書籍

October 30, 2017

これからの内部通報システム /中原 健夫 (著), 結城 大輔 (著), 横瀬 大輝 (著)

著者のお一人の結城先生に頂戴した(*)ので、感想をメモ。 内容としては、帯の記載よりも、アマゾンの内容紹介のほうが分かりやすいと思う。
*先生には、色々とお世話になっているので、そういう意味ではステマかもしれない。
「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」を詳細に解説。
通報窓口を受託している民間事業者や先進的企業の取組も紹介し、これからの内部通報システムの在り方を提言。
改正ガイドライン自体の解説も、改正経緯から書かれていて、僕のように制度が出来た当初から後の状況のupdateを十分追いかけきれていない人も親切であるうえに、個々の解説も、ガイドライン自体がかなり詳細にわたっているのに、更に補足があって有用ではなかろうか。

また、有識者に聴く、のところでは、このテーマでは第一人者ともいえる山口先生や、このテーマを追っているジャーナリストの方の話が出ていて、その前の章での全体像の解説とは別に個別の論点(法改正を含む)について、最新の状況などについての話が個人的には興味深かった。民間事業者の取り組みとして、通報窓口の受託業者の方や、内部通報制度を導入した企業の話もあるのも同様に興味深かった。

これらを受けて、著者たちの提言があり、改正ガイドラインの下での現状の見直し、内部通報についての社内規定の見直し等が提唱されている。

個人的には、改正ガイドラインでの個々の条文の位置づけ(「必要」「重要」「適当」等)の一覧表と、内部通報制度に関する裁判例の一覧が、特に興味深かった。条文ごとの位置づけを踏まえて、見直しの優先順位付けもしやすくなるし、裁判例がまとめられていると、社内で内部統制制度の導入・拡充を進める際や研修の際の材料として有用だと思う。




憲法で読むアメリカ史
の著者によるアメリカの改憲史についての著書。同書とともに読むと、USLLMで、アメリカ法入門のような講義につなげる意味では有用と思う。一般向けということもあって、憲法の難しい話に過度に深入りせず*1に、改憲についての通史的な解説を読みやすい形で提供してくれている。
なお、同書以降の現代史部分については、こちらに連載がある(書籍化はされないのだろうか…)。

もちろん、こういう時期に出された(2016年5月発行)ということからも推測可能なように、昨今の日本での改憲議論にも資するようにという意図はあるが、最終章以外にはその点に明示的に触れてはいないので、そういう問題に特に用事がなくても、そのほかのところは安心して読めると思う。最終章には今までの章の要約もついているので、極端に言えば、この章だけ読むのもアリかもしれない。





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dtk1970 at 00:23|PermalinkComments(0)

July 22, 2016

某書籍についての感想

いろいろ悩んだが、こういう意見もあるということもメモしておくべきかと思ったのでメモ。全部目を通す気にならなかったので、一応書名は上げないけど、まあ、わかる人にはわかると思うので、よしとする。
わからない人向けのメモではないので、その点はご容赦ください。





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dtk1970 at 20:33|PermalinkComments(0)

July 19, 2016

さようならをもう一度

以前こういうエントリを書いたが、またもや、という感がある話で。紀伊国屋の南口が、規模縮小ということで、個人的には、事実上閉店という感じ。この後行く機会もなさそうなので、出かけてみた。

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でに多少は本が減っている感じだったが、一応まだ営業しているというところでもあり、いろいろ考えて2冊本を買ってみた(内容は内緒)。事実上の閉店とは関係なく、近隣の地図のカバーをしてくれるというので、記念でもないが、それにしてもらった。

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こちらは、本は極力リアルの書店で買うようにしているものの、買う量はたかが知れているわけで、こういうご時世になると、なかなかリアルの本屋は厳しいなあ、とため息をつくしかない。

こうなると、大きめの本屋として、新宿は、コクーンタワーのBook 1stと紀伊国屋本店ということになるが、2点とも無事でいてくれと思わざるを得ない。 

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dtk1970 at 00:24|PermalinkComments(0)

May 23, 2016

若手法律家のための法律相談入門/中村 真 (著)


いつも愉快なblogを書かれている中村真先生が、法律相談の本を書かれたということで、とりあえず買ってみて、雑誌とか目を通すべきものはさておき、読んでみた。

もう若くない企業法務のオジサンにも何か役に立つか、さもなければ、ネタとして面白いのではないか、と思ったので、そのようにしたわけだけど、プロの弁護士の先生方のご意見は別途伺ってみたいと思うものの、素人が読む限り、リスクマネジメントという視点からも率直に書かれていて、迷わないで済むという意味で良い本なのではないかと感じました。
前向きの相談の本はそれはそれで重要なものの、リスク要因になりそうなところにどう向き合うかというのは、なかなかむずかしそう、かつ、そういうことが書かれている書籍はなかなかないのではないかと思うので(知らないけど)、その辺を固くならない感じで書かれている本書は、新人の弁護士さんにとっても、貴重な一冊になるのではないかと感じる次第です。

先生の絵も、某入門の時とは異なり、内容ときっちり咬み合っていて、それでいて、いつもの面白さも保たれているので、そういう意味(謎)でも良い感じでした。 
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dtk1970 at 23:55|PermalinkComments(0)

October 15, 2015

最近読んだ雑誌(2015年10月)

#upしそこねたので、backdateであげておく。

いつものメモ。ビジ法11月号が読み終わってない(ので次回に)…。
あとBLJも…


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dtk1970 at 23:30|PermalinkComments(0)

August 12, 2015

ファイナンシャル ビジネス法務入門 /河村 寛治



本屋で何となく?買ったのだが、ようやく一通り目を通したので感想を、一応メモ。

「これからの法律屋は決算書が読めないと仕事になりません」という惹句にインパクトは感じるが、個人的には、事業会社の法務の場合は、決算書より先に税務の理解でないの?という気がしないでもない。商社出身の著者とは、見えているところが違うのかもしれない。

ともあれ、企業金融に関する事柄について、法律のバックグラウンドのある人向けに、概要を手際よく示すという意味では、悪い本ではないのではなかろうか。噛み砕き加減もそこそこ悪くない感じだし。あと、まあ、この著者にしては、文章も読みやすいと思う。 編集の方が頑張られたのだろう。
某所で称賛されていた某書とかは、文章が眠くて一通り目を通すだけでも厳しかったことを考えると余計にそう思う。

気になったのは、次の2点
  • 法務系の方向けという割に、条文の参照が少ない箇所があったところ。もうちょっと細かくあったほうがいいのではなかろうか。
  • 参考文献の紹介があまり充実していない。個々の分野についてはざっくりとした紹介なんだから、各章ごとにわけて、より詳細に、次の一歩を理解するための道案内たるべき書物(ネット上の情報も含め)の言及があってしかるべきだろう。


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dtk1970 at 23:30|PermalinkComments(0)

June 07, 2015

民法大改正で契約実務はこう変わる!/遠藤元一


遠藤先生
が書かれたということで、某所で関心がある旨お話したら、なんとご本人から一冊頂戴してしまった。すいませんです。頂いたものはISBNはついていないが今後付けられたうえで、書店などでも購入可能になるとのこと。

