翔んで埼玉8年

March 10, 2019

戦争調査会 幻の政府文書を読み解く (講談社現代新書) /井上 寿一



書店で衝動買いした一冊。
第二次大戦後に,政府主導で,大戦の原因の調査とその公表を行おうとしたプロジェクトがあったことは,知らなかった。この本では,前半でその試みが,当時の政治的状況の中で結局挫折に至るまでの過程を追っている。後半では,最終的には,プロジェクトは中途で終了したものの,集められた資料で公刊されたものがあり,それら資料から,開戦が食い止められなかった経緯,あの段階まで終戦できなかった経緯を分析している。





歴史分析そのものの当否は,論評するだけの能力がないものの,いくつもの,ボタンの掛け違い,読み間違いで,ああいう経緯に至ったことだけは理解できる。如何にもありそうな話,という印象だし,こういうことは,形を変えて,あちこちで今後も起きるんだろうな,と感じる。

そういうことよりも,特に印象に残ったのは,こういうプロジェクトが国家事業として,途中で挫折こそしたものの,一旦は開始したという事実と,その成果が公刊されている事実。もちろん,第二次大戦の敗戦というとてつもない結果が,多大な犠牲を払った末に生じていた以上,なぜあのような事態に立ち至ったのか,という疑問が生じるのは,ある意味当然だし,その意味では,こういうプロジェクトがなされるのは当然という見方も可能かもしれない。とはいえ,こうした検証を行おうとしたことと,その結果として,残された資料について公刊され,後世の人が目にすることができるようになっているというのは,特に昨今の状況が,現在進行中の出来事の記録すらおぼつかず,ましてや後の検証も期待できそうにないことを考えると,凄いことだと感じざるを得ない。

このエントリーをはてなブックマークに追加
dtk1970 at 19:30│Comments(0)読む聴く見る 

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
翔んで埼玉8年