「Ken's Bar」/平井堅「ひこうき雲」/荒井由実

November 20, 2008

えらそうなことは言えないが

合格したからと言って手のひらを返したようにエラソウなことを言うのも好みではないし、そもそもそれほどタイソウな試験か、と聞き返されると疑問もないわけではない(日本の司法試験と比べると、比べるのが失礼なくらいの差があるのは事実)。

とはいえ、アメリカ以外で兼業受験生をやるのは、通常の受験生(要はLLMの後、残って専業受験生をする)とは異なる意味で大変だと思うし(その意味で、通常の受験生が訳知り顔に批評するのは当たらない気がする。だったら同じことしてみろと言いたくもなるが、専業で逃げ場がないところでプレッシャーをかけられるのも、それはそれで大変なんだろうから...)。

そんなこんなを考えて、僕と同じようなこと、つまり海外で兼業受験生をする方向けで、気づいた点についてのメモ。後に続く奇特な人のお役に立てば幸い。
(他に参考になるのは、ひかりさんのところだろう。あわせてご覧いただくと良いと思う。)


(以下、後で適宜加筆修正:この手のエントリは1箇所にしておいた方が便利だろうから)

まず最初に、何故この試験を受けるのか、目的をはっきりさせたほうがいいのではないかと思う。兼業だとそれなりに長丁場になるだろうし、そうなるとどうしても自分のモチベーションの維持は重要になると思うから。特に一人で孤独にやるのはシンドイから。

こういうことを言うとアレだけど、純ドメで、日本の弁護士免許を持っていない人がこの資格を取ることにどこまでの意味があるのか、疑問もなくはない。知っている限りLLM+NYBarで弁護士の仕事をしている人が数人いるが、みな帰国子女で英語がネイティブクラスの人ばかり。英語の壁は純ドメには高いと痛感する。そういう意味で、取ることにどこまでの意味があるのか疑問もあるから、余計に、何故やるのか、は考えておくと良いと思う。受験に行く費用も考えると費用対効果にも疑問は残るし。
(僕の場合は、ここまでやって留学という気がしたのと、あと、Attorney-Client Privilegeを主張しやすくするうえでは、どこかのjurisdictionでの資格を取っておくと仕事上便利だろうということが大きかった。)

精神論的な話はこれくらいで。

日本ではLECが、シンガポールではNUSがBarBriと提携しているらしく、一定の制約はあるものの、DVDかなにかで受講可能。時間はかかるが受講することを検討してもいいと思う。LECでは一部の講義のみの受講は可能。僕はエッセイ科目の大所と思われるところ(NYPractice, Will, Trust, Domestic relations, Corporations)とMBEで苦手なCriminal Law,Criminal Procedureを取った。講義を聴くのは時間がかかるので、どのくらいの時間があるのか、との見合いで受講を検討してもいいと思う。ただ、ハンドアウトが聴く際の手がかりになるので、ハンドアウトがないと分かっている科目は避けてもいいかもしれない。
(追記:Willsだけは受講する予定で料金も払ったが仕事の関係で全部は聴けなかったと思う。)

BarBriを聴かなくても、MBE科目については、いわゆる「ミシガンノート」とか言うきちんとしたノート(僕が使ったのは2001年度作成の模様)で足りるかもしれない。また、BarBriのハンドアウトと空欄を埋めたノートが出回ることがあるので、それがあるとそもそも受講しなくてもいいかもしれない。年によって講義内容は若干変わるかもしれないので、前の年のものは万能ではないにしても、あると講義を聴く上でも有用なことには間違いはない。とはいえ、僕も含めて、まったくBarBriの講義を聴かずに合格したという日本人の方の話を聞いたことがないので(台湾人の友人で一人そういう人はいるが、彼女もBarBriの中古のテキストを使って勉強していた)、何らかの形でBarBriの講義は聴くことを考えたほうが良いのだろう。

また、講義はさておき、テキストは、というと、時期によってはLECで新品のテキストだけ購入可能だし、PMBRはそもそも新品のテキストを普通に売ってくれて、日本にも送ってくれるらしい。僕は個人売買or eBayで中古を買って使ったが、他人(特にアメリカ人)が書き込みしたものは使いにくい。新品のテキストが入手可能と知っていれば買わずに済ませたのだが、気づいたのが遅かった。

教材で使ったのは、今回は次のとおり(2005年版を使ったので、今のものと構成が変わっているかもしれないがご容赦ください)
1.BarBriのMiniが辞書代わり(厚いし、範囲がこれでも広すぎるという批判はあるかもしれないが、中途半端なノートよりは実は読みやすいということに最後の方で気づいた)。

2.MBEについては、まずはBarBriのIntermidiate。解説もPMBRよりはまとも。
次にPMBRの赤と青。赤の解説は時々ヘンなことがあり、青の解説の方がまともな気がしたが、青の方が扱う範囲が狭いので、赤をまずやってから青だろう。
最後にMBE Annotated Preview 2006試験問題を作っているところが作っているだけのことはあると思う。長さも試験と同じくらいだし、解説もまっとうな気がする。

3.エッセイについては、BarBriの黄色いNY本を読んだくらいで、実際に答案を書く練習はしなかったが、答案を書いていて思ったのはインプット不足であって、書く練習をしなかったことに問題は感じなかった。IRACルールに従って、簡単な英文で書くだけなので、LLMを終えるくらいの英語力があれば、むしろインプットをきちんとしておく方が重要なのだろう。
とはいうものの、インプットの仕方については、よく分からなかった。問題の答えだけをみて、Ruleにあたりそうなところを抜書きしたものを黄色い本の100問のうち70問分くらい、最初に受験したときに作ったのだが、今回はBarBriの講義を聴くのとそれを見直すくらいしか出来なかった。MBEの正解率が上がらずにMBEを切り上げられなかったのと、直前は北米某所へ出張に行っていたので、十分な追い込みが出来なかった。

インプットという意味ではSeperac.comのMaster(2005年版はFree)を見てもいいのかもしれない。公開されている過去問の答案例からルールの部分を抜き出したもののようなので。

4.MPTについては、一問分くらい眺めただけ。これこそ本当に何をしたものか分からなかった。

5.NYマルチはBarBriの黄色い本の問題を一日かけて全部解いたくらい。それもどこまで役に立ったか不明。

あと、余計なことかもしれないけど、よその国から受験に行くとなると、オルバニーまで行くのは正直シンドイ。ラップトップOptionでマンハッタンで受験することが出来るなら、それを使わない手はない。オルバニーだとホテルも取りにくいし、行くのに時間がかかる。その移動の時間を節約して、その分勉強に充てるか、仕事を休む期間を減らすかしたほうが良いだろう。シンガポールから受けに行ったときは、オルバニーに行く前提でその分の時間も込みで休みを貰ったが、行かずに済んで、時差ぼけの解消とか勉強とかに使えたのは良かったから。

それからラップトップの方がcopy&pasteが使えることも便利な点の一つ。日本語OSのPCでも、ソフトのインストールは何とかなった。

長々書いたが、理由はどうあれ、苦難の道を選ばれた方の幸運をお祈りする次第。個別に質問があれば、メールフォームでご質問いただくと回答できることがあるかもしれない。


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