 追記:この冊子については、次の4か所で入手可能である旨、遠藤先生からご連絡をいただいた。
  (1)霞が関にある弁護士会館の地下の書店(弁護士会館ブックセンター)
  (2)大阪弁護士会館の書店(弁護士会館ブックセンター)
  (3)東京地裁・高裁の裁判所の建物の地下1階の書店(至誠堂)
  (4)千駄ヶ谷にある東京税理士会館内にある書店 

こちらの状況故にざっと目を通しただけでの感想でしかないけど、頂いたものであるということを割り引いても良い本だと思う。特に今まで債権法改正のフォローを十分にしていなかった僕のような、法務担当者にとっては。

一般向けに噛み砕いてあるのかと思いきや、思ったよりはしっかり書いてあって、それほど敷居は低くなく、法律のまったくの素人が読むのは大変かもしれない。

寧ろ、経験豊富な著者が、一人で全体をまとめて書いていて、統一感はあるし、実務家目線(学者の考える「実務」ではなく)でコメントしてくれているので、法務担当者にとっての使い勝手がいいのではないかと思う。そういう意味で企業法務の方がここから入るというのは十分、ありという気がする。個人的には、興味関心のあるところとそうでないところと、理解にムラがあるので、こういう形の情報を通じて、それほど手間がかからずに、そのムラの是正ができるのはありがたいと感じるところ。


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dtk1970 at 18:15|PermalinkComments(0)

February 24, 2015

18歳の著作権入門 (ちくまプリマー新書) /福井 健策 (著)



買った、読んだ、楽しかった。

・・・っていうだけではアレだが、内容についてはすでに戦士さんのところで適切に紹介されているので付け加えるようなことはないので手短に。

押えるべきところを押えて、わかりやすく、とっつきやすい形で解説がなされているのが素晴らしい。最新の諸々もふんだんに取り上げられており、それが敷居を低くするとともに、現状の最前線での状況の概観という意味でも良いのではなかろうか。そして何より、著者ご本人が楽しんで書かれていることも伝わってくるのも良い。

一点気になるのは、タイムリーな時事ネタについては、風化も早いので、ある程度経つと伝わらない部分が出てきそうなところ。この辺はネタのメンテナンスをこまめにしていただくしかないのだろう。

個人的に特に印象に残ったのは次の点。
  • JASRACについて何をするかの紹介についての最初の一言。ある意味端的すぎてぐうの音もでない。ぐう。
  • 事務所の若手の先生のつぶやきに対する突込み…。 
  • 二次的創作物の例を示すイラスト…orz.


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February 17, 2015

下町M&A: 中小企業の生き残り戦略 (平凡社新書)/ 川原 愼一 (著)



@overbody_bizlaw先生のつぶやきで見て購入。平易な文章で新書版で長くないこともあって、すぐに読めた。

業績の厳しい中小企業の事業再生の手段としてのM&Aを物語仕立てで解説、というのがざっくりとした概要なんだろう。書いているのは、ご本人も経営していた会社がうまく行かなくなってそこから立ち直ってきたという経歴のコンサルタントの方。

M&Aというと華やかなイメージを持つ人も世の中には居るのかもしれないが、中小企業の場合、事業承継として行う場合にしても、こういう再建の一環として行う場合にしろ、華やかさとは縁遠く、シンドイところが多いのだけど、その一方でこういう局面が必要な企業は多いだろうから、そういう局面で何が重要になるか、を知っておいても損はないのではなかろうか。大手企業であっても買い手側で関わることもあるかもしれないわけで。題材となっている事例(架空だろうけど)は、いくつかの幸運が重なっていると思われるところもあるので、一般化がどこまで出来るのかはやや留保が必要かもしれないけど。

個人的に印象に残ったところを、ネタバレにならない範囲でメモしておくと次のあたりか。
  • まずは、メインバンクに話しをしておくということと、他の金融機関がメインバンクの対応を見ているという辺り。
  • 大口の得意先に、自社を買ってくれないかとダメ元で一度言ってみるという理由とその結果について爾後の交渉での使い方。
  • 債権回収を試みるサービサーとのやりとりのなかで、著者がこのサービサーとの特定調停が行けそう、と感じた瞬間とその理由。



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dtk1970 at 00:18|PermalinkComments(0)

February 10, 2015

訴訟の心得 / 中村直人 (著)



企業法務の訴訟において高名な中村弁護士が書かれたということで、川井先生がエントリにされているのを見るなどして購入。

200p弱と分量はないものの、読みごたえを感じる一冊。弁護士さんだけではなく企業法務の担当者にも読んでほしいとはしがきにあるけれど、文章自体が平易であっても、訴訟法とか訴訟実務について一定以上の知識と経験がないとおそらく手が出ないのではなかろうかと思う。そういうものを持っている層が読むことを前提に、知っていて当然のような事柄については、知っているのが前提という形で書かれているように思うので、その意味で取っ付き易い本ではないかもしれない。それでも読んでおくべき本ではないかと思う。



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December 21, 2014

私家版Book Guide2014年冬版

*事前の仕込みのエントリになっております。

 
さてさて、いよいよ自分の番というわけです。Advent Calendar企画。しかもよせばいいのに(オイコラ)BookGuide企画ですよ、よりによって、BLJの発売日に。

ここ数年はこの日は日本におらずTL上とかでの盛り上がりに参加できない(?)ので、私家版のbookguideめいたことをしていたのでした。今年は、諸般の都合で日本にいるものの、いつもそれほど読む量が多いわけではないのに、例年に増して読めた本の量が少なく、その手のネタをしにくい逆境なわけですが、それでも、前回のこの種のエントリーを書いた以降に読んだ本の中から、冬休みに個人的におすすめする本、という観点から3冊を選んでみようかと。

なんだか期せずしてとっても高レベルになっているカレンダー企画なので、こんなのでいいのか、と思いつつも、@overbody_bizlaw先生からありのままでよいというお言葉なので、それに甘えることに。

…と前置きが長くなったので、本題は「続き」にて。 


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dtk1970 at 19:34|PermalinkComments(0)

December 15, 2014

企業法務のFirst Aid Kit 問題発生時の初動対応 First Aid Kit for Corp. Legal / 田辺総合法律事務所 (著)


はっしーさんかたさんと同じく、編著者の事務所のY先生からご恵贈いただいたのだが、こちらが読むのが遅く、エントリにするのが遅くなってしまった。 Y先生ありがとうございます。

いただいた、ということによるバイアスの可能性は排除できないとしても、企業法務の担当者の手元にあって損のない一冊だと思う。手元にあるだけでも有用だけど、できれば、事前に一読しておくと、とっさのときの使い勝手が増すと思う。

何らかの事態に巻き込まれた際に初動で間違うと、その後のリカバリーに費用と手間がかかるとか、そもそもリカバリーが不能というケースもある。そういう意味での初動対応の重要性は今更言うまでもないと思うけれど、そこに重点を置いて、広範にカバーした書籍というのは、寡聞にも聞いたことがなかったように思うので、その意味で画期的なのではなかろうか。既に上記のお二方のエントリでもコメントがあったけど、広範に、問題になりそうな事態が拾ってあるので、網羅性も高そうに見受けられる。

