アメリカ法

January 25, 2019

法務担当者による米国民事訴訟対応マニュアル /三輪 泰右 (著), 池田 俊二 (著), 三橋 克矢 (著)



出版時に確保していたものの,長らく積読だった一冊。もっと早く読んでおくべきだった…。
財閥系大手電機メーカー法務部の方々の手によるもので,米国で民事訴訟の相手方とされた際の対応についての解説。日本企業が被告等になった場合の対応について解説したものなので,こちらから提訴する場合における特有の問題,たとえば,どこで提訴するかのフォーラムショッピングや,弁護士選びのいわゆるビューティーコンテストのような事柄についての解説はない。とはいえ,そういう事例よりも巻き込まれる事例のほうが多いだろう。訴訟の進行に応じ,各段階ごとにすべきことについて,平易にかつ簡潔にまとめられているので,有用だと思う。対応の詳細については現地弁護士と相談することが必要になるので,相談の前提となる知識及び「中の人」のすべきことについての解説という意味では,詳細になりすぎず,手頃な分量にまとめられている点も良いと感じる。

従前のエントリでネタにした関戸先生たちの本が,あくまでも,外部弁護士側の視点で書かれているのに対し,会社の法務という「中の人」の立場から書かれている。訴訟費用の予算取りとか,和解受け入れについての社内調整といった,「中の人」にとっては通常必要となるプロセスについての,経験に基づく解説が興味深かった。 先に挙げた関戸先生たちの本と共に読むことで,いかなる対応が必要になるかという点がより立体的に理解可能となると思う。事実,参考文献で,先に挙げた本の元の本も挙げられている。なので,両者併読を推奨。

この他個人的に印象に残った点をいくつかメモ
  • 個々の議論の根拠となる法令または判例・裁判例について脚注で言及があるのは,ネタ元にあたりやすいという面で良い。 
  • 先の関戸先生以下の本についての感想の中で書いたことと関連するが,様々な申立のサンプルが含まれているのは有用で良いと思った。訴訟の内容に関する部分の記載が省略されているものの,どういう感じの書面になるのかのイメージは相対的にはしやすくなるので。 
  • トライアルそのものについての対応よりも,そもそも如何にトライアルに至らずに済ませるかということに関しての解説が多かったのも印象的。解説にあるようにトライアルまで行ってしまうとどうなるか読みにくいし費用もかさむから当たり前なのだが。 
  • 正直,管轄周りの議論がわかりにくかった。解説は極力平易にしようとされているので,もともとわかりにくいということの反映と思われる。 
  • 訴訟ホールドについては,こちらで前にエントリにしたように,四半期に一度程度の周期で繰り返すことが重要と思われる所,その辺りの記載があまりなかったのがやや残念。一度出して終わりではないはずなので。


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December 28, 2018

わかりやすい米国民事訴訟の実務 / 関戸 麦 (著), 高宮 雄介 (著), 森田 茉莉子 (著), 片桐 大 (著)



日本企業のための米国民事訴訟対策 」のupdate版,という感じの本。タイトルは変わっているものの,章立ては同じ。他方で,関戸先生単著だったのが,同じ事務所内で米国での訴訟に関与する先生が増えたこともあり,共著にしたとのこと(「はしがき」による)。

訴訟が提起されてから,トライアルまでのやり取り,トライアルを経て判決,上訴に至るまでの流れに沿う形で解説がなされていて,前著の読みやすさを維持しつつ,内容が更新されているのが良い。また,訴訟ありき,ではなく,訴訟の回避方法について,従前同様に相応の言及があるのも,好ましい。これらの意味で,米国での訴訟の可能性がある日本企業の法務部門では,手元においておくべき一冊ではないかと感じるところ。

再読(という言い方が適切かどうかはさておき)してみると,こちらの知識が増えたこともあり,なるほど,と思うことが増えた。特にこちらの日本の民事訴訟法の理解がました分,日本の訴訟法との比較での解説のわかりやすさがより良く実感できた気がした(特に当事者主義の徹底のあたりとか)。

