Business Law Journal 5月号その次は

March 31, 2019

遅れ馳せのお返事をー司法試験・商法H29,30について

 先月,大杉先生とTL上で司法試験の商法の問題についてやりとりさせていただいたところ,先生の法学セミナー4月号の原稿を拝見する光栄に浴した。何かお返事を,と思ったのだが,書けないまま…3月の年度末に。

 原稿の中で,先生が「法科大学院での法曹養成や、この問題に関心のある方々には、商法という科目の枠を超えて本稿をお読みいただき、議論していただくことを希望している」と書かれておられた。能力はさておき,現時点では関心がないわけでもない。そこで,大杉先生に大きく反論する内容にはならないものの,燃料を投下,ではないが,能力不足を棚に挙げて,エントリにしてみる次第。H29については,現場で答案を書き(この年合格した。商法はA評価だった),H30についても諸般の事情で,受験生の答案を拝見する機会のある者としての若干の感想ということになる。






1.H29について
設問1
 僕自身は,企業の法務担当者としては,会社法周りの法務業務の経験が多い方ではない(ゼロではないものの…)こともあってか,企業の設立の業務に関与したことがない。企業法務の中でも,設立周りに関与する機会がどこまであるかは,必ずしも定かではないかもしれないと感じるところ。なので,たとえ企業法務系の事務所に進路を選んだとしても,設立に関する知識を使う機会がどの程度あるかも,必ずしも明らかではないようにも感じる次第。そうすると,所謂街弁などの進路に行く人のことも考えると,そのような知識を問うことが妥当なのか,様相は異なるとしても,設問3と同様の問題があるのではないかという気もしないではない。とはいえ,企業誕生の場面であるので,使わないかもしれない知識でも,知っておくべき知識として,問うことも不当ではないと見るべきなのだろう。
 また,大杉先生がご指摘のように,無駄に暗記を助長しない意味では,ご指摘の通り,判例については,判旨等を問題文に記載するのが良いと思う。民法ではH25で,そういう訊き方をしているのを思い出すところ。ただ,そういうことをすると必然的に問題文も長くなり,検討に時間がかかるだろうから,設問1は費用の話だけを訊くのが,全体としての負荷軽減の意味でもよいのではないか。

設問2
 株主総会決議の瑕疵の問題であり,瑕疵の内容も,僕が知る範囲でも,実務でもありそうなもので,単体では良問と感じる。ただ,設問1と3を抱えている中でやるには量が多すぎるというのが正直な印象。実際,僕は現場では設問1はあきらめて,2と3に注力して,1は白紙同然の答案だった(手元にある再現答案による)。もっとも,それがこの科目では勝因だったようで,休み時間に,設問1に悩みすぎたという他の受験生の声も聞こえてきた。語弊のある言い方をすれば,点取ゲームである以上,点を取れるところで稼げればよいわけだから,無駄にこだわりすぎないのは重要なのだろう。
 そうはいっても,2については,持株会の話は,この設問でどう使うべきか思いつけず,また,決議取消は思いついても,無効までは論じることはその場では思いつけなかった。冷静に考えれば,議決権行使ができてしかるべき実体と形式の齟齬に着目すること,決議の効力を争う手段を考える際には,総会決議取消,無効,不存在の3点セットで考えてみることは,それぞれ必要なのだろうけど。また,持株会の話は,特に会社勤務経験のない世代にとっては,イメージ自体しづらく(この点は,他の方の答案を見て感じるところ),蛇足感を強く感じるところ。従業員持株会に関連する判例も判例百選には確かにあったが,それでもなお,そう思う。その意味では,設問2については,持株会の部分は削っても良かったのではないか。

設問3
 大杉先生がご指摘のとおり,株式併合によるキャッシュアウトは実務的ではあるものの,学問的な位置づけとして辺境であるとすれば,実務家登用試験としての司法試験との関係では,過度に実務的すぎるということになろう。それゆえに,司法試験の場で問うことについての妥当性について疑義が生じるところで,その意味で悪問という評価は頷けるところ。
 他方で,条文を頼りに未知の話に食らいつく能力を見る問題と解釈すれば,お手頃な問題と見ることもできないかと思う。僕自身は,現場では,そういう問題だと理解して,条文をにらみながら思いついたことを書いた。出題趣旨及び採点実感と,再現答案を照らし合わせるとどこまで点がもらえたのかは不明ではあるのだが…。仮にそういう見方が許容されるとすると,問題はむしろ,大杉先生ご指摘の,教える側の問題意識によって生じ得る不公平感の方ではないか。とはいえ,教授される方の問題意識のありようは多様だろうから,どこまでこの種の不公平感を除去できるかは難しいように思う。

2.H30について
(H29と違って,実際に答案とかを作っているわけではなので,やや腰が引け気味になっている…)
設問1
 閲覧請求に対する拒絶理由を問うもので,事例を読むと,百選に出ている某パン屋の裁判例とかを思い出したりしたのだが,ともあれ,問題文に書かれている事実から考えていけば解けるような気がするので,良い問題ではないかと感じるところ。

設問2
 (1)
 1つ目の決議については,利益供与の問題ではないか,と気づくのも必ずしも容易では無いのではないかと感じたところ。百選とかに出てくる典型例とは異なるようにも見えるし。また,仮に利益供与の問題ではないかと気づいたとしても,どこを捉えて利益供与と見るのか,というところでも判断がつきにくいところがあるのではないか。こちらで拝見した受験生の答案を見ていても,ここのあたりで迷っているように見えた答案がそれなりにあったので。これらの点は,法科大学院等においては,大杉先生が指摘されるような教え方の問題でもあるのかもしれない。利益供与を禁じる趣旨や効果は説明をするとしても,そもそもどういう範囲で利益供与を認定するかまで,解説するかどうかは,時間との兼ね合いで難しいのではないだろうか。そういうことを考えると,指摘のあるように誘導がそのあたりにあると,解きやすくなっただろうとは思う。
 2つ目の決議については,否決されていたという事実のみから,この点についての判例を想起するのも容易と思うので解きやすいのでなかろうか。既に一度本試験でもネタにされている話なので。
 (2)
 (1)を踏まえて,取締役への責任追及と利益供与の相手方への責任追及を論じることになるのだけど,設問1-3全体として,分量が多いことからすれば,両方訊く必要はなかったのではないかという気がする。

設問3
 174条について,趣旨を踏まえてとあるものの,そんなもの認識している受験生がいるとは個人的には思えない。もっとも,予備校のヤマはりとかで準備していた人もいたかもしれないが。そういうのがなければ,現場で条文を見て考える問題ということになって,趣旨を考えたうえで,事実をにらみながら,答えを考えることになるのだろうから,良い問題なのではないだろうか。この点についての大杉先生のご指摘には頷くばかり。
 ただ,設問1から順番に解いていると,おそらく時間が足らずに,十分に検討できないで終わる危険も高かったのではなかろうか。

3.その他
 選択科目の維持については,大杉先生のご意見に同意だけど,選択科目間で,負荷に格差がある点は是正を考えても良いのではないか。見る限り労働法は他の科目よりも負荷が明らかに重いのではないかと感じるので。なので,僕自身は,仕事柄接点もあり,試験対策としては負荷の少なそうな経済法選択に走ったのだが。
 

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dtk1970 at 21:00│Comments(0)法曹養成 

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