリのコピペを主成分としているのは,ご容赦ください(汗)。



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October 28, 2018

最近の仕入れ(2018年10月末)

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1枚目(左)は,ここしばらくのもの。下の2冊は,家事周りの選択修習を取るので買った。東京家裁の実務についての本はよく参照したけど,もう片方はまだ先の話なので,ほとんど見なかった。 上の遠藤先生の本は,二回試験後に読むつもりで買ってみた。ビジネス法務での先生の連載は拝読していたので,そのまとめ,と思いきや,まえがきを見るとそうでもないので,改めて読ませてもらおうかと。 もう一冊は,20年くらい聴いているバンドの30周年の本。寡黙なギタリストの西村さんの話とかもあり,興味深い。

2枚め(右)は,本日神保町のお祭りで買ったもの。ろけっとぽっぽーさんのバッチは100円のガチャで引いたもの。もう一冊は半額だったのと,租税法周りは,納税者としても,ある程度理解しておきたいと感じたので。続きを読む

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October 27, 2018

Business law journal 2018年12月号

不定期のメモで恐縮ですが,既につぶやいたことも混じえつつ,読んだ範囲で感想などをメモ。

  • 最初に読む,無双様のブックレビュー。しばけん先生の本についてのコメントは,なるほど,というところ。脚注機能についての話は,どうやら誤植だったようだけど,個人的にはあり得ると今でも思う。好みとしては,文中【 】書きだけど。M&Aの契約実務の新版についての指摘も興味深い。某試験後に確認したいところ。
  • この号では,なんと言っても,特集でしょう。久しぶりに,こちらの琴線に触れる感じだったので。契約の期間設定は,必要な効力が生じているようにすることと,必要でなくなったときに如何に効力が生じないようにするかとのバランスをよく考えないと,害が生じるので,よく考えるとそう簡単な話ではないはずで,その辺りに着目した編集部は,久しぶりに,やるな,と感じるところ。
    上記の悩ましさは座談会(メンバーの選び方も興味深い)でも出ていて,久しぶりに,おお,と思いながら読めたのでありました。
    契約期間の場合,弊害が予測可能な範囲に収まりやすく,他方で,ビジネス判断次第という部分があるので,利害得失を説明し,必要なツールを用意すれば現場任せというのも有り得る対応。とはいえ,複数の事業部でやっている場合,特定の事業部でルーズな管理をしていることが他の事業部に悪影響が生じる可能性もあるので,全社レベルでの管理・調整が別途必要になる場合もあるかもしれないけど。
    また,座談会以外の記事も,日立の飯田さんのものを始め,それぞれなるほどというところ。
    ただ,最後の岩田合同の記事で一つきになったのが,継続的契約に基づく債権債務関係の時効管理という意味では,会計士監査で求められることが多いはずの,相手先に対する残高確認書の扱いに触れていない点。あれで債務承認になるんではないかと思うから,承認になる・ならないいずれであっても,きちんと触れるべきではないかと感じた次第。まあ,入手金の管理や,監査対応はどちらかというと経理系部署の管轄下にあることが多いので,視野に入れにくかったのかもしれないけど。
  • グローバル企業のための製品リコール対策の連載もメーカー法務経験者としては,期待するところが多い。とりあえずUSの規制については,不勉強で知らないことばかりなので,なるほどと思いつつ拝読。


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October 24, 2018

書くならば何処に

現実逃避(汗)かもしれないが…経文緯武さんの一連の呟き(こちら以下)を見て思ったことを備忘のためメモ。

債権法改正で,契約の目的とかが,契約内容の解釈のうえで,重要になる場合があることが予想される。そこで,予測可能性をあげる観点から,契約の目的とかについて,契約書のどこかに明記しておく方が良いのではないか,という問題意識が生じたとしてもそれほど不思議ではないように思う。

この問題意識に対して,契約書のどこに記載すべきか,という点について,英文契約流にwhereas clauseみたいな発想で前文に書く,というのは,それ以外の手がないときの次善の策としては,理解出来なくもないけど,最初からそこを想定するということには,個人的には違和感を覚える(*1)