重要だと思うのは、もちろん、然るべき弁護士さんに相談する、だけど、それまでの間にどうするか、ということと、弁護士さんにつなぐ際にどういう情報を持って相談に行くべきかについてのアドバイスがあることだと思う。最初の相談に行ったときに、いろいろ質問されて、それについてそこから調べているのでは、時間もかかるし、それ自体初動対応としてはもう手遅れということにもなりかねない。そういう意味で、こういう本に従って、即時に資料を集め、相談に行く際には、その種の資料を携えて(個人的には行く前に電子データで送っておくけど)行くのが望ましいのだろう。

そんなこんなでお手元にあっても有用なのではないかと思う次第。願わくは定期的にupdateされ続けること。こういうものでも、法令改廃・判例の進展なども反映すべきなので。

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dtk1970 at 22:18|PermalinkComments(0)

November 18, 2014

法務部員のための 契約実務共有化マニュアル For Legal department Manual of contract business sharing / 河村 寛治 (著), 宮田 正樹 (著), 河西 潔 (著)



仕事の早いはっしーさんが早々に紹介されていたが、同時期に入手していたものの、遅ればせながら、一通り目を通した感想をメモ。

商社法務の経験者の先輩方が、契約法務に特に重点をおいて、営業マン向けに、彼らに関係のある法務的分野について書いた解説書、というところで、はしがきでも、法務担当者がまず読んで、営業マン向けの研修に使うことを想定して書いた、とある。

一読した印象では、そういう用途向きなんだろうな、というところ。営業マンに一から読んでもらうのは、法律関係の書籍としては薄めとはいえ、分量の面でも厳しいという気がする。内容面でも、表や図がうまく使われていて、文章も法律書にしては相当程度噛み砕いて、読みやすく書かれているけど、でも、まだ、難解と取られても不思議はないように見受けられる。そうだとすると、法務担当者が自社の状況に応じた調整も含め、補足説明をしながら、研修をする、という感じになるのだろう。 なお、渉外系のお話は明示的には含まれていないが、その辺の特殊要素は別途補えばいい話だし、基本は共通のはずだから、こういう書き方もあり、だろうと思うところ。

個人的には、寧ろ、いわゆるセオリー本と一緒に、初心者の法務担当が読むという使い方の方がいいのではないかという気がした。社内での契約書の取り扱い方とかも書かれているから、便利だし、法務担当者になろうという人間にとってで、あれば、ここまで噛み砕いてあれば、一人でも十分とっつきやすいだろう(これがダメならそもそも人選ミスと言えるくらいに)。まずは営業マン向けに最低限のアドバイスができるようになってもらうという感じか。もちろん法務担当者については、この範囲はあくまでも最初、であって、その先に行かないといけないのだが、手際よくまとめていただいているので、ここからスタートというのも悪い話ではないように思う。 そういう意味では一社に一冊あっても良いのではないだろうか。続きを読む

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dtk1970 at 18:47|PermalinkComments(0)

October 20, 2014

不正リスク管理・有事対応--経営戦略に活かすリスクマネジメント / 山口 利昭 (著)



ビジネス法務の部屋、の山口先生の著書。読み始めたら、ご病気ということで、blogも一時更新が止まっていたのだけど、ご快癒されたようで何よりです。

本書の意図するところについては、「はしがき」に次のとおり書かれている。
 
本書は、経営者がアクセルを目いっぱい踏んで事業経営を行うことを念頭に置いている。経営者が全速力で走るなかで、走りながら考えるべき不正リスク管理について、「不祥事は御社でも起きる」という発想を基に、平時の対応および有事の対応について検討した。また、経営者の方だけでなく、経営者を支える幹部の方々、リスク管理に携わる社員の方々にも参考になるように、なるべく平易な文章を心がけて書いたつもりである。

一通り読んだ感想としてはこの意図通りの本になっていて、上記記載の方々にお薦めできる本になっていると思う。特に、
「100点満点のコンプライアンス経営というよりも、会社にとって大きな損失が生じることを防ぐためのコンプライアンス、つまり、合格最低点(60点)を目指すために経営者ができることを中心に述べている」

という点が好ましく感じられた。コンプライアンス(法令遵守にとどまらず、「社会の要請への適切な対応」まで含むものとしての)が「お題目」に終わらないよう、中身のあるものとするために、経営者が持つべき視座というものを提示しているように思う。最近の情勢や法改正、海外動向(独禁法、FCPAとかの話も含め)まで含めて、配慮すべき事柄全てに配慮が行き届いているのは面目躍如というところであろうか。

経営者向きなので、細かな現場レベルでどうするかは記載していないが、本を読みやすい分量に留めて、経営者に読んでもらうには(これでも分量が多いということはあるかもしれないけど)必要なことなのだろう。

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dtk1970 at 18:42|PermalinkComments(0)

September 23, 2014

要件事実入門 / 岡口 基一 (著), 中村 真 (イラスト)



ガチムチ要件事実ANIKIとしてお馴染み(?)で、自由すぎる裁判官、岡口裁判官と、笑える漫画*1でこれまたお馴染み(?)の中村真弁護士のコラボということで、仕事ではまったく要件事実の必要性を感じたことがないものの、ネタをひろおうと思って、出版社サイトで予約購入した一冊。漸く一通り目を通したので、素人目線での感想をメモ。
例によって、まともな紹介はronnorさんのところなどで御覧あれ。  

上記の二人の濃厚な絡み(意味不明)を期待したのだけど、漫画はエピローグだけで、意味ありげには描かれているものの、個人的には特に何かが「せりあがる」ようなものを感じることはなかった(謎)。途中から取ってつけたような感じなので、そこはちょっと残念にも思われたけど、まあスケジュールの関係などで仕方ないのだろう。

その代わり、というわけではないだろうけど、随所に素人でもクスっと笑えるコネタ(例えば、岡口乙とか)が仕込んであるので、それを探すのも一興かもしれない。続きを読む

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dtk1970 at 18:07|PermalinkComments(0)

August 30, 2014

憲法主義:条文には書かれていない本質 /内山 奈月 (著), 南野 森 (著)



気の迷いでつい買ってみた一冊。AKB云々とあると、それだけでネガティブな印象というオッサンではあるが、ronnorさんのところとかの紹介を見て、買う気になったのでありました。

確かに、内山さんが相当きっちり学校で勉強されていたようで、語弊のある言い方を許してもらえば、話が結構高度になっても(憲法変遷の話とかまで付いていってるしねえ…)、きちんと話に付いて行っているのがすごいなと思う。自分が同年代のときにここまでの話についていくことはできなかったと思うから。
(一番ショックだったのは、大学の卒業年次が同じなので、近い年代と思われる南野先生が彼女のことを「お嬢さん」と評していたところ。確かにそういう年代なんだけどね…orz)

内容面でも確かにわかりやすいと思うし、読みやすい。

個人的になるほど、と思ったのは、
  • 硬性憲法と最高法規性の関係についての指摘
  • 違憲立法審査権の反民主的性格
という辺り。

 

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dtk1970 at 00:59|PermalinkComments(0)

August 28, 2014

リーガルクエスト会社法 補遺(その2)

