December 08, 2014

Litigation holdのキホン、のようなもの

なんだよそれ…といわれそうだが。

お世話になっている某所のrenewal協賛企画(謎)として、ざっくりとしたハナシを書いてみようかと…思っていたら、書きかけでしばらく放置していたのでした。USの訴訟それ自体に関与した経験は少ないが、holdについてだけならそれなりにあるので…。

以下は、僕の今までの個人的な経験に基づく理解なので、現在または過去の所属先などとは関係しない個人的な考えであることはいうまでもない。厳密には裏とりも仕切れていない部分がある。企業内の対応という意味で書いているので、企業外の先生方の視線で見ると問題かもしれないけど、その辺りは何らかの方法でご指摘いただけると助かります。

USでの訴訟について、悪名高いdiscovery(電子データに関するeDiscoveryも含む)というのがある。
ざっくりいうと、手持ちの関連する情報は原則全部相手に見せるということになろうか。fair playの現れということなのかもしれない。不意打ち禁止ってなところみたい。

そうなると、じゃあ、見せる前に廃棄とかすればいいじゃないかという話になりかねないが、そうは問屋がおろさない。その前提として保管義務が課せられている。しくじると制裁は課せられるし、それだけで敗訴という可能性すらあるので、面倒くさいし、徒や疎かにできない。

そこで出てくるのがLitigation holdというやつ。要するに問題となっている紛争案件に関する情報は保管しておけ、ということ。

ここでの目的は自社側での対応においてホントに必要な情報の保管と、それ以外に、相手側から故意に破棄したといわれないことにあるということになるのではなかろうかと思う。前者については、holdをかけなくても、訴訟の可能性がある程度以上想定できれば、手元に資料があるかもしれないから、それだけのために保全する必要はないかもしれないけど、後者の目的となると話は異なるかもしれない。保管(より正確には保全というべきか)と訴訟における提出とは、ここでは切り離されていることにも留意が必要。

もう一ついうと、後でdiscoveryのプロセスの中でこの辺りのプロセスの当否が争われるケースも考えられる。この辺を取り仕切っている法務の人間自体がdepositionの対象になることも想定されるわけで、その点も睨んで最初から動く、必要がある。そうなると、プロセスについても、記録を取りながら、という方が必須のはいうまでもない。ただし、時間との兼ね合いでそれが貫徹できるかというとまた別なのだろうが。

・・・ここまでが前置きで、前置きが長いのだが、ここまでは少なくとも概念上はまだ理解しやすいように思うが、実際にやってみると(上記だけでも大概面倒くさいが)、正直面倒くさい。





本題については、多少話を区切りながら書いてみる。

1.そもそもいつその義務が始まるの?
訴訟がreasonable foreseeableになったとき、合理的に予見可能性になったとき、ということらしいが、これ自体解釈の余地がある。被告側は訴状の送達を受ければ当然にそうなると考えて良いのだろうけど、それ以前はどうなるか、ということや、原告側になる場合どうなるか、は論点になる。
過去に一度経験したのは、訴訟提起の準備をしていたら、起用しようと思った事務所がconflictの関係で依頼できずに、別の事務所に頼んだところ、この点の見解が異なり、当初の事務所よりもその時期が前倒しになった(既に到来していると言われた)ということもある(で、どうしたかは、差し障りがありそうなので自粛)


2.誰に対して通知するの?
当該案件に関係がありそうな人全部、ということになろうか。漏れを防ぐ意味から迷ったらholdの網をかけておくという感じ。通知すべき範囲がわからない場合は、とりあえず思いつく範囲に通知をしてみて、通知の中に、被通知者以外に通知を要するところがあれば教えてほしい、ということを入れておき、漏れの連絡があったらこまめに追加していくという手くらいしか思いつかない。電子メールでやるときは、Bccで流しつつ、エクセルで被送付者のリストを付けて、被送信者にも確認を依頼しつつ、追加のリクエストにはそこに追記しながら、追加の人間に送る(次回以降は当初に送る際の送信者に加える)という格好にするのがひとつの手だろうか。


3.Holdで何を言うのか?
ざっくり言うと次の諸点だろうか。 きちんと内容を読んでもらって、それに従って行動してもらう必要はあるので、外部の弁護士さんに対応をお願いしているのであればそこに文案もみてもらうなり、作ってもらうなりしたほうが良いのかもしれない。
(1)このhold自身が秘匿特権の対象になること。そのための取扱の注意とか(基本転送禁止、というところか。転送が必要になったらこちらからするから、その旨連絡せよ、ということか)
(2)何の件でもめているのかをある程度明らかにする。何の件についてか分からないと対応しようがなくなるので、この辺の表現方法は案件によっては工夫が必要かもしれない。
(3)上記の件について関連しそうな文書類(形態は問わない)は保管しておいてほしい。
(4)上記の指示は解除の通知をこちらから出すまでは継続してほしい。
(5)不明点はこちらに確認されたい。
 
キホンは「迷ったら保管」であろう。捨てられないのが重要。
あと、社内規程上廃棄が義務付けられていることとの抵触関係については、こちらの指示が上書きする(廃棄する旨の規定は無視せよ、ということ)、ということも重要。そういうエラソウな物言いをするうえで、内部での調整が必要なら事前にしておく必要もあろう。

細かいところでは次のような点も関係すると思う。 
  • 電子メールとの関係ではサーバー側で自動削除がある場合、それが止めるのか、は問題になり得るが、物理的に止められないのであれば(大概そうだろう)、受け手側で保管されているという理解を前提に、止めない、という発想で対応するしかないのだろう。どのみちサーバー側で対応しきれないだろう。
  • 同じ文書でもちょっとでも手を加えると別の文書になるので、別途保管が必要というところも注意喚起が必要。メールの打ち出しと、それに1箇所でもマーカーをしたものとは、別の文書ということになるはず(そこにマーカーをしたことに意味があるケースも有り得るから)。 
  • この件についてのやりとりでデータ量が膨らむのは避けた方がいいかもしれない。その意味で通知内容についての不明点の問い合わせは電話でよこせ、とするのも一つの手かもしれない。

4.一度だけで良いの?
紛争が続いて、holdをかけている間は定期的にremindする必要がある。頻度については、複数の弁護士に独立で訊いたところ、四半期に一度繰り返す必要がある、ということで一致している模様。いつまで続けるかの判断は法務なり知財しかできないし、上記の諸々の事情を考えると、訴訟をやっている法務なり知財でコントロールするしかない。


5.通知の出し方は?
個人単位での電子メールでの連絡でなく、自社の職制を通じて下ろすというのもひとつの手ではあるけど、途中にいる人が忙しいと、下ろすのに時間がかかるケースも有るし、伝言ゲームになる可能性もある。個人的には職制で下ろすのもやったことはあるけど、フォローアップが面倒だったので、通知を出す側としては電子メールの一斉同報の方が結果的には楽でした。送信対象のメアドの一覧があれば、メール一本で済むので。


…書こうと思っていたことはこれくらい。何かあれば、補足か、別のエントリをたてるかも。


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dtk1970 at 00:57│Comments(0)アメリカ法 | 紛争対応

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