英文契約におけるwhereas clauseについては,そもそも法的拘束力を有さないというのが一般的な理解のはず(*2)。そうなると,書いてあることによって,契約解釈において参照される可能性は生じるものの,常にそうなるかどうかは,不確実ということになると考える。参照する義務が誰かに生じるものではないからである。

つまり,書いてあることによって,参照される期待が生じるものの,そうならない可能性もある。中途半端に期待が生じる反面で,はしごを外された感じになる可能性すらあるということになり,却って事態を悪化させる可能性はないか,と懸念するところ。書いてあるがゆえに,記載が参照される前提で防御をしたら,そもそも参照されずに,前提が崩れるということは,想定可能ではなかろうか。

そういうことになる危険を冒すくらいなら,むしろ正面から,本文に規定すべきではないか。そうすれば,本文に書かなかったのは,拘束力を生じさせないためにやったことであり,それ故に参照する義務は生じない,というような議論は防ぎやすいはず。
例えば,両当事者は,本契約の規定及びその違反の解釈に際しては,次の点を踏まえてこれを行うものとする,として,契約の経緯・目的について箇条書きで書くような形での記載は,少なくとも日本法の下では,不可能ではないはず(*3)

また,仮に,上記のような起案をするとしても,その場合は,なんでもかんでも書けば良いというものではないだろう。契約締結に至る経緯も内容によっては,自分の側に不利に作用するような事情もあるかもしれない。そうなると,契約内容及び四囲の状況に鑑みて,将来生じうる事態に備えて,戦略的に起案しないとイケナイような気がするし,そういう判断は法務の関与なしになしうるか,疑問が残る。すべての取引に入れるほど法務の人的資源があるところはおそらくそれほど多くは無いだろう。事業部門の担当者に書き方を教えるとか,類型化して対応,というやり方も想定可能だが,それでなし得るレベルの書き方でどこまで,当初の需要に答えうるのか,個人的には疑問を覚えるところ。それに,優先順位の付け方として,どれほどの重みを持って検討されるべき事柄か,事業内容などによって千差万別になる可能性のある事柄でもある。もっと先にやるべきことがあるという場合も多いのかもしれない。




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dtk1970 at 22:22|PermalinkComments(0)

法令などの英訳についてのメモ

他人様のエントリに乗っかるエントリで恐縮ですが,備忘の意味もあってメモ。

いつもお世話になっている川井先生のエントリで,ご紹介のあった,「法令翻訳の手引き」を読んでみた。法令自体の翻訳はあまりしたことがないけど,契約書の英訳とかはそれ相応にやったことがあって,そちらの参考にもならないかと思ってのこと。

読んでみると,非常に参考になるので,契約書など法律文書(という表現が妥当かどうかはさておき)の類の英訳をする際には,事前に目を通しておくと良いと思う。それほど分量があるわけでもないので。

別に公的な立場ではない立場でこれに習う必要はないけど,これに習ったというと余計な議論を減らせるかもしれないので,これに習っておくのも一つの考え方だと思う。

個人的に,なるほど,と思ったのは,次の諸点
  • ActとLawの使い分け:まあ,どっちでもいいような気がするから,これに習っておくかというところ。一定のルールで決めておくことが重要だと思うので。
  • 「……の規定の/による/により」の使い分け及び用法
  • 「……定める」「……規定する」の英訳:色々書いてあって,最後に,原則としてprovideでOKってしているのは,それを先に言えよ,と思ったのでありました(苦笑)
  • 「…に関する」,「…に係る」を表す "pertaining to"
  • 英訳の際には,「会議」,「総会」の意味するところが,「会合」を意味するのか,「機関」を意味するのか,注意を要する場合がある:言われるとなるほど,というところではるが。
  • Shallを定義規定で使うのは誤り:個人的には当然と思うのだが。
  • 「その他」「その他の」の区別の図示もわかりやすい。
他方で,疑問に思った点も。
  • 定義された語や略称の訳語は,これを構成する各単語の最初の文字を大文字にしない。:理由があってのことなんだろうけど,大文字で始まる語については,定義を探す,という形で見ることが多いように思うので,定義規定のある語なのか,一般的な用法で使われている語なのか,文言上区別できなくなるので,困るような気がするのだけど…。
もう一つ。文中で出てくる「部局課名・官職名英訳名称一覧」も必要になったときには,ものすごく便利だと思う。過去にその種の英訳をするはめになったときに,困ったことがあるので…。



