はっしーさんかたさんと同じく、編著者の事務所のY先生からご恵贈いただいたのだが、こちらが読むのが遅く、エントリにするのが遅くなってしまった。 Y先生ありがとうございます。

いただいた、ということによるバイアスの可能性は排除できないとしても、企業法務の担当者の手元にあって損のない一冊だと思う。手元にあるだけでも有用だけど、できれば、事前に一読しておくと、とっさのときの使い勝手が増すと思う。

何らかの事態に巻き込まれた際に初動で間違うと、その後のリカバリーに費用と手間がかかるとか、そもそもリカバリーが不能というケースもある。そういう意味での初動対応の重要性は今更言うまでもないと思うけれど、そこに重点を置いて、広範にカバーした書籍というのは、寡聞にも聞いたことがなかったように思うので、その意味で画期的なのではなかろうか。既に上記のお二方のエントリでもコメントがあったけど、広範に、問題になりそうな事態が拾ってあるので、網羅性も高そうに見受けられる。

重要だと思うのは、もちろん、然るべき弁護士さんに相談する、だけど、それまでの間にどうするか、ということと、弁護士さんにつなぐ際にどういう情報を持って相談に行くべきかについてのアドバイスがあることだと思う。最初の相談に行ったときに、いろいろ質問されて、それについてそこから調べているのでは、時間もかかるし、それ自体初動対応としてはもう手遅れということにもなりかねない。そういう意味で、こういう本に従って、即時に資料を集め、相談に行く際には、その種の資料を携えて(個人的には行く前に電子データで送っておくけど)行くのが望ましいのだろう。

そんなこんなでお手元にあっても有用なのではないかと思う次第。願わくは定期的にupdateされ続けること。こういうものでも、法令改廃・判例の進展なども反映すべきなので。


と、ほめるばかりでは、いくらなんでもつまらないので、いくつか気になったところを書いておく。

  • 弁護士さんの選び方についても、多少コメントがあるべきだったと思う。アメリカほどではないにしてもある程度の専門分化が生じている分野もあり、相談すべき弁護士さんの選び方でも差が生じる可能性がある以上、そこについてのアドバイスがあってしかるべきと思う。また、編著者の事務所の弁護士さんたちの略歴等をどうせ乗せるのであれば、この章の問題について、弊事務所にご相談の際はこちらの弁護士に、というところまでは踏み込んでもよかったのではないかと思う。急ぎの時に紐解くのであれば、多少宣伝臭いとしてもそのくらいあった方がむしろ親切なのではないか。
  • あと、弁護士さんとのお付き合いの仕方についても、報酬のアレンジの選択肢とか、コンフリクトとの関係で依頼をしても受けてもらえない可能性があること(その場合は他に当たらないといけないこと)については、言及があってもよかったように思う。
  • 内容面について気になった点のうち一つは、債務者として債権譲渡通知が来た時の対応について、取引基本契約などで債権譲渡禁止特約がついているものへの対応がなかったこと。メーカーに限らず自社のサプライヤーとの調達契約においては、その種の文言がついていることがわりに多いのではないかと思うし、その有り・なしによっては対応が変わることがあると思うから。譲受人の特約の存在についての善意・悪意を争って、弁済供託に持ち込むのという手が、債務者側にとっては二重払いのリスクを減らす意味では有用ではないかと思う。
  • もう一つは、反社対応については、反社認定そのものを自社が誤るリスクについての言及がないのもどうなのかな、と思った。そっちのリスクがないとは言えないと思うので。