自分用のメモということで。

今回の会社法改正を受けての補遺が出た。改正の要綱案の時点でも補遺が出ていたので、補遺が出るのは2度めということになるはず。こうやって補遺がでるということは裏を返すと、第3版はまだ出ないということなんだろうか。まあ、施行規則とかが固まってからということの方がよいのかもしれない。

個人的には改正のまとめとしてもわかりやすいように思うので、重宝しそう。業務としても会社法周りの法務もやることになったので…。




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March 26, 2014

超実践 債権保全・回収バイブル―基本のマインドと緊急時のアクション Debt Recovery Bible, Mindset and Emergency Actions / 北島 敬之 (著), 淵邊 善彦 (著)



一度予告記事がBLJに出てから、実際に出るまでに一年かかったけど、個人的には待望の一冊が出た。出版記念セミナーがあるということで、出席して一冊入手して早速目を通させていただいたので、感想をばメモ。

債権回収・保全系は、勤務先のビジネスモデルなどの関係から、今までのところ、個人的にはあまり縁のない分野なのだが、いつ何時必要になるかわからない分野なので気になっているのだけど、そういう会社においても、この本を手元においておくだけでも間違いなく有用。加えて、一読して、どこのあたりに何が書いてあるかを把握した上で、いざことが起こった時には、すぐに紐解けるようにしておくと更によいと思う。その意味で、ステマではないはずだが、帯にあるように、法務担当者一人につき一冊あってよいと思う。


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dtk1970 at 23:53|PermalinkComments(0)

March 20, 2014

憲法で読むアメリカ史(全) (学芸文庫) / 阿川 尚之 (著)



以前新書2冊本だったものが、加筆修正のうえ、1冊にまとまって文庫化されたもの。

アメリカ合衆国として今我々が知る形になるまでの間に、国の形に関して起きた問題が、国の形を定める憲法問題として裁判所で争われるのは当然と言えなくもないが、政治問題と司法との距離感が、日本と異なり密接というところにまず驚かされる。その中には、アメリカの陰の部分も当然含まれていて、人種問題や、南北の差異(格差といえるのかはわからないが)も出てきており、国としてまだ若いのだな、ということを感じた次第。

USのLLMに行く際には、アメリカ法入門という科目などを履修する際の副読本として必携という気がするのは間違いない。僕自身も事前に新書版を読み、持っていったから。帰国後に同様に留学する若手にあげて、新しく買いなおそうとしたら既に絶版になっており、今回新しく出たのはありがたい限り。上記のような用途に限らず、アメリカ法やアメリカを知るうえで、参考になるところの多い一冊だろうと思う。

惜しむらくは、新書版に含まれていた、ブッシュ対ゴアの一件についての章が削除され、結果的に記載がレンクイストコートの前で終わっているところだろうか。まだ言及するのは早い、ということのようだし(その旨の記載がある)、その点は理解できる一方で、レンクイストコートの時代も長かったから何らかの記載があっても良かったのではないかという気がする。それは今後の課題として、更なるupdateを期待したいと思う。

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February 26, 2014

私家版 国際契約を学ぶためのブックリスト

BUのLLMで一緒だった、某弁護士さんから、概略次のような質問をいただいた。
 
「法務部員が国際取引を学ぶ入門書的なものとしておすすめはありますが?それと法務部員として英文ドラフトを勉強するのにお勧めの勉強法とか」

で、コメントはさせていただいたのだが、ついでなので、適宜加筆しながらエントリにしてみる。洋書については、それほど知らないので、和書で自分で勉強しようというところを前提としてご紹介してみる。紹介した本について、こちらのblogで、ご紹介したものは、そのエントリを、そうでないものは、アマゾンまたはその他にリンクも張っておく。どこかのタイミングでこの手のエントリを書いてみようかと思っていたので、渡りに船、というところ。

なお、以下は、現時点での私見なので、そのつもりでお読みいただきたく。さらに、今まで書いたことの繰り返しなので、長らくご愛顧いただいておられる方々にとっては退屈かもしれません。
*現時点の私見なので、過去に書いたエントリの内容とは必ずしも整合していないかもしれません。あしからず。

 



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February 19, 2014

改訂版 契約実務と法-リスク分析を通して- /河村寛治 (著)



はっしーさんが以前褒めていた本。僕自身にとっては、なんだか相性が悪いというか、理由はよくわからないものの、どうも読み通せずにいて、気になっていた。今回改訂版が出たということで買って、一気に読んでみた。 一通り読んでみると、僕自身の印象としては、もともとの用途*1もあって、法学部なり法科大学院を出た人が契約法務、特にドメスティックな契約法務*2の業務に就くに際して最初に紐解くべき一冊、のうちの一つ、として有用、というところ。

単に理論的なこと、文言についてのみ書かれているわけではなく、その背後にある考え方、不可抗力とか契約解除のような契約書の一般条項について、なぜこのような条項が要るのか、条項を書く際に、どういうことを考えて書かないといけないのか、などを丁寧に説明してあるうえに、文言以外に気を付けるべきところについての記載もあるので、OJTツールとしても使いやすいのではないだろうか。契約実務総論、という感じでこの本を読み、その後、それぞれの契約分野の詳細については、それぞれの分野ごとにもっと詳しく書かれた書物をこの後に紐解くなどしてゆけばよいのではなかろうかと思う。*3

今回、債権法改正の状況を受けてのコメントや反社排除条項についての記載も追加されたので、特に前者については、契約書の見直し等を考えるうえで、件の改正(昨年末時点での話ではあるが…)がどういう影響を及ぼし得るのか、考えるうえでは有用なのではなかろうか。*4
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February 10, 2014

若手弁護士のための民事裁判実務の留意点 / 圓道 至剛 (著)

仕事の早いはっしーさんに出遅れたが、同じ本について感想をメモ。BLJのbook guideでも紹介されていたもの。若手弁護士さん向けの本だけど、弁護士ではない企業の法務の担当者としても一読し、手元においておいて損のない本だと思う。

弁護士経験の後、任官され、現在は再び弁護士をされている著者の手によるので、弁護士としてどうするという部分を丁寧に分かりやすく説明するだけではなく、ここのステップで、裁判所側が何をしているのかまで、説明があるので、訴訟全体の流れを俯瞰する形で、手続きを見ることができるので、企業法務の担当者として、書面の書き方(書式例もついている)、手続きの進め方を押さえておくうえでも有用だし、弁護士さんとのコミュニケーションをはかるうえでも有用なのではないかと思う。

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January 24, 2014

民法改正のいま ―中間試案ガイド / 内田 貴 (著)


債権法改正は、雑誌の記事を読む程度だし、そもそも改正が本当に要るのだろうか、という思いはあるのだけど、とはいえ、さすがにもうちょっと全体像を抑えておいたほうがいいような気がしたこともあり、内田参与の本を読んでみた。

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December 31, 2013

第2版 インターネット新時代の法律実務Q&A / 田島 正広 (監修), 田島正広(編集代表) (編集)