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dtk1970 at 00:15|PermalinkComments(0)

October 21, 2018

白表紙が届いたら

もう72期の方々に白表紙が届いたようですね。とはいえ,箱いっぱいでどれから読めばよいのか,と思う方もおられると思うので(僕もそういうところがあった),今振り返ってみて,今だったら,導入修習開始までにどうするかを考えてみたので,個人的な見解というやつをメモ(*)。PJ志望の方でない方向けというところ。
資料の名前とかは71期に来たものに基づいているので,ご容赦を。

★各分野の実務修習開始前には以下で出てくるものは,もう一度目を通しておくべき。また,導入前の事前課題をする中で読む羽目になるものもあるとは思われます。

<民事裁判>
  • 導入までに,事例で考える(ジレカン)と新問題研究は一読を。
    (その他に,要件事実は大島本等,事実認定は,ステップアップ事実認定まで目を通して置けるとよいかと)
<民事弁護>
  • 執行・保全は,導入でも知ってる前提でやるので。導入までに白表紙を一読を。もしわかりにくければ,和田先生の基礎からわかる民事執行法・民事保全法が良いと思いました。
  • 分厚いのが2冊ある(民事弁護実務と証拠修習についてのもの)と思いますが,弁護修習開始前までに読んでおけば足りるかと(とはいえ,その時期までには読んでおくべき)
<検察>
  • 終局処分起案の考え方は必読。導入までに一読のうえ,その後も繰り返し読んで答案の書き方の型を身につける必要があると思います。
  • 検察講義案は,書式だけ眺めておく程度で足りるかと。何より大事なのは,検察講義案には書き込まないこと(事務連絡でもその旨注意喚起があったようですが…)
<刑事裁判>
  • 事実認定ガイドをまず読んだ上で,プラクティス刑事裁判,プロシーディングス刑事裁判までもできれば導入までに一読を。
<刑事弁護>

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October 18, 2018

民法7 親族・相続 第5版 (有斐閣アルマ Specialized) /高橋 朋子 (著), 床谷 文雄 (著), 棚村 政行 (著)

選択修習で親族・相続周りのコースを取るので,予習のために一読した。

もともと,司法試験の対策の際にも,親族相続は,正直重要視されているという感じがなかったので,基本書もロクに読まずに,結果的に何とかしてしまった。可処分時間が少なかったから,まあ,仕方ないと割り切っていた。ところが,このトシなので,実際問題として,カジュアルに同世代から相続周りの質問などは来ることは容易に想定可能。そうなると,流石に,このまま修習を終えるのもまずいから,選択修習である程度しっかりやろうと思い,その予習用に買った次第。某司法試験予備校の某講師も推していたので,この本にした。

負担にならない分量でコンパクトに纏まっているというのが良いと感じた。事例を使った解説や図表も適宜織り込まれていて,個人的には,総じて理解しやすかった。他方で,共著ということもあり,文章の読みやすさについては,著者ごとのばらつきがあるようにも感じたが,まあ,その点は仕方がないのだろう。

企業の法務においても,親族相続が問題になる事案に遭遇することはないではない。債権回収で相手方の債務者側で相続が起きるとか,企業買収の買収先の経営者一族で相続が起きるとか。そういう場合に適切に対応するうえでも,企業法務の担当者であっても,基礎的なところは抑えておくほうがよくて(他のものとの間で優先順位はあるだろうが),そういう目的でも,コンパクトなこの本は有用だろうと感じる次第。

第5版は2017年に出たものだが,今般,相続法の改正があり,この本では,その中間試案の部分まではフォローしているが,実際の成案については,カバーしきれていない。なので,遠からず何らかのさらなる改訂がなされるものと思う。




