契約書作成の基礎と実践―紛争予防のために / 植草 宏一 (著), 松嶋 隆弘 (著)最近の諸々(2012年11月はじめ)

October 31, 2012

濫用的会社分割ねえ…

たまには判例も読まないとね、ということで(謎)、会社法改正の際にも話題に出てくる、この判例を読んでみたうえでの感想をメモしてみる(単なる感想でしかないのでその前提でお読みいただきたく)。
ちなみに、最高裁のサイトに出ている判例要旨は次のとおり。

株式会社を設立する新設分割がされた場合において,新設分割設立株式会社にその債権に係る債務が承継されず,新設分割について異議を述べることもできない新設分割株式会社の債権者は,詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができる




上記の要旨だけ読むと、分割の際に異議がいえないような債権者は、他に保護の手段がない以上、詐害行為めいた分割に対しては、詐害行為取消権が使えて当然ではないか、という気がしたのだけど、単に僕が不勉強なだけで、民法424条2項の文言とか会社法810条の文言を踏まえての議論があると。で、現状の条文からすると、異議をのべられない債権者に対しての保護が十分とはいいにくいということになって、今回の会社法改正では、その点について手当てをしようとしている、ということらしい。なるほど。

会社分割の使われ方、を見ると、会社分割を使って企業を再建するということはよく行われていて、たとえば以前読んだこの本でもその辺りは紹介されていた。ググって見た限りでは、倒産法上の手続きや公的な制度を使うと、費用が高いとか、申し立ての時点で契約を切られる(確かに契約の解除事由に入れていることが多いし)とかで、中小企業などでは使えないので、密行性があり、柔軟かつ安価にできる会社分割を使っての再建が重要になるということらしい。

とはいうものの、分割後に債務負担を逃れた会社はさておき、債務を背負って存続することになった会社については、がんばって債務を返済するといっても、債務負担は身軽になった会社の分まで背負っているような格好なので、相当きついはずだし、返済に対してのモチベーションとかがどこまで保てるのか良くわからないような気もするし、そうなると、最初からこちらの会社はつぶすという前提で分割手続きを使う人が出てきてもおかしくないのではないかと思う。そういう濫用的というか詐害行為的な分割に対する歯止めは必要なのだろう。

こういうケースへの対応という意味では、詐害的な会社分割への歯止めも重要だけど、会社分割以外の再建手段がもっとあるべきではないかと思う。費用とか手続きについても簡便であるべきだろうし、契約の解除事由として再生の申し立てなどを規定してあったとしても、それに対して何らかの歯止めがかけられる余地を作るとか、そういう方向での対応もあってよいのではないかと思うのだが…。

…とまあ、判例の内容からは離れたことを思ったのでした。以上。


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