はっしーさん
伊藤先生のご紹介を見て、買って読んでみたもの。幅広くトピックを拾い上げ、それぞれについて、簡潔にポイントがまとまっていて、IT系以外の会社の法務にもあったほうがよさげな一冊。こちらの業務においても有用そうな感じ。SNSでの誹謗中傷とか漏洩とか、クラウドの利用とかそういう話は、非IT系の会社でも対応が必要になることがあるわけで、普段こういう分野について縁がなくても、何かあったときに、とりあえずまず紐解く一冊として、手元においておけば、便利でよいのではなかろうか。その裏返しとして個別の話についての解説は、抑え目だけど、書いてあることよりも突っ込んだことを調べたいときに参考になるような情報への橋渡しについても、目配りが十分されているので、調べもののとっかかりに使うという目的でも有用そう。この種の話題についてはググっても何らかの情報は出てくるだろうけど、IT系企業のインハウスやその分野で活躍されている弁護士さん、研究者さんという錚々たる面々が執筆しており、内容も正確で、いつの時点でupdateされているのかも明確という点で、こういう本の形で手元においておいたほうが簡便だろう。既に1度updateされているので、今後もこまめなupdateを期待したいところ。

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December 30, 2013

人事と法の対話 -- 新たな融合を目指して / 守島 基博 (著), 大内 伸哉 (著)


気になっていたので、他の本と一緒に丸沼で買って、一気に読んだ。企業法務の方々であれば読んでおいて損のない一冊ではなかろうか。

労務系の法務は、企業内部では法務というよりも人事のマターで、法務がなかなか関与しにくいというのが個人的な印象。それは情報管理上の制約とか、他の従業員とのバランス面での考慮(よって他の社員の待遇を知らないと対応は無理だが、それを知っているのは人事のみというのが通常だろう)とかゆえのことと感じていて、やむをえないところだろうと思っている。転職して、外資系企業に来て、今までよりはその種の案件に関与する(それでも関与の仕方は受身的なところが強いが)ようになったものの、人事との距離感はつかみにくいし、人事という部署がどういうことを考えているのか良くわからないような気がしている。
 
この本を読むと、企業側の人事を取り巻く状況の変化(働き方の多様化とか、いわゆる「グローバル化」への対応とか、高齢化とか…)や、それに対する人事側の対応の考え方、みたいなものの一端を伺うことができて、検証が出来ているわけではないものの、多少なりとも人事側の視点を理解しやすくなるのではないか、という気がした。

個別の内容について、個人的に特に印象に残ったところをいくつかあげると次のようなところ。
  • 組合が協調路線を取りすぎて、戦闘的になりたくてもなれなくなっているし、企業人事側も、戦闘的な組合の姿勢を受けて立つ経験がなく、そういうのに対応するノウハウがないために、新しいタイプの労働問題への対応や海外での組合対応がうまくできていないというのは、納得。
  • 産業医さんとの鼎談では、産業医さんとお話をする機会が今のところないこともあり、産業医さんが労使関係も踏まえて、どういう話のもって行き方をして、会社の労務環境を改善するか、という視点が新鮮だった。
  • コマツの方との鼎談では、人事のグローバル化と、ローカル化の棲み分けについての考え方が興味深かった。
 

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December 29, 2013

年末の買い物



年末に買うなよ、と突っ込まれそうですが、なんとなく、年末近辺に買ってしまうのが六法なのでした。法務を名乗る以上手元に最新のものがないのもどうかと思っているので、毎年買うようにはしています。

判例六法はプロフェッショナル版もいいのですが、そもそもあまり六法を引かないというか、引くときはweb上で引くことが多いのでした。また、むしろマイナーな法令を検索することの方がが多く、そういうものは、どのみちプロフェッショナル版でも掲載されていないので、むしろ1冊にまとまっていることのメリットを選んでこちらにしています。

今回は他のついでに丸沼書店で買いました。続きを読む

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December 24, 2013

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2014年 2月号 [雑誌]



出遅れたが、例によって、気になったものについてのみ、感想などをメモ。

ブックガイドの最初の座談会。定例のものではあるが…箇条書きしてみる。
  • 発言者の特定を試みることに重点を置いてしまうのはさておき、内容は相変わらず面白い。マンネリ化を避ける編集部の努力と、特にAさんとBさんの鋭さには感服します。
  • 債権法改正の分野については、まあ、いろいろ思うところがあるけど、紹介されている後ろ2冊はチェックしようと思う。約款による契約論は、買ったけど読めていないので、読まないと…。
  • 会社法・金商法のところは、あまり今のポジションだと関係ないのだが、ゼミナール金融商品取引法は気になっていたので、これも内容を手にとって見てみたいと思った。
  • アジア系は今の職場では用事がないのでスルー。
  • 知財のところは、著作権周りは話が時々来るので、田村先生の本の新刊が出たら抑えておけるとよいのだが…。
  • IT関連のところは、なるほど、というところ。共通番号法については気になるのだが、Aさんが指摘されているように、個人情報保護法自体の改正があるのであれば、今すぐ何かするのは、手間が割に合わないかもしれない(岡村先生の本は買ってはあるが…)。
  • 競争法については、Aさんのコメントにある「当局か長澤先生が書いたものを読んでおけば間違いはないでしょうね」という趣旨のコメントに同意。
  • 人事労務は、大内先生の新刊が気になっているので、やはり読まないと、と思う。
  • 訴訟/執行・保全については、圓道弁護士の本と執行保全の本はチェックしておきたいと思った。
  • リスク管理などの分野については、堀江さんの本に対する、Aさんの評価に納得。僕は共感できたこともあり、自分としては高い評価なのだが、そうでない人もいるだろうし。
担当者・弁護士の方々がリストされている中で個人的に気になったのは、次のとおり。表記は略式で失礼。今回は、座談会で俎上に上がっているものと比べると、取り上げられている本が重なっている度合いが高いというのが直感的な印象。:
  • 佐々淳行 完本危機管理のノウハウ
  • ジュリアーニ リーダーシップ
  • ホペンカンプ 米国競争政策の展望
  • 菅久ほか 独占禁止法
  • 杉浦ほか 英文契約書の法実務(一度借りて読んだのだが、買おうかと思う)
  • 井原 国際ジョイントベンチャー契約
特集の後ろに書籍の広告があるのも、今までとは違う印象。p57については、なぜB&Mの特定の弁護士さんの名前が出ているのか、わかりにくいかも。おそらく担当Pという意味でしょうけど。書籍の広告で思い出したが、北島・淵辺本はどうなったんだ(定期ポスト)。


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December 21, 2013

私家版法律実務書大賞2013?