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October 01, 2018

導入修習前に

こちらの修習は選択修習に入った。修習についての感想その他は二回試験終わってから,と思っているけど,この時期の合格者(しかも特に成績が下位だった人:要するに一年前の僕みたいな人)向けに,この時期に最低限やっておけばよかったなと思ったことをメモ。自分が十分やりきれなかったので。他にもすることはあるという前提で分量は控え目に。白表紙が来る前にもう一度目を通す等しておくべきだったという趣旨。いずれも市販の資料。
  • 民法・刑法・両訴訟法の復習:修習始まるとやってる暇がなかなかないので,この辺は今のうちに復習を。お手持ちの教材を復習すれば足りる。
  • 上記以外には,民事は要件事実と事実認定。ローその他で使っていた教材を使うといいし,仮に何もないなら,要件事実は,新問題研究と大島本の2版の要件事実が1冊にまとまっているもの,事実認定は,とりあえず事例で考える事実認定。
  • 刑事は,プラクティス刑事裁判と,終局処分起案の考え方




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dtk1970 at 23:18|PermalinkComments(0)

September 15, 2018

最近の仕入れ(2018年9月半ば)

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一冊は先にエントリをした,しばけん先生の本(サイン入り)。 英文契約の某書籍は,今読んでいる場合ではないのだろうが,衝動買い。修習では英文契約とか読むはずもないので,二回試験が終わったらリハビリを要するところだろうから,その一助に。 破産法と民事再生法は,選択修習でこのエリアのプログラムを受けるので,その予習ということで…。

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中小企業買収の法務 / 柴田堅太郎 (著)

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いつもお世話になっている柴田先生の単著を,遅ればせながら拝読したので,感想をばメモ。

読み終わるより先に,サインをいただいてしまいました(汗) 。
*二枚目の写真は,某先輩が撮られていたのを借用させていただきました。

柴田先生が,専門のM&Aについて,特に中小企業のM&Aに特化して書かれた本。そして,中小企業と行っても,事業承継型のM&AとベンチャーのM&Aとは,大規模なM&Aとは異なる部分があって,共通する部分もあるものの,異なることもあるということで,それぞれについて分けて解説されている。

既に各所で絶賛されていて,その点については,僕も同意。
個人的には,事業承継型のM&A(のPMI)にしか関与したことがなく,ベンチャーのM&Aについては,関与したことがないのだけど,前半については,如何にもありそうな事例がふんだんに使われていて,「あるある」だなあ,とニヤニヤしながら読んだのでありました。

M&Aにおいては,諸般の制約条件があり,その中には,法律的な問題ではなく,感情論の部分も含まれているけれども,そういう制約条件から生じる諸問題について,完全な解決策が見つからない場合であっても,如何にして,リスクを許容可能な範囲に抑え込むか,安易に破談にならないよう,どうすべきか,ご経験に基づく知恵の一端が開陳されている。書かれている解決策の案の中には,ややリスクの残る場合もあり,そこのあたりをどう考えるかは,個人差があるだろうから,ここまで踏み込めるのは,単著ならではなのかなということも感じた。

また,文章自体の読みやすさ,事例によるわかりやすさに加え,参照文献へのリンクの豊富さも特筆に値するかと思う。巻末にまとめるのではなく,都度,脚注でリンク(URLも含め)されているのも参照しやすさという意味では,大変良いと思います。この本を起点として,更に調べて行くということも容易になるので。

とはいえ,M&Aの「基本形」からは,中小企業ということでの,「捻り」が入っているという側面もあるので,この本をM&Aを学ぶ最初の一冊とするのは,おそらく不適切で,冒頭の参考文献に書かれている二冊(これこれ)あたりを読んでから,本著を読んだほうが,この本の素晴らしさがよりよく堪能できると思う。