解説としてはこれ以上は望みにくい気がしたが,いくつか,個人的に物足りなく感じたところなどをメモしてみる。
  • 前著への感想でも書いたが,個人的には要所要所での書式例がついているとなお良いのではないかと感じた。特にdiscovery前提のため,discvoery前の訴状段階では,主張が抽象的にとどまる反面,漏れがあると困る(放棄と取られる危険がある)ということから,広めの主張がなされるとのことだが,どの程度書かれるのか,というところが気になった。
  • eDiscoveryとの関係では,AIを使って費用削減を図る例が出てきているものと考えているが,その当たりの言及がもう少しあっても良かったのではなかろうか。費用削減は,当事者にとっては大きな問題なので。
  • 秘匿特権のところで,秘匿特権の放棄(waiver)と結論付けられた場合に,秘匿が認められなくなる(開示をせざるを得なくなる)範囲が今ひとつ実感できなかった。具体的なケースでの実例の紹介があったら良かったのではないかと感じた。




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July 28, 2018

憲法で読むアメリカ現代史 / 阿川 尚之 (著)

こちらの連載につき大幅加筆して,トランプ政権下での出来事まで記載して書籍化されていた。出たら読もうと思っていたが,見落としていてようやく目を通した。
憲法で読むアメリカ史憲法改正とは何か,とあわせ,アメリカ憲法とアメリカ社会との関わり合いを理解するのに有用なうえ,USLLMでのアメリカ法入門の副読本としても有用。
 
憲法で読むアメリカ史の続編で,レーガン政権からトランプ政権までの時期につき,判事の任免・重要な判決,裁判所と政権の関係と言った連邦最高裁の動きを通じて,アメリカの現代史をみるもの。憲法で読むアメリカ史よりも,論述が分厚くなっている(結果的に分量も多くなっている)のは,時代が下って資料の入手が容易になっていることと,何よりも,著者自身がJDの学生になった時期以降の叙述であって,同時代を生きたから,という側面もあるのかもしれない,と勝手に感じた。

前記書籍でも感じたことだが,アメリカという国での,最高裁判所と政権との緊張関係は,連邦憲法上,一定程度予定されていたことであって,興味深い。また,その関係自体を崩そうとした試みが結局なされずにここまで来ていること,政権側も憲法をきちんと理解し尊重していることが,特に昨今の本邦でのあれこれを見ていると印象深い。




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July 28, 2016

メモ:FCPAのデータベース

毎度おなじみFCPAがらみ(違)でメモ。某所で見つけたもののご紹介だけですが。
米系外資だとどうしても、うるさくなりがち、で、社内研修とかをする際のネタ元に便利そうなところ、ってことでメモ。

Stanford Law School Foreign Corrupt Practices Act Clearing house
(a collabolation with Sullivan Cromwell LLP)
 
最近のはやりなのか、visual aidというか図表で示すのが上手いという印象。統計資料とかが面白いだけではなく、論文とか、enforcementの情報も出ているので、便利かもしれない。文字ばかりのDOJのサイトとかよりは見る気になるし(汗)。

 

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July 27, 2016

憲法改正とは何か: アメリカ改憲史から考える (新潮選書) / 阿川 尚之 (著)



憲法で読むアメリカ史
の著者によるアメリカの改憲史についての著書。同書とともに読むと、USLLMで、アメリカ法入門のような講義につなげる意味では有用と思う。一般向けということもあって、憲法の難しい話に過度に深入りせず*1に、改憲についての通史的な解説を読みやすい形で提供してくれている。
なお、同書以降の現代史部分については、こちらに連載がある(書籍化はされないのだろうか…)。

もちろん、こういう時期に出された(2016年5月発行)ということからも推測可能なように、昨今の日本での改憲議論にも資するようにという意図はあるが、最終章以外にはその点に明示的に触れてはいないので、そういう問題に特に用事がなくても、そのほかのところは安心して読めると思う。最終章には今までの章の要約もついているので、極端に言えば、この章だけ読むのもアリかもしれない。





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dtk1970 at 00:23|PermalinkComments(0)

December 08, 2014

Litigation holdのキホン、のようなもの

なんだよそれ…といわれそうだが。

お世話になっている某所のrenewal協賛企画(謎)として、ざっくりとしたハナシを書いてみようかと…思っていたら、書きかけでしばらく放置していたのでした。USの訴訟それ自体に関与した経験は少ないが、holdについてだけならそれなりにあるので…。

