公法系

March 09, 2019

原発訴訟 (岩波新書) /海渡 雄一 (著)



出てしばらくした後に,戦士さんのエントリを見て,買うだけ買って(挟んでいるレシートを見たら2012年2月の日付だった:発行は2011年11月),長らく放置していたが,今更ながら目を通した。 福島の事故のすぐ後の時点での原発訴訟の現状について,原発を批判する側の弁護士さん(某政治家の配偶者で,その関係のエピソードも出てくる)の手による解説。ベテランの弁護士さんだけあって,ある程度冷静に過去の原発に関する訴訟について,振り返ると共に,今後(上記時点での今後だが)の展望も語る本。

福島の事故から相当の時間がたった時点で,司法試験,修習が終わった後に読むと,まず,行政訴訟の解説として,実例があるのが分かりやすいと感じた。 また,原子力発電の仕組み及び訴訟を取り巻く種々の事柄についての解説も分かりやすかった。
次に,裁判所が,所謂「原子力ムラ」寄りの判断をしがち(例外がないわけではない)なところ,それでもなお,先生方が,闘争を続けて,少しづつかもしれないけれども,成果を出していることに,原発に対してのスタンスは抜きにして,僭越ではあるが,素直に敬意を評したいと感じる。背後に支援してくれる人々がいることがあってのことなのだろうが,諦めないことの重要さを実感する。

この本が出てきてから,原発及び原発訴訟についても,更にいろいろなことが起きているので,この本の続編を期待したいところ。この国に原発が既に存在している以上,好むと好まざるとにかかわらず,原発については,その負の側面も含めて,理解をしておくことが望ましいと考えるし,理解をする上では,裁判に関する側面からのものではあっても,理解を助ける良著だと思うから。



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dtk1970 at 22:30|PermalinkComments(0)

August 30, 2014

憲法主義:条文には書かれていない本質 /内山 奈月 (著), 南野 森 (著)



気の迷いでつい買ってみた一冊。AKB云々とあると、それだけでネガティブな印象というオッサンではあるが、ronnorさんのところとかの紹介を見て、買う気になったのでありました。

確かに、内山さんが相当きっちり学校で勉強されていたようで、語弊のある言い方を許してもらえば、話が結構高度になっても(憲法変遷の話とかまで付いていってるしねえ…)、きちんと話に付いて行っているのがすごいなと思う。自分が同年代のときにここまでの話についていくことはできなかったと思うから。
(一番ショックだったのは、大学の卒業年次が同じなので、近い年代と思われる南野先生が彼女のことを「お嬢さん」と評していたところ。確かにそういう年代なんだけどね…orz)

内容面でも確かにわかりやすいと思うし、読みやすい。

個人的になるほど、と思ったのは、
  • 硬性憲法と最高法規性の関係についての指摘
  • 違憲立法審査権の反民主的性格
という辺り。

 

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dtk1970 at 00:59|PermalinkComments(0)

December 10, 2013

メモ:いわゆる特定秘密法案について

あまり時事ネタ、特に論争的なものについて何かを言うのは好みではないのだが、五月雨式ではあるが、印象に残ったものだけでもメモしておく。ググれば済む話かもしれないが、個人的なメモということで。

まずは条文@朝日新聞(e-gov.に掲載されたら、差し替え予定:まだ出ていなかった。) 
ついでに、提出時案@衆議院、及び、修正案@衆議院も。

議員の投票行動@朝日新聞
十分な情報ではないものの、投票行動は次の選挙の際に投票すべき候補者を決める際にも重要になるだろうし、そうしなければならないと思うので。

法案についての落合弁護士の講演を江川 紹子さんがまとめたもの
同じ講演についての落合弁護士自身のblogのエントリ

秘密保護法案の疑問点 弁護士によるネット解説の概要:落合弁護士他によるもの。
落合弁護士の次の指摘は重要かと。
秘密保護法制が日本にはなかった、というのは間違い。従来の国家公務員法自衛隊法で秘密を漏らす行為は処罰されている。

私はなぜ特定秘密保護法案に反対するのか:宇野重規
法律論の次元ではないが、個人的に読んだ中で、一番納得できた批判。

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dtk1970 at 22:06|PermalinkComments(0)

April 13, 2013

憲法の創造力 (NHK出版新書 405) / 木村 草太 (著)


「キヨミズ准教授の法学入門」で言及されていた「次回作」が出たので買って読んでみた。時事ネタを使った憲法入門という感じ。 新宿紀伊国屋で買ったのだが、店内アナウンスでも宣伝していて、ちょっとびっくり。 一般向けの憲法入門書ということになっており、確かに憲法の知識はなくても読めるとは思うけど、前提としている一般的な教養レベルは高いような気がするので、注意が必要かもしれない。

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dtk1970 at 18:42|PermalinkComments(0)