あと,僭越ながら,一点だけコメントするなら,諸般の事情で,DDが不十分な範囲でしか行えないということは,ままあるので,その場合,クロージング後PMIの過程で,かつ,最終契約上でクレーム可能な期間がある場合には,その範囲内で,再度DD類似の行為を行って,きちんと調べるよう,弁護士さんたちも,アドバイスされたほうが良いのではないかと思う。慣れていないと,クロージングしてやれやれと思って,その実,DDでの調査が不十分で,相当後になってから…ということも経験したことがないではないので…。PMI周りまではなかなか対応し難いところはあるのでしょうが,その程度のアドバイスはあって然る可きかと…



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August 29, 2018

最近の仕入れ(2018年8月末)

DlxJkrmVAAAvOzS 大島本は,結局見るのは要件事実のところ(事実認定とかのところは,いわゆるジレカンなどで対応する)なので,レベル分けしている最新のものよりも,要件事実だけが一冊にまとまっている旧版の方が,修習生にとっては使いやすいということで,購入。修習も二回試験のプレッシャーを感じる段階になってきて,今更感はあるが,こちらの現状では必要と判断した次第(汗)。30講とかだと,学者の先生方の議論で寝るのと小さい文字のところが年齢的に厳しいし(滝汗),O口本(類型別)だと,さすがに二回試験対策には足らない(問題集は逆に過剰っぽい)ので,結局この本かなという印象。 CDについては,Live音源欲しさということで(汗)。

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August 13, 2018

基礎からわかる民事執行法・民事保全法 第2版/和田 吉弘 (著)

積読だったのを解消したので感想をメモ。執行・保全についての,最初の一冊として最適と感じたもの。

執行・保全については,紛争の入口または出口という感じではあるが,今までの企業法務の業務の中では,経験業種・職務との兼ね合いもあり,保全の一部にしか接する機会がなかった。なので,手薄感があった。他方で,修習では民事弁護の起案などで問われることもあり,何らかのテコ入れが必要と感じていた。もちろん,執行・保全それぞれの白表紙はある。それぞれ書式や関連情報も豊富で良いのだが,無味乾燥っぽくて,一読はしたものの頭に残らない感じで,この2冊だけで何とか,というのは僕には厳しいと感じた。そこで,この本を手にとった次第。

著者の民事訴訟法のテキストで司法試験合格まで来たこともあり,事例,図表での解説が同様に豊富に使われている本書も,僕にとってはとっつきやすく,途中で挫折せずに一読できた。この分野の入門書という意味では,中野先生の本もあるのだけど,文字ばかりで,どうも内容がイメージしづらく,あえなく挫折したので,余計にそのありがたさを実感する。

もちろん入門書なので,これだけで対応可能な範囲は狭い。特に保全については,全体で250p弱のうち30p程度なので,その先の書籍が実務を睨むと必要なのは間違いない。そこは,定評ある平野執行保全が何故か手元にあるので,必要に応じて紐解きたいと思っている。






 

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August 06, 2018

最近のもろもろ(2018/8/6)

こういうタイトルで書かなくなってから久しいけど,たまには…。
例によって書けることだけ,かつ,既につぶやいたことと重なるものもあるけど。
  • 修習については,原則エントリには書かない方針ではあるが…少しだけ。実務修習の第4クールの終わりが見えてくると,集合とか二回試験とかが気になってくる。とりあえず先にネタにした岡口入門(紛争類型別編)片手に,研修所の類型別を一読した。最初に研修所類型別を読んだときは,単に眠いだけで頭に入らなかっただけで終わったのだが,岡口入門(紛争類型別編)を二周した後だと,多少は頭に残る感じ。微速前進というところか。
  • そういえば二回試験について,最後に紐綴りの時間が設けられるとのことだった。しかし,その分起案時間が減るとのこと。紐は起案途中で綴る方針の僕にとっては,起案時間が減るだけで終わりそうな…。
  • 某OJの分限裁判については,ご本人による専用ブログができていた。また,山中先生のところに,過去の分限裁判等の実例についての情報が載っていた。こういう情報まで集めておられるとは…。
    (よく見ると,山中先生のサイトのメインのコンテンツは裁判官人事と司法修習らしいから,当然なのかもしれない…)
  • 気の早い話だが,修習が終わった後でここのブログをどうするか,ちょっと悩む。模様替えしたいと思っているのだけど…。