以下は、僕の今までの個人的な経験に基づく理解なので、現在または過去の所属先などとは関係しない個人的な考えであることはいうまでもない。厳密には裏とりも仕切れていない部分がある。企業内の対応という意味で書いているので、企業外の先生方の視線で見ると問題かもしれないけど、その辺りは何らかの方法でご指摘いただけると助かります。

USでの訴訟について、悪名高いdiscovery(電子データに関するeDiscoveryも含む)というのがある。
ざっくりいうと、手持ちの関連する情報は原則全部相手に見せるということになろうか。fair playの現れということなのかもしれない。不意打ち禁止ってなところみたい。

そうなると、じゃあ、見せる前に廃棄とかすればいいじゃないかという話になりかねないが、そうは問屋がおろさない。その前提として保管義務が課せられている。しくじると制裁は課せられるし、それだけで敗訴という可能性すらあるので、面倒くさいし、徒や疎かにできない。

そこで出てくるのがLitigation holdというやつ。要するに問題となっている紛争案件に関する情報は保管しておけ、ということ。

ここでの目的は自社側での対応においてホントに必要な情報の保管と、それ以外に、相手側から故意に破棄したといわれないことにあるということになるのではなかろうかと思う。前者については、holdをかけなくても、訴訟の可能性がある程度以上想定できれば、手元に資料があるかもしれないから、それだけのために保全する必要はないかもしれないけど、後者の目的となると話は異なるかもしれない。保管(より正確には保全というべきか)と訴訟における提出とは、ここでは切り離されていることにも留意が必要。

もう一ついうと、後でdiscoveryのプロセスの中でこの辺りのプロセスの当否が争われるケースも考えられる。この辺を取り仕切っている法務の人間自体がdepositionの対象になることも想定されるわけで、その点も睨んで最初から動く、必要がある。そうなると、プロセスについても、記録を取りながら、という方が必須のはいうまでもない。ただし、時間との兼ね合いでそれが貫徹できるかというとまた別なのだろうが。

・・・ここまでが前置きで、前置きが長いのだが、ここまでは少なくとも概念上はまだ理解しやすいように思うが、実際にやってみると(上記だけでも大概面倒くさいが)、正直面倒くさい。


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dtk1970 at 00:57|PermalinkComments(0)

March 20, 2014

憲法で読むアメリカ史(全) (学芸文庫) / 阿川 尚之 (著)



以前新書2冊本だったものが、加筆修正のうえ、1冊にまとまって文庫化されたもの。

アメリカ合衆国として今我々が知る形になるまでの間に、国の形に関して起きた問題が、国の形を定める憲法問題として裁判所で争われるのは当然と言えなくもないが、政治問題と司法との距離感が、日本と異なり密接というところにまず驚かされる。その中には、アメリカの陰の部分も当然含まれていて、人種問題や、南北の差異(格差といえるのかはわからないが)も出てきており、国としてまだ若いのだな、ということを感じた次第。

USのLLMに行く際には、アメリカ法入門という科目などを履修する際の副読本として必携という気がするのは間違いない。僕自身も事前に新書版を読み、持っていったから。帰国後に同様に留学する若手にあげて、新しく買いなおそうとしたら既に絶版になっており、今回新しく出たのはありがたい限り。上記のような用途に限らず、アメリカ法やアメリカを知るうえで、参考になるところの多い一冊だろうと思う。

惜しむらくは、新書版に含まれていた、ブッシュ対ゴアの一件についての章が削除され、結果的に記載がレンクイストコートの前で終わっているところだろうか。まだ言及するのは早い、ということのようだし(その旨の記載がある)、その点は理解できる一方で、レンクイストコートの時代も長かったから何らかの記載があっても良かったのではないかという気がする。それは今後の課題として、更なるupdateを期待したいと思う。

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dtk1970 at 17:59|PermalinkComments(0)

January 12, 2014

もうひとつ?