#予約投稿機能を使って事前に仕込んでおります。

昨年に引き続き、BLJの出る時期に日本にいない予定なので、あらかじめこの企画を仕込んでおきたく。
(どうでもいいけど、こういう定期エントリ系は楽といえば楽だよね。ネタを考えなくてもいいから。中身は考えないといけないけど)。

2012年12月からの1年間を対象に、ということで、読んでエントリにした本の中から、特に良かったと感じたもので、冬休みにお薦めのものをもう一度ご紹介。やや手抜きですいません。今回は、諸般の事情で読んだ冊数が昨年よりも少ないのだけど、まあ、そこはご容赦ください。


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November 30, 2013

トンデモ“IT契約"に騙されるな /上山 浩 (著), 日経コンピュータ (編集)


本屋で最初見たときに、表紙の色遣いからなんとなく手に取るのを躊躇ったのだけど、はっしーさんのエントリ(及びそこで引用されている伊藤先生のエントリとhitorihoumuさんのエントリ)を見て、買ってみた。法務の人というよりも開発現場にいる人に契約についてのリテラシーを高めてもらうことを念頭に書かれた本だけど、法務の人にとっても、読んでおいて良い一冊だろうと思う。IT契約については、どんな企業も発注者側になることが想定されるので、別にIT系企業の法務の人に限らず、ということになると思う。

買ったきっかけは、はっしーさんのエントリにあった、瑕疵担保についての解説がわかりやすいというコメントで、そこに限らず全般的にわかりやすい。開発現場での経験を積まれてから弁護士になられ、弁護士としても開発がもめた案件を担当されている著者が、IT系の雑誌に連載した内容が元になっているのだから、当然なのだろうけれど、はっしーさんの指摘にあるように、法務担当者でも理解しているとは限らないし、わかり易いのだから、理解に自信がなければ読んでおいて損はないと思う。僕自身も、幸い今まで瑕疵担保責任についての法的な性質などについて議論をする場面に行き当たったことがないこともあり、理解に危ういところがあったのも事実で、読んでよかったと思う。

全般を通じて、ユーザーサイドにたって、「トンデモ」な契約をすることのないように、考え方を丁寧に説明してくれているのだけど、泥棒にも三分の理、ではないが、ベンダーがそういう「トンデモ」を言い出すのにも、なんらかの理由があるのかもしれないと思うし、ベンダーとユーザーの間での相互理解がまだまだ足りていないから、「トンデモ」契約を結ぼうと画策したり、結んだ結果トラブルになる、ということなのではなかろうかと思う。もちろん、それについては、ユーザー側の無理解や不勉強ということもあるだろうが。いずれにしても、相手のことも理解したうえで、リスクは十分認識したうえで、契約にいたれるよう、率直に話をすることが重要なのではなかろうか、という印象を受けた。

ちなみに、はっしーさんの今回のエントリで言及されている前のエントリも読んで、もう一つ思ったのは、この本でも書かれているように、商行為である請負についての瑕疵担保期間について、商法526条がデフォルトルールとして適用されるべき、というのは、確かに?な話だと思う。とはいうものの、請負と売買の区別が常に明らかとも限らないこともあり、かつ、請負か売買かで瑕疵担保期間に差異が出ることも違和感があるということから、民法に従った1年の瑕疵担保期間が長すぎるのであれば、商法526条の内容を踏まえて、瑕疵担保期間を半年にしてほしいという交渉はやはりするだろうなあ、と思うのでありました。前記の違和感そのものはそれなりに理解できると思いますし。ただ、論理構成というか、交渉の仕方という意味ではむしろビジネス判断に基づくものになるのですが…。



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November 10, 2013

鉄道と刑法のはなし (NHK出版新書 420) /和田 俊憲 (著)



JR某駅構内の本屋で購入。一気に読んだ。「何じゃこりゃ(松田優作風)」と思って手にとったのがきっかけなのだが、読みながら「ヲタをこじらせるとは…こういうことだ(ちゅどーん)(ランバ・ラル風)」と思ったのでありました。 何を言っているのか自分でも良くわかりませんが(滝汗)、要するに面白かったということです。鉄道についても、法律についても、それほど詳しいわけもないですが、それでも、楽しめましたから。

鉄道と刑法という演習を学部でもロースクールでもやってしまう(実施できたということはそれなりに学生が集まったということなのだろうか)というのもすごいけど、出てくる事件などもきちんと鉄道に関連していて、ヲタらしく鉄な目での事案の解説も周到で、それでいて刑法の目から見ても論じるに足りる(ように見える)事件であり、内容面でもバラエティに富んでいて、確かにこれなら「法鉄学」の演習がなりたつだろうな、と納得する。マイナーに見える罪とかも結構幅広く出てくるので、具体的な事案とともに見ることで、刑法の理解にも資するのではなかろうか。一方変わった刑法入門という使い方もありそう。  

個人的に印象に残った点は次の2つ。
  • 巻末の索引が、駅名索引だったこと。鉄方面の索引だけだと「法鉄学」という意味ではバランスが悪い?のではないかと思うから、条文索引もあわせてつけてほしかった。
  • 自動改札を使ったキセル乗車の取り扱いについて、詐欺罪ではなく電子計算機使用詐欺罪とみるべきという指摘に対して、鉄道営業法の不正乗車罪とみるべきとの指摘。この当否を判断できる能力は僕にはないが、興味深く感じたのは確か。

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November 08, 2013

国際的法律文書の作成―英文契約書を中心として / 中島暁 (著)



漸く一通り目を通し終わった。メーカー法務OBの手によるもので、グローバル化の中で、英米以外の国の人が英語を使って契約書などの法律文書を作成し、それを運用する際の注意事項の解説が興味深い。
いろいろ細かいところで気になるところはあるものの、ある程度書物も読んで、英語の法律文書を読み書きするのに心理的抵抗がなくなって、一定程度の文書が読み書きできると思えるようになったという感覚があるレベルより上のレベルの人が、さらに一歩前に、レベルを上げるうえで有用な本、というところだろう。ある程度英文での契約書その他の法律文書を読み書きできるようになった人向けという印象で、ある程度実務経験がないと読んでも理解しにくいのではなかろうか。早稲田の法学部での授業でのテキストに基づいているようだけど、内容はすばらしい反面、ビジネス経験のない学生さんにこの内容がどこまで伝わるのかはやや疑問。
その一方で、僕にはよさげ、というか読みながら勉強不足が刺さる感じ。ベテランの引き出しの多さを堪能するというか、教えを乞う感覚で読むのが良いのではないかと思う。

参考になった指摘をいくつかメモ(一方でlaw of conflict of lawsをめぐる一連の話は正直難しくてついてゆききれなかった。無念。)
  • 日本語ー英語間でも似たような英語がある際に、厳密にいうとあるはずの差異を無視していると落とし穴にはまる危険があることも示唆も有益かと。消滅時効とstatute of limitationとか相殺とset-offとか…。
  • 日本の調停とアメリカのmediationの違い:前者は合意がまとまれば民事調停法により合意書面に執行力があるが、後者はそういうものがない、というのは、意識したことがなかった。
  • p128に、ユニドロア国際商事契約原則をそのまま準拠法として指定すると、オレゴン州ではそれが認められるとのこと。こちらをみると確かにそうなりそう...。
  • ネットでの通信などの発達により裁判管轄が不明瞭になり、契約にどういう法律が適用されるか予想しにくいからこそ、適用された法律により契約の各条項が無効とされたときに備える意味で分離条項は有用との指摘(p145)。
  • 米国企業相手に米語で交渉するときには、法律・契約用語にこだわり過ぎないほうがよい場合もある(p177)。程度問題はあるにしても、別に米国企業に限った話ではないような。専門用語を使わなくても済むときは使わずに済ませるのもひとつの手というのはどこでも一緒のような気がするけど。
  • 第2編の用語集も、似たような用語との異同・差異の説明が興味深い。best effortsについて英国・豪州と米国などの解説はへーって感じなのだが、判例とかを踏まえてのコメントの場合はその辺の出所を示してくれるとなお良かったかもしれない。optionとdiscretionは、選択してもしなくてもよい場合はdiscretionの方が良い、とかの指摘も興味深かった。