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July 28, 2018

憲法で読むアメリカ現代史 / 阿川 尚之 (著)

こちらの連載につき大幅加筆して,トランプ政権下での出来事まで記載して書籍化されていた。出たら読もうと思っていたが,見落としていてようやく目を通した。
憲法で読むアメリカ史憲法改正とは何か,とあわせ,アメリカ憲法とアメリカ社会との関わり合いを理解するのに有用なうえ,USLLMでのアメリカ法入門の副読本としても有用。
 
憲法で読むアメリカ史の続編で,レーガン政権からトランプ政権までの時期につき,判事の任免・重要な判決,裁判所と政権の関係と言った連邦最高裁の動きを通じて,アメリカの現代史をみるもの。憲法で読むアメリカ史よりも,論述が分厚くなっている(結果的に分量も多くなっている)のは,時代が下って資料の入手が容易になっていることと,何よりも,著者自身がJDの学生になった時期以降の叙述であって,同時代を生きたから,という側面もあるのかもしれない,と勝手に感じた。

前記書籍でも感じたことだが,アメリカという国での,最高裁判所と政権との緊張関係は,連邦憲法上,一定程度予定されていたことであって,興味深い。また,その関係自体を崩そうとした試みが結局なされずにここまで来ていること,政権側も憲法をきちんと理解し尊重していることが,特に昨今の本邦でのあれこれを見ていると印象深い。




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July 23, 2018

最近の仕入れ(2018年7月下旬)

Dion-X9U8AEhMqw お手軽な更新ですいません(謎)。 阿川さんのものは,前にエントリで書いた連載の書籍化で,待ち望んでいたはずなのに,見落としていて今更購入。 ざっくりの本は,同じ著者のエクセルを使った本は,LLMでコーポレート・ファイナンスを学んだ際に大変お世話になった。ファイナンスの基礎的なことをおさらいする手始めには良さげ。 語源の本はBLJでの連載の書籍化。連載であまり真面目に読まなかったけど…。

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July 15, 2018

Business law journal 2018年8月号

最近積読気味だったけど,拾い読みした箇所等について,感想などを箇条書きで一応メモしてみる。既につぶやいたこととも重なるが…

  • いつも楽しみにしていた企業の法務部門訪問の記事がないのは残念。
  • 無双様の法律書レビューは,公取の赤本を取り上げている。一冊のみのレビューは初めてではないか。他の書籍,例えば幕田元委員の書籍とかとの比較で論じるとかしてもらえると面白かったのではないかという気もしたのだが…。
  • 英文契約書講座については,まあいつも通りだけど,弁護士意見書を法務部長の意見書に代えるというのは,状況次第では取りうるとは思う。意見書の機能と費用対効果での見合いで考えることにはなるのだろうけど。
  • 公益通報・内部告発と法律上保護された秘密,の記事は,複数の異なる価値の衝突をどう調整するかという検討が興味深かった。条文上手当が不十分なところを,適宜場合分けをしつつ,順を追って検討して,結果的に穏当な解決策を提示しているのが,良いと感じた次第。
  • 独禁法の道標については,下請法と民・商法の交錯領域についての議論が興味深かかった。結論の問題提起には賛同はしたいものの,当局相手にその議論が通るかについては,なんとも言いづらいので,結果的に悩むことになりそうなのは変わらないよなと思う。
  • 品質偽装の記事。米連邦法での制裁の厳しさに驚く。通信詐欺構成が取られるのは,まあ,連邦法の管轄からすればさもありなんというところか。

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July 12, 2018

某件についての疑問

自分の備忘のためのメモ。既につぶやいたことを基にしている。ツイッターのログとかは後で読みづらいので,後でたどるような内容は,blogのエントリにしておくほうが良いのではないかと感じるので。

司法のIT化についての諸先生方の呟きを見ていて,その議論の中で,本人訴訟とかどういう扱いなんだろうと疑問に思った。民事裁判の修習とかで,近所のコンビニからテキストファイルの準備書面をfax送信してきた方がいたけど,ああいう方々へのケアとかどうするんだろう,と。

