法令などの英訳についてのメモBusiness law journal 2018年12月号

October 24, 2018

書くならば何処に

現実逃避(汗)かもしれないが…経文緯武さんの一連の呟き(こちら以下)を見て思ったことを備忘のためメモ。

債権法改正で,契約の目的とかが,契約内容の解釈のうえで,重要になる場合があることが予想される。そこで,予測可能性をあげる観点から,契約の目的とかについて,契約書のどこかに明記しておく方が良いのではないか,という問題意識が生じたとしてもそれほど不思議ではないように思う。

この問題意識に対して,契約書のどこに記載すべきか,という点について,英文契約流にwhereas clauseみたいな発想で前文に書く,というのは,それ以外の手がないときの次善の策としては,理解出来なくもないけど,最初からそこを想定するということには,個人的には違和感を覚える(*1)

英文契約におけるwhereas clauseについては,そもそも法的拘束力を有さないというのが一般的な理解のはず(*2)。そうなると,書いてあることによって,契約解釈において参照される可能性は生じるものの,常にそうなるかどうかは,不確実ということになると考える。参照する義務が誰かに生じるものではないからである。

つまり,書いてあることによって,参照される期待が生じるものの,そうならない可能性もある。中途半端に期待が生じる反面で,はしごを外された感じになる可能性すらあるということになり,却って事態を悪化させる可能性はないか,と懸念するところ。書いてあるがゆえに,記載が参照される前提で防御をしたら,そもそも参照されずに,前提が崩れるということは,想定可能ではなかろうか。

そういうことになる危険を冒すくらいなら,むしろ正面から,本文に規定すべきではないか。そうすれば,本文に書かなかったのは,拘束力を生じさせないためにやったことであり,それ故に参照する義務は生じない,というような議論は防ぎやすいはず。
例えば,両当事者は,本契約の規定及びその違反の解釈に際しては,次の点を踏まえてこれを行うものとする,として,契約の経緯・目的について箇条書きで書くような形での記載は,少なくとも日本法の下では,不可能ではないはず(*3)

また,仮に,上記のような起案をするとしても,その場合は,なんでもかんでも書けば良いというものではないだろう。契約締結に至る経緯も内容によっては,自分の側に不利に作用するような事情もあるかもしれない。そうなると,契約内容及び四囲の状況に鑑みて,将来生じうる事態に備えて,戦略的に起案しないとイケナイような気がするし,そういう判断は法務の関与なしになしうるか,疑問が残る。すべての取引に入れるほど法務の人的資源があるところはおそらくそれほど多くは無いだろう。事業部門の担当者に書き方を教えるとか,類型化して対応,というやり方も想定可能だが,それでなし得るレベルの書き方でどこまで,当初の需要に答えうるのか,個人的には疑問を覚えるところ。それに,優先順位の付け方として,どれほどの重みを持って検討されるべき事柄か,事業内容などによって千差万別になる可能性のある事柄でもある。もっと先にやるべきことがあるという場合も多いのかもしれない。







*1:この点について,一部で話題に出ていた,遠藤編「債権法改正 契約条項 見直しの着眼点」p11の記載は,前文への記載は,記載方法の一例として挙げているに過ぎず,前文でなければならないと趣旨ではないものと理解する。

*2:手元にある資料では,平野「体系アメリカ契約法」p356あたりの記載参照

*3:当事者間の約束事なので,訴訟において,第三者である裁判所が当該約束事に拘束されるとは限らないが,尊重される確率は相対的には上がるのではないかと考えるところ。

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dtk1970 at 22:22│Comments(0)契約法務 

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