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November 06, 2013

最強のリスク管理 /中島 茂 (著)


しばらく前に読み終わっていたけど、書き忘れていたのでメモ。

リスクマネジメントに長けた弁護士さんの手による本。「最強」とはまた大きく出たなと思ったが、読んでみると、確かに内容が優れていると思うので、そこまで謳うのもあながち誇張とまでは言い切れないのではないかと思う。実例も(おおむね特定はされていないが、一定の知識があれば特定は可能なはず)交えて、簡潔かつ実践的に書かれていて、とりあえずこの分野で何か一冊というのであれば、手に取って読むに足りる一冊ではないかと思う。各節ごとにまとめのチェックポイントが付されていて、内容が頭に残りやすいというのも好ましい。

個人的に特に印象に残った点を順不同でメモすると次のとおり。
  • 不祥事対応の研修をすることそれ自体が取締役の善管注意義務の履行等として評価される対象になる。「研修はトップを救う」「研修は組織を救う」というのは確かにそういうことなのだろう。あわせて、その目的を達成するための記録のマネジメントの重要性も指摘されている。 
  • 内部監査と監査役監査の違いの説明。前者で監査すべき内容が「現場の運営は、社長が決定した方針とルールに合致しているか」であり、後者が「取締役の行為は法令定款に合致しているか」。 当たり前なのかもしれないが…。
  • リスク管理マニュアルについての種々の指摘が有用。特に、現場での判断の余地のないものにすべきという点や、マニュアルの遵守の徹底、といったあたりは、そうしないと何が起こりうるかの指摘も含めて、うなづけるところ。


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August 06, 2013

あわせて学ぶ 会計&ファイナンス入門講座 /保田隆明 (著), 田中慎一 (著)



本屋で見つけてその場で買ったのだが、読むのが遅くなった。一言で言うと「企業経営におけるゼニの増やし方」、とまえがきにあるとおり、そのための戦略に焦点を当てつつ、会計とファイナンスの基本(どちらかというとファイナンスがメインという印象)がわかりやすく説かれている本。別に経理とか財務とか経営企画とかにいなくても、法務であっても読んでおいて損のない本だと思う。

どこまで理解しているのかはさておくとして、会計についてもファイナンスについてもある程度は勉強したので、内容についてまったく未知という部分はそれほどなかったけれども、面倒な計算式とが出てくるのを最小限に抑えつつ、図解をうまく使って直感的な理解ができるようにしているところや、身近な企業の実例やゲームをうまく用いて、説明しようとしている内容の重要性を理解しやすくしているところは、プレゼンテーション能力の高さという意味でも素晴らしいと感心した次第。

会計やファイナンスの知識は、一ビジネスマンとしても、法務の業務をするうえでも、一定程度(それがどれくらいなのかは、個別の状況に応じて異なると思うけれど)は押さえておくべきと思うところだが、それを抑えるうえでの最初の一冊としては適切な一冊だと思う。法務の業務という意味では会計についての話は更に補足が必要だという気がするが、その部分についても、今後のbook guideがついているので、そちらが参考になると思う。

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dtk1970 at 19:58|PermalinkComments(0)

July 12, 2013

企業のための労働実務ガイド1 Q&Aと書式 解雇・退職 /藤本 美枝, 松村 卓治, 江藤 真理子, 栗原 誠二 (編著)


出版記念?の編著者のうちのお一方により経営法友会でのセミナーに出た際に会場で割引販売していて、買ったのだが、ようやく目を通したので感想をメモ。件のセミナーは内容は興味深かったのだけど、ここでネタにしていいのかためらうところがあったので、メモしていなかったのだった。

労務系の実務に関する書籍は、いろいろなところから、一通りの内容をカバーする10冊くらいのシリーズで出ている。どうやら商事法務もそれに伍してシリーズ化する気なのか、 「企業のための労働実務ガイド1」と銘打たれている。解雇・退職に関する部分についてその他のシリーズのものも読んだことがあるけれども、それと比較して、特徴的と思ったのは次の3点。文章も読みやすいので、これらの点について重要と思われる方にとっては良い本なのではないかと思う。
  • 個々の問題への対応に際して必要な書式例まで書かれていること。アドバイスだけで具体的な行動が見えにくいというケースには有用なのではなかろうか。
  • 各章ごとに冒頭に「まとめ」があり、まず全体像をつかんで、それから個別具体的な話に入っていく形になっていること。 その部分(紙の色が異なっていて、区別しやすい)だけを読んで大枠だけをさっと理解するという使い方も出来そう。
  • 外資系事務所の先生方の手によるということもあり、渉外要素のある労働契約への対応などについて言及があること。労働契約上で別の合意をしても、日本での裁判管轄が強制される場合があるのは、不勉強で知らなかった。


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July 06, 2013

企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術/ 四方藤治 (著)


遅くなったが読み終わったので感想などをメモ。
一言で言うと、事業会社でM&Aに関わる法務担当者にとってはおそらく必読(メーカーであれば間違いなく必須)の一冊。もっとも、一定の知識があることを前提にしているので、いきなり読むのはシンドイだろうが...。(*)

日産で200件以上のM&A案件(ほとんどがクロスオーバー案件)に関わられた著者がM&Aに関する要所について解説するもの。守秘義務の問題があり、具体的な案件に関わる記載は出てこないものの、企業の中でM&Aを取り仕切っていないとかけないような実務上のポイントについての解説が有用。法務、財務、税務、人事、知財、環境などなどの個別の分野に断片化されず、統合的に俯瞰するような形での解説及び外部専門家の起用の仕方についての説明は、おそらく「中の人」でないと書けないであろう。続きを読む

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May 26, 2013

崩壊する組織にはみな「前兆」がある: 気づき、生き延びるための15の知恵 (PHPビジネス新書) / 今村 英明 (著)


某所で激賞されていたので、買ってみる。組織崩壊の前兆について、事例を交えてわかりやすく説明するとともに、そういう前兆に遭遇した場合の対応方法についても論じている。

事例も設例というよりは、実際にあったケースを固有名詞を伏せつつ適宜修正したという感じで、僕ですら「これって、あの話だよね」と思い当たるものがあったので、識者の皆様におかれては全部お見通しなのかもしれない。そういう不穏な楽しみ方も出来てしまう。 

書かれているような事例に遭遇しないにこしたことはないが、遭遇した場合に、書かれているようなことが頭の隅にあるだけでも多少は違うと思う。そういう意味で、企業で働かれている方すべてが読んでおいて損のない本かもしれない。文章は読みやすいので、読むのにそれほど時間はかからないから。 

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May 18, 2013

法務部門の実用知識 / 堀江 泰夫 (著)


きわめて個性的で、問題をはらんだ本なので、紹介しにくいのだが、それでいて、個人的には是非紹介したい本なので、紹介、というか感想をメモ。

司法書士資格を取った後に、法務職で、国内企業、外資系企業を含め数度の転職を経験した著者が経験に基づき企業法務部門のあり方について、語る本というところが、大まかな紹介だろう。生々しい経験談が面白いのだが、守秘義務などの点で問題はないのか、という疑問もあるし、また、既にはっしーさんやその他の方がTL上で指摘されているような問題点を含んでいるのも事実。そこのところを軽んじるつもりはない。