結局そういう方々へのケアは,裁判官ではなく,書記官マターになるんだろうと思うのだけど,書記官に対する負荷の増大に対する手当はどうなっているのだろう。それと,ユニバーサルサービスと言うか,遠隔地まで同じレベルのサービスを維持できるのだろうか。こういうとIT化で対応というが,リテラシーの低い人に対して,対人対応なしに対応しきれるのか,疑問が残る。

それから,今後経済の衰退を想定する必要はあると思うけど,その中でも持続可能という辺りも疑問。電子政府等と標榜しているのはいいとしても,重いシステムにした結果,後々維持にかかるコストが重くなるのは避けるべきではないか。一足飛びに大風呂敷を広げるのは危険ではないかと懸念するところ。

以上のような感じでつぶやいたことに対して,こちらのp16についてのご指摘を頂いた。ある程度は問題は認知されているものの,裁判所外というところに天下り先確保の匂いとか,非弁の問題の気配とかを感じなくもない。どうなることやら。







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dtk1970 at 23:56|PermalinkComments(0)

July 10, 2018

要件事実入門(初級編・紛争類型別編)/岡口基一


ツイッターはアカウントが凍結された結果,FBのみになられたようだけど,ネットでお馴染み?の岡口Jの要件事実解説本2冊が出たので,まとめて一読したので感想をメモ。

前者が予備試験対策,後者が司法試験対策を主目的としているようである。僕自身は,司法試験までに合格するまでには要件事実論にまで手が回りきらず,新問題研究を何度か通読したのがせいぜい(岡口Jの最初の入門(今の2冊とは内容を異にする部分があるようだ)は一度通読はしたが,繰り返すところまではできなかった)で,合格までにこれら書籍を使いこなしたわけではないので,軽率なことは言いにくい。とはいえ,解説のみならず,初級者編では予備試験の問題,紛争類型別編では司法試験の問題(全部ではないが)について,それぞれ問題の事案の要件事実的な整理が示されており,少なくとも事案の分析の仕方としては,確実に有益だと思う。答案にどのように書くかについては,時間の制約も考えると,更に考える必要があるとしても。

今回僕がこれら書籍を手にとったのは,実務修習も終わりが見えてきて,和光での集合修習や二回試験に対して不安が募ってきて,特に,民事での要件事実論が心配だったから。

修習での要件事実については,こちらの民裁教官とかは,新問題研究と紛争類型別を覚えろとか言ったりするんだけど,前者と後者とでは,説が異なる部分があるとか,そもそも後者は古い上に,こちらの実力不足もあってか,読み解くのが容易ではないとかで,正直気が重い。後者を読み解く上では,要件事実ノート(特に2)を手がかりにすると良いというアドバイスを70期の先輩からはもらったが,そもそも複数の書籍を紐解くのは手間。あと,二回試験後を考えると債権法改正も気になる。そんなこんなを考えると,岡口Jのこの2冊はお手頃にも思われる。それぞれの主たる用途との関係では,さすがに修習では,足りない部分が出てくるのだろうが,司法試験までで重要なところは,修習でも重要な筈なので,集合修習に向けての時期に紐解くには適切という側面もあろうかと思う。また,要件事実について,基礎ができていれば,紛争類型別編だけでも足りるから,ますますお手頃感が出てくると思う(もっとも,要件事実についての総論的な解説は,初級者編のみなので,そこについてだけは,目を通しておくべきかもしれない)

修習及び二回試験対策という意味では,要件事実30講や大島Jの本が比較対象になる。範囲を十分カバーしているという意味ではこれら二冊のほうが有用なのだろうが,重要度の高いとことを簡潔に分かりやすく示している点で,岡口類型別編の方が個人的には好みではある。要件事実について抽象的要件と具体的な例が併記してあるのはわかりやすいし,要件事実論自体,ある種の技術のようなので細かい理論的な話や網羅性よりも,技術の基本的なところをしっかり体得することに重点を置いた方がよさそうだし,そのためには繰り返しやすい方が,僕の現状には適していると感じる。