年明け最初の法律ネタということで、吉例に従い他人様に絡んでみようかと(謎)。勉強熱心さに頭の下がるCeongsuさんエントリを読んで感じたことをメモ*1


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dtk1970 at 15:46|PermalinkComments(2)

November 20, 2013

CLEセミナー:Ethics

2日連続でセミナーネタというのも、イマイチだが…まあ、ネタがないのと、Ethicsのセミナーとしては今まで受講したものの中では一番良かったので、メモ。日本で唯一のUSのロースクールのテンプルのキャンパスで開催。CLEのセミナーは日本でも結構あるけど、Ethicsのセミナーはテンプルでやるものしか見たことが無い…。


 


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dtk1970 at 20:23|PermalinkComments(0)

November 19, 2013

CLEセミナー:米国独禁法

セミナーに出るだけでどこまで身についているのか、怪しいのだが、CLEも出るということで某事務所のセミナーに出させていただいた。テーマは米独禁法。まあ、米国企業の現地法人の立場としては、親会社の関係者のこの分野の理解の基礎を知っておくという意味で有用なのは間違いない。

ボーっとしていて最初気づかなかったが、BUの留学つながりで、某氏に久しぶりにお目にかかる。気がつくと転職されていて、ご活躍のようで何よりです。





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dtk1970 at 23:44|PermalinkComments(0)

September 13, 2013

non-diverse defendant?

たまには他人様のblogに、ちょっかいを出してみるかと…。いつも拝読している「総務&法務担当の部屋」でのエントリにコメントというかなんというか。以下のところでnon-diverseという部分やDistrict courtが複数あるのがわからないとのこと。で、いくつか推測をば。
The parties agree that any such action shall be filed in the District Court A. If the presence of a non-diverse defendant precludes subject-matter jurisdiction in that court, then exclusive venue shall be in the District Court A
準拠法がインドネシア法の契約、ということですが、diverseかどうかというと、アメリカ法の議論が念頭にあるような気がします。インドネシアも連邦制の国家ということで、こういう用語の使い方をしているのかもしれないと思ったりします。さすがにその辺はこの文案だけではよくわかりませんが。

以下、アメリカ法での議論で考えてみます(間違っていたらご指摘いただきたく>各位)。
* 手元にある英米法辞典を参照しています。ネット上にあるものでは英文ですが、Diversity Jurisdictionの記載@wikipediaがよさそうです。

連邦制の下、連邦裁判所と州裁判所と裁判所の系統が二系列あり、同じ州内に双方のDistrict Courtがあるところ(第一審の裁判所という意味で使っているのではないかと思います)、後者ではなく前者にany such actionを裁いてほしいと考えているという想定をしているのだと思います。

その際には、連邦裁判所の管轄となるためにはdiversity jurisdiction(ざっくりいうと州をまたぐ話にならないと連邦裁判所にいけないということ、という感じですかね)を満たすことをまず考えているということなのではないかと思われるわけです。アメリカ合衆国憲法のArticle III section 2(邦訳はこちら)を受けて規定されている28 USC 1332に詳細があるようですが、原告または被告の間で州を同じくするものがあると、diversity jurisdictionが成り立たない(よって州の裁判所の管轄になる)ということになるはずです。diversity jurisdictionを不成立にするような被告という意味でnon-diverse defendantという表現がとられているのではないかと考えます。

そう考えると上記の文中のDistrict Courtのうち、後者は州のDistrict Courtを、前者はおそらく同じ州内に所在する連邦のDistrict Courtを指すのではなかろうかと考えます。

…こんな感じで推測してみたのですが、どうでしょうか>作者の方



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August 13, 2013

紛争鉱物に挑む

B2Bのメーカー法務には独自のよさがあるんです(キリッ)…というのはさておき。目に付いたのでメモ。

mondaq.com経由で見つけたこちらのblog(Squire Sandersがやっているようですが)によると、Dodd Frank法の紛争鉱物についてのSECの規定の有効性に挑んだところがあったようで、既に1審では敗れて控訴もした模様。

1審の判決文は読んでいないが、上記のエントリからすると、紛争鉱物の規定について、概略
1.規定ぶりが不合理で恣意的(Arbitrary and capriciousとあって、行政法についての審査基準の模様。)
2.規定自体が開示を強制している点で、憲法の第1修正(First Amendment)に反する、
というような争い方をして敗れた模様。