しかしながら…、と思う。


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May 03, 2013

「暴力団」「続・暴力団」/溝口敦


成田で購入して、機内で2冊とも読み終わった本。暴排条例の制定を受けての暴力団をめぐる現状をわかりやすく、読みやすい形で記載したもので、update版の続編を合わせて読んだ方が良いと思う。暴排条例対応をしている人は特に。 個人的に、暴排条例については、正直疑問が多かったのだが、感じていた疑問(違和感も含め)について、納得のいく説明があり、内容の当否については確認できるだけの情報はないものの、有用と感じた。 暴力団の存在自体を法的に認知していることがそもそも問題という指摘もそうだと思うし、暴対法・暴排条例があるにも拘らず暴力団自体がなくならない理由についての指摘も、もともと僕自身も警察としてはなくなると困るから、結局は何らかの形で彼らと実態としては共存する形になっているのではないかという程度の推測はできていたが、その根拠を示しての指摘は、なるほど、というところが多かった。市民を暴力団排除の前面に出すことで市民を危険にさらしている、という意味でも暴排条例には問題があるとしても、それでも暴力団を経済面で追いつめる機能は果たしているので、残すべきという主張は、暴排条例について疑問に思っている人も(僕もその一人だが)、耳を傾ける価値があると思った。

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April 23, 2013

法の世界からみた「会計監査」 ―弁護士と会計士のわかりあえないミゾを考える― /山口 利昭 (著)

ビジネス法務の部屋のtoshi先生の3冊目の著書。前2冊も拝読したこともあり(謎)、出た直後に買ったものの、漸く一通り目を通せたので感想をばメモ。

法務系の方々にとっても、会計とか内部統制の分野は、ある意味「ご近所」の分野でもあり、不祥事対応においては共同で動くことも想定されるわけだから、そういう「ご近所」の分野の専門家の方々にとってのモノの見え方、行動の背後にある考え方についての理解を深めるうえでも、例え即効性のご利益はないとしても、読んでおいて損はないと思うし、会社法法務の分野をされている方々にとっては必読なんだろうと思う(僕自身が今はそういう立場ではないので、必ずしも保証しきれないところがあるが)。 

blogでもそうであるように文章が平易だし、専門用語についてもそれなりに解説がついていて、読みやすいはずなのだけど、7章の会計基準の位置づけに関する辺りは正直歯が立たずに、目を通し終わるのに時間がかかる一因になった。ともあれ、僕自身はどちらかといえば、法律よりの立場にいるはずで、そういう立場からすると、ここの部分は、会計側に感じる「?」と思う部分の一部分が解消されたような気にはなった。ホントにどこまで理解できているのか不明だけど…。その部分より後ろの不正会計については、その分、楽しんで(そういう言い方は適切ではないけど)読むことが出来た。
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April 13, 2013

憲法の創造力 (NHK出版新書 405) / 木村 草太 (著)


「キヨミズ准教授の法学入門」で言及されていた「次回作」が出たので買って読んでみた。時事ネタを使った憲法入門という感じ。 新宿紀伊国屋で買ったのだが、店内アナウンスでも宣伝していて、ちょっとびっくり。 一般向けの憲法入門書ということになっており、確かに憲法の知識はなくても読めるとは思うけど、前提としている一般的な教養レベルは高いような気がするので、注意が必要かもしれない。

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April 01, 2013

はじめの一歩?

はっしーさんの時宜を得たエントリを見て、便乗(はっしーさん、すいません)。

僕自身ははっしーさんが挙げている中で読んだのは、セオリー田路先生の本だけだけど、残りの本についても、読んではいないものの納得するところ。六法は分冊になるのは好みではないので、判例六法を使っているけど(どのみちプロフェッショナルになっても、使う法令で載っていないものはあるので…)。

個人的に気になったのは、業務で使いそうな法令についてある程度カバーするような基礎的な知識の本が載っていないこと。おそらく推薦冊数が多くなることもあり、かつ、そういう話は本でなくてOJTとかでカバーされるという前提で、はっしーさんは意図的に外されたものではないかと思う。

とはいうものの、状況によっては、その辺について自分で補充が必要になるケースもあると思うので、補足、ではないけど一冊お薦めしてみたいと思う。企業法務の入門みたいな書籍もそれなりにあるのだけど、法務の実務をされている方々が書かれていて、ある程度定評がある本で、手に入れやすいものというと、次の2冊のいずれか、ということになるのではないか。
会社法務入門<第4版> (日経文庫) / 堀 龍兒 (著), 淵邊 善彦 (著)
実践 企業法務入門―契約交渉の実際から債権回収まで /滝川 宜信 (著)
(ホントはもう一冊経営法友会で出している「企業活動の法律知識」をあげるべきだが、手に入れやすくないのでここでは挙げない)


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March 19, 2013

良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方 /雨宮 美季 (著), 片岡 玄一 (著), 橋詰 卓司 (著)


いつもお世話になっている、はっしーさんと@kataxさんが雨宮弁護士と共著を出す、しかも内容が利用規約の作り方についての本、ということで、著者経由で入手の上、拝読してみた。
 (以下、ステマとまでは行かないと思うものの、自分のことのようにうれしいので、身びいきというか、ややバイアスがかかった記載になっているかもしれない。いつもはこういうことは生じないように気をつけているのだが、念のため付言する)

純粋な法律書ではなく、どちらかというと現場の担当者向けの本で、押さえるべきところをしっかり押さえるだけではなく、説明の仕方、噛み砕き方及び図解の仕方もこなれていて、法務担当者が読んでもわかりやすいし、現場で担当している法務以外の人でも十二分に読める仕上がりになっていると思う。参照文献リストや雛形類(英語版まで!)ついていて、有用度が高いのではないかと思う。あとがきにも法務担当者と弁護士さんの本音がにじみ出ているのもいいし、装丁やレイアウトも良い感じ。
(ついでに、作成過程での共同作業の仕方についての、はっしーさんのエントリも興味深い)

 内容を見ると、一部ははっしーさんや@kataxさんのblogや利用規約ナイトでの発言と重なっているところもあり、それを思い返しつつ、読むのもまた一興かもしれない。もちろん、そういう野暮なことをするまでもなく、読みやすいし、読んで役に立つ内容だと思う(実際、一部は僕自身の業務でも役に立っている…)。

 細かいことを言えば、特に現場の人向けということからすれば、法律用語の説明の不足はあると思うけど、それらについては、別途はっしーさんたちに既に別途お伝えしてみたので、今後折を見て改訂していただければと思う次第。とりあえず、例の債権法改正との関係では、約款規制の規定を受けたupdateを期待したいところ。続きを読む

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March 10, 2013

米国ディスカバリの法と実務 /土井悦生 (著), 田邊政裕 (著)


米国での訴訟における提訴後・トライアル前のディスカバリ手続き全体について書かれた本。特許訴訟への対応を想定して書かれている部分もあるけど、それ以外の訴訟との関係でも有用なのではないかと思う。資料で関連用語の説明や、適用条文の原文、サンプルフォーム(英語)がついているのも理解を助けてくれると思う。続きを読む

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