内容面では,岡口J独自説と思われる部分は排除し,研修所説に沿う形で解説はされているとのことである。とはいえ,それらの不合理な点(予備試験,司法試験の出題のおかしな点も)については批判がされていて,その部分は太字で書かれていて,地の文よりも視認性が高いので,研修所説よりも批判の方が頭に残る形になっていないか,というところが気になった。






 

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dtk1970 at 23:24|PermalinkComments(0)

June 24, 2018

最近の仕入れ(2018年6月下旬)

DgbJeSqUEAEjPmZ 何でこういう組み合わせなのか,自分でもわけがわからん。 某用件で,要件事実について調べたいことがあったのと,そろそろ集合修習に備えないと,やばいのではないか,特に要件事実についてはまずいのではないかという危機意識から,上記のような組み合わせになったもの。O口Jの本も出たばかりなので。 今更増補版を基礎にすえるのもどうなんだろうというところではあるので,O口Jの本を中心に勉強することになるものと思われる。

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dtk1970 at 22:30|PermalinkComments(0)

June 16, 2018

修正の有り様について

以前エントリで書いたこととか,つぶやいたことに重なるが,備忘のために現時点での自分の考えのメモ。

PDF(極端なケースでは自社側押印済の状態で回ってくる場合も含む),または,WORDでロックかけた状態で契約書の雛形を送ってくる行為についての議論がタイムライン上等で流れていた。

受領する側の法務担当者としては,どういう状態で来ようが,自社の利益を考えれば,修正を求めるべき内容と判断すれば,まずはそれを求めてみるべき,であり,後は手間の問題というところになるような気がする*1,2

そうなると,双方の手間の極小化が求められるべきところなので,個人的には,次の2択が望ましいのではなかろうかと考える。

  1. 約款の類のように,少なくとも基本的な部分は,共通化を図りたいということであれば,約款部分はpdf*3でもやむなしか。ただし,必要に応じて別の書面で修正をする*4
  2. 上記以外はwordのやり取り。ただし,変更履歴が必ず残るよう,ロックはかける。そうしないと,いちいち全文一言一句チェックしないといけなくなるから。






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June 09, 2018

民法案内〈1〉私法の道しるべ /我妻 榮 (著), 遠藤 浩 川井 健(補訂)



各所で推奨されていたので,一通り目を通してみた。巨匠の手による(そしてその弟子が補訂),民法を学ぶための私法入門,というところ。民法を学ぶ上で必要となる私法領域の鳥瞰を広く行うとともに,民法の学び方についても平易に説くもの,という印象。読み返すたびに発見のありそうな,古典と呼ぶにふさわしいものなので,手元に置くべき一冊だろう。

専門分化(蛸壺化かもしれないけど)の進んだ現在では,ここまで周辺領域との接点について,明快に説ける学者が今誰かいるのか,という感もあり,これから同様の解説のある本が出てくるとはにわかには想像しづらいように思う。なので,直接のお弟子さんたちもすべて鬼籍に入られた(と思われる)ので,今後は孫弟子の方々あたりが,引き続き補訂していただき,読みつがれるべきなのではないかと思う。債権法改正部分のアップデートも必要だろうし,それ以外の部分,特に家族法周りの部分は,社会情勢の変化も踏まえ,相応の記載の見直しが必要なのではないかと感じた。

個人的には,現時点では,次の諸点が特に良いと感じた。いずれについても,あまり真面目に考える必要というか機会がなかったので,きちんと意識していなかったから,解説を読んで,なるほどと思ったところ。
  • 法律の不遡及の原則の適用のあり方,特に継続的法律関係がある場合の処理の仕方についての解説。
  • 日本に新領土が生じた場合に,現行の私法が適用になるか(過去に,台湾,樺太,朝鮮との関係でに実際に問題となったというのは知らなかった…)。
  • 取締法規違反の契約の有効・無効の判断基準についての考え方
  • 調停制度の公正さの保ち方についての考え方











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dtk1970 at 23:13|PermalinkComments(0)