結果はさておき、迅速に争うところや、争う際に憲法上の理由(開示を強制することが表現の自由に抵触するということらしい)が出てくるところが、いかにもアメリカだなあ、と勝手に納得したのでした。





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May 28, 2013

単位をそろえる

NY州の弁護士資格で求められるCLE(継続教育というやつですな)の単位を、何とか集めた。そもそも適用対象なのかどうか疑問だったのだが、後から適用対象だったといわれるのもどうかと思ったので、1年間web経由で聴き放題で、いくら、というやつに申し込んだのだった。で、1年の期限が来る前に、外部のセミナーとかも含めて、一応必要単位数はそろえた。

もっとも、次回の登録更新のときにこの数字で申告するか、それとも免除申請をするかは、考えどころ。今回は、外資系に転職して、業務内容との関係で免除になるのかどうか良くわからなかったので単位を集めてみたが、やっていることからすれば、免除になるのではないかという気もするので、どうしたものかというところ。

CLEの講義をwebで聴いた分については、当たり前の話だが、こちらの興味関心及び予備知識がないと、話についていくのも厳しく、音が右から左に流れるだけになってしまう。その辺は問題ありか。講義の作りこみもそれほどきちんとしていない場合(そういうことも往々にしてある)、特にその辺が影響するような気がする。

それとは別にLiveのセミナーも、外資系の事務所によっては、クライアント対象に行っているところもあるようなので、その辺にうまく紛れ込めると、便利ということなのだろう。そういう伝手をどうやって集めるかが難しいのだが…。

 

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May 22, 2013

某セミナー:日本企業がUSの秘匿特権について留意すべき点

昨日は1日に2件セミナーに出るという日だったので、そのうちの1件についてメモ。某外資系事務所のCLE単位つきセミナー。日本側取りまとめ役の某弁護士さん(留学時に推薦状を書いていただいた:お互いに所属が変わっている…)に名刺交換したらお誘いいただくようになったので出ている。今回は、日本企業がUSの秘匿特権について気をつけるべき点というセミナー(題名は正確には異なるけど)。内容が内容ということで、聴衆も多かった。個人的にも興味関心のある分野だったので、非常に興味深くお話をお伺いした。

例によって、怒られない(謎)程度で印象に残ったところをメモ。

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April 21, 2013

ミランダ警告の例外

ボストンに住んでいたことのある人間としては今回の一連の出来事には、驚いたし、BUの卒業生としてはボストンマラソンでの爆破事件での犠牲者の一人がBUの大学院生だったということにも驚かされた。犠牲者の方々のご冥福と被害にあわれた方々の回復をお祈りする次第。

そういう中で、あれ?と思ったのはつかまった容疑者に対してミランダ警告が読まれないという話。
WASHINGTON — The Obama administration’s announcement that it would question the Boston Marathon bombing suspect for a period without first reading him the Miranda warning of his right to remain silent and have a lawyer present has revived a constitutionally charged debate over the handling of terrorism cases in the criminal justice system.
ミランダ警告とは、アメリカの刑事もので出てくる、逮捕時とかに刑事が読み上げる警告で…たとえば次のようなもの。
  • あなたには黙秘権がある。
  • 供述は、法廷であなたに不利な証拠として用いられる事がある。
  • あなたは弁護士の立会いを求める権利がある。
  • もし自分で弁護士に依頼する経済力がなければ、公選弁護人を付けてもらう権利がある。

で、今回はこれが読まれずに尋問とかされたのだろう。通常はそういう状態で得られた供述は証拠として認められない(inadmissible)とされるが、今回はpublic safety concernの例外の適用があるということらしい。


え、そんな例外あったっけ?と思って手元にある英米判例百選(アメリカ法判例百選も買ったけど会社にある…)のMiranda v. Arizonaの解説を見ると、New York v. Quarlesで公共の安全の例外を肯定した、とある。


・・・すいません。知りませんでした。



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March 10, 2013

米国ディスカバリの法と実務 /土井悦生 (著), 田邊政裕 (著)


米国での訴訟における提訴後・トライアル前のディスカバリ手続き全体について書かれた本。特許訴訟への対応を想定して書かれている部分もあるけど、それ以外の訴訟との関係でも有用なのではないかと思う。資料で関連用語の説明や、適用条文の原文、サンプルフォーム(英語)がついているのも理解を助けてくれると思う。続きを読む

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January 17, 2013

クラスアクション禁止?

