企業法務の訴訟において高名な中村弁護士が書かれたということで、川井先生がエントリにされているのを見るなどして購入。

200p弱と分量はないものの、読みごたえを感じる一冊。弁護士さんだけではなく企業法務の担当者にも読んでほしいとはしがきにあるけれど、文章自体が平易であっても、訴訟法とか訴訟実務について一定以上の知識と経験がないとおそらく手が出ないのではなかろうかと思う。そういうものを持っている層が読むことを前提に、知っていて当然のような事柄については、知っているのが前提という形で書かれているように思うので、その意味で取っ付き易い本ではないかもしれない。それでも読んでおくべき本ではないかと思う。




訴訟の中でも企業間の訴訟において、代理人たる弁護士は何をするべきか、という点に絞って、書かれている。圓道先生の本が細部についてきめ細やかに書かれているのと対照的に、むしろ訴訟全体を鳥瞰したうえでの企業間の訴訟についての心構えを説かれている。その意味で両方を読むのが適当という気がする。

企業間の訴訟において代理人の弁護士が、訴訟の特質を踏まえて何をすべきかが書かれている。ある意味プロ同士の訴訟なので、素人が相手方というときとは違う部分があり、その部分について、裁判所の見方も含めての指摘からして興味深いし、何をすべきか、という点についても、如何にして、効率的(事後に想定される同種訴訟なども視野に入れたうえで、だけど)に、裁判所に自分の側に有利な判断をしてもらうか、を考え、そこから局面ごとに何をすべきか(それと日頃から何をするべきか)、について、冷静に思いを巡らせておられるところに、個人的には圧倒された。

その観点から、他の弁護士さんのやり方に対する辛辣な批判が加えられている。一例をあげれば、某装飾的な文体については、「虚飾の香りがする」と断じられているのが個人的には非常に印象的だった。

書かれていることについては、いろんな制約条件の下では、常に実践するのは難しいことも含まれていると思うものの、訴訟となると、企業法務の担当者としては、訴訟が起きると、状況に追われがちなので、その中で冷静になるための材料としても、そうでなくても自分の訴訟対応の在り方を振り返るうえでも、考えさせてくれる一冊ではないかと思う。