原稿とオリジナルの間Live and live

August 24, 2012

ついに出た:紛争鉱物に関するSEC規則

前職のときに話題になって、前職在職中に出るかと思っていたら…今頃になって、というやつなので、あちこちググった結果をまとめてメモしてみる。

USの「紛争鉱物」に関するSECの規則がようやく決まったようだ。施行時期は11月くらい?らしいけど(60 days after publication in the Federal Registerとあるので)規則に基づきレポートを出すのは2013年はじめからということになって、最初のレポートの提出期限は2014年5月末とのこと。


ドッド・フランク法(金融規制改革法)の一部として、すず、タンタル、タングステン、金の4種の金属につき、それらを原材料に使う企業でこの規則の対象になる企業(米国で上場している企業等)に対して、それら金属が、武装勢力が牛耳っていて、これら資源を資金源としているコンゴ民主共和国又はその周辺地域で採掘されたものかどうか調査することを求める規定が設けられたというのが発端。マネーロンダリング対策みたいなものらしい。その具体的な細則は後日決めることになっていたのだが、今回漸くその内容が決まったというもの。これら4種の金属がどういう用途に使われているか、というのはこちらを参照のこと。対象企業が該当のものを使っていると継続的に開示が求められることになる。開示に関しては、日本でも会計事務所とかが対応し始めていて、一例としてPwCのこちら。開示により負担の増える側としては、減らすために自社のサプライヤーにそれらの不使用を求めることになる、というわけで、それがまわりまわって、かの地域への資金流入を減らすという…理屈らしい。

なお、今回の細則が決まる前のものだけど、法案の全体像を詳しく説明したものとしては、こちら(モリソンフォースターのサイト)およびこちら(トーマツのサイト)を参照のこと。

この法律が面倒なのは、直接の適用範囲はUSに上場などしている企業で、日本企業でも含まれるところもあるわけだけど、それだけに留まらず、自社製品で部品または材料等としてこれら金属を含む製品を使っていると、当該製品の納品先(またはさらにその先のユーザー企業)がこの法律の規制対象であると、その部品に関する調査を求められる可能性があるということ。つまり、最終製品のメーカーがこの規則の適用を受ける場合は、その会社からサプライチェーンの流れに乗って調査が来るというわけ。自社が直接金属を買っていない場合は自社の納品先に更に訊き、そこも同様だと…という具合で、全体として相当な手間がかかることになる。サプライチェーンのどこかで情報伝達が途切れそうな気がするが、どうするのだろう、とかまあ、色々問題があったらしい(正直、詳しく知らない)。

今回の規則が決まるのを待つことなく、日系企業、特にNYSEへの上場などにより適用を受けることが確実な企業は既に調査に乗り出し、調査に加えて、これら地域産の金属の不使用を求めてきたりすることもある(東芝の例はこちら)。ちなみに、world-wideでの本件への取り組みについては、こういうレポートもある。冒頭しか見ていないし、調査の精度とかはわからないものの、消費者向けの最終製品からはこれら地域産のものを使わないようにする動きは既に一定程度進んでいるようだ。

個人的には、こういうやり方については、費用対効果の面と、関係地域で暮らす人々に食料がいかなくなる危険についてどういう対応になっているのか、よく分かっていないので、全面的に賛成しかねるような気がしているが、ともあれ、メーカーとしては、関係する場合には対応しないといけない法律であることも事実。

追記の追記)細則も含めた日本語での概要があるのを教わったので貼っておく。
http://mric.jogmec.go.jp/public/current/12_54.html


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