昨日の利用規約ナイトで出た話で、気になって調べてみたことを取り急ぎメモしてみる。ググッて出てきたものを貼っただけなんだけど、他にも疑問に持たれた方が居られたようなので、ご参考まで。速報性優先ということで、内容も必ずしも精査していないので、誤解とかしているかもしれず、お気づきの点はご指摘いただけると助かります。

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January 09, 2013

はじめてのアメリカ法 /樋口 範雄 (著)



気にかかっていた本だけど、買うところまで思いきれず、近所の図書館で借りて読んでみた (どうでもよいが、電子書籍版もあるとのこと)。

アメリカ法入門というと、結局イギリスまで法制史を遡って行って、そもそも、から説き起こすというようなパターンが多く、そういう必然性があるものの、その辺りは、特に関心がない限りは退屈になりがちなのだが、この本ではその辺はばっさり端折って、現代的な事例に基づき、日本法との比較も交えながら、入門の入門、というような解説をしてくれている。退屈にならないように工夫がなされているので、分量も多くないので、USのLLMに行く人が行く前に、というのにも良いだろうし、それに限らず、企業法務の人が英文契約を扱う際に前提となる知識(例えばcommon lawとequityの区別とか)を得るために読むというのにも良いのではないだろうか。


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January 04, 2013

UCCについてのメモ

CLEでUCC(Uniform Commercial Code)についての講義を聴いたのだが、その際に集めたネット上の情報をメモしておく。
  1. 日本語でのUCCについての概要の説明という意味では、JETROのところのまとめを。
  2. もうちょっと詳細な日本語の解説という意味では、こちらを。ただし、2000年時点のものなので、その後の改正については反映されていないことに注意。
  3. Permanent Editorial Board for the UCC 改訂作業の元締めというべきところ、らしい(ALIULCの合同プロジェクトらしい…って書いたけど、それぞれがどういうところか、正確に把握している自信はない)。2010年のArtcile 9の改訂とかの資料もある。
  4. Uniform Commercial Code Locator@Cornell LII 各州ごとのUCCの各Articleごとの状況が分かりやすい。



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January 03, 2013

ハーバードが無料で著作権法のコースを提供

はっしーさん教わったのだけど、追加で見つけたことも含め、自分の備忘のためにメモしておく。
#up後にいくつか加筆訂正した。

オンラインで大学の講義を提供するというプロジェクトがアメリカとかではさかんで、iTunes Uもふくめ色々あるのだけど、その中の一つ、edX(MIT、ハーバード、UCバークレー辺りが参加)のプログラムの一つとして、オンラインで著作権のコースが提供されるらしい。edXでは他にもサンデル先生の講義とかもあるらしいけど、Law schoolの講義で提供されるのははじめてではないかと思う。

単に講義(1/28から12週間)を提供するだけではなく、期末試験もして、修了証も出すというもので、受講者は500人までとしたうえで、それを25人づつにわけて、個別指導のようなこともあるみたいだし、予習とかに週に8時間(13歳以上が対象といってもネィティブに対してということを考えると、外国人にはそれでは足らないだろう…)以上使うことを求められている、となると、受講するのは結構大変そう(ちなみに申し込みの締切は1/3まで…だけど)。

ただ、こちらの記載によれば、次のようにあり、受講者以外でも資料や録音された講義は見ることができるようにしてくれるらしい。だとすると、後から見る、というのでも良いのかもしれない(軟弱)。
all of the readings and recorded lectures used in the course will be made available to the public on Prof. Fisher's personal site, http://tfisher.org
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dtk1970 at 20:25|PermalinkComments(0)

January 01, 2013

CLEの講義を聴き始めた

元旦は一年の目標、みたいなものだけでもいいのかもしれませんが、もう一つエントリを書いてみようかと…。続きを読む

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