[ポイント図解]生産管理の基本が面白いほどわかる本 / 田島悟 (著)原発訴訟 (岩波新書) /海渡 雄一 (著)

March 02, 2019

裁判官は劣化しているのか / 岡口基一 (著)



何かと話題の岡口裁判官の本の感想をメモ。

第1章では,御本人の来歴とか思い出話とか。「要件事実マニュアル」が如何にして作られたか,作り得たのか等の話が面白い。また,同書が出版に至った経緯,及び,同書についての裁判所内部での圧力を如何にしてはねのけたか(共に某元有名判事が関与していた…)点も面白い。

第2章では,かつての裁判所における「智」の継承について語られていて,結果的に要件事実入門の入門みたいな形になっている。御本人のSNS上での発言を見る限り,意図的にそうしていたようにも見える。本来,当事者の主張の整理のためにあった要件事実論が,事実認定の場面でも使われるようになったという指摘や,学者と実務とでの要件事実についての理解が食い違ったままである点についての指摘が,個人的には興味深かった。

第3章では,裁判官の劣化について語られている。劣化の原因として,「飲みニケーション」の不足と新様式判決への移行が槍玉にあがっている。
これらについて,そもそも裁判官が本当に劣化しているのかどうかについて,コメントできるだけのものを僕は有していない。
また,新様式判決の移行についても,判決起案が省力化できるようになったというのであれば,その事自体は評価すべきだろうし,岡口さんも,その点は評価はしているようだった。むしろ,時間を要する反面で,法的な整理を緻密に行い,その過程が「当事者の主張」欄に可視化されていたことで,誤りを減らす,若手裁判官の理解の正否がわかり指導しやすかった,等の旧様式のメリットが失われた点は他の方法でカバーすべき話だったのではないかという気がしないでもない。
そして,「飲みニケーション」については,世代的にはそういうものの恩恵に預かった口ではあるが,個人的には,そういうものを嫌がる世代の気持ちもわかるような気がする。なので,そういう場でなければできないと考えられる理由を解消する方法を考えたほうが良いのではないかと感じた。そのためには,何よりも,まず裁判所全体としての余裕が必要だろうし,その余裕のためには裁判所のリソースの増加が必要なのだろうけど。

最終章では,現状で可能な改善策についての提言がある。弁論準備の場での両当事者代理人弁護士も交えての「当事者の主張」の整理と,司法修習中に要件事実をしっかり自習しろ(そのための手段として,岡口裁判官の「要件事実問題集」がある)という辺りが,提言の中心に見える。
前者は,裁判官が心もとないとなれば,そうなってもおかしくないという程度のことは推測はできる。後者については,修習では民事裁判以外もあるし,他の科目も含め,色々やる中で,あれをやるのは正直重荷に感じたので,結局手を出さなかった(大島判事の本と心中覚悟であの本だけをやったが,少なくとも二回試験では,不可にはなることはなかった)。それでよかったのかというとやや疑問だが,確かに修習が終わった後であの問題集をやる気力はないので,その限りでは適切な指摘なのだろう。




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dtk1970 at 20:39│Comments(0)書籍 | 紛争対応

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