September 30, 2014
BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2014年 11月号 [雑誌]
既に企業法務戦士の雑感さんで、丹念に読まれたエントリが上がっているので、完全に出遅れた感があるのだが、いつものごとくBLJの記事の感想をば、順不同で手短にメモ。一部既につぶやいたことと重なるがご容赦あれ。
個人的に一番目を引いたのは、例によって電子メールの記事。最近は短めのこの連載から読むということが多かった。動詞としてのinconvenienceの使い方、hopeの使い方、apologizeを使うとしても何に対して謝るのか、というあたりについての指摘は、なるほど、と思うことが多く、参考になると思った。もちろん、そう思うだけではダメで、日常的に使いこなせるようにしないといけないのが難しいところだけど。
クボタさんの法務の紹介。審査込みとはいえ、人数が多いな、と。過去の負の遺産に関係する諸々のお話(アスベストとかの件が脳裏をよぎるのだけど)があったからだろうか。*1
弁護士・法科大学院修了生の採用動向については、僕自身の今の立場だとあまり関係ないのだが、各方面の声を丹念に収集されているのが素晴らしいし、そのあたりに関わりのある方にとっては必読だろうと思う。なかでも、企業の法務と、学生側と相互に理解が不足している、というユニリーバの中川さんの指摘は重要に思われた。*2 全体のトーンがポジティブな要素に光を当てているということもあってか、それが悪いとは思わないものの、企業に勤めるということには一定のマイナス面もないとはいえないと思うから、その辺を嫌って戻る人とかの声も拾えるとさらによかったのではないかと思ったのでありました。組織で自由に動けないこととか、自主独立みたいな要素はないので、その辺に違和感を覚えるというパターンもありうると思うので*3。
英文契約の記事については、確かに損害賠償の上限については、一旦事が生じれば、非常に重要な機能を果たす可能性があるので、慎重に考えないといけないところであり、その意味で次回の続編も含めて期待。とはいえ、この条項について、個々の事案と切り離して単体で議論すると危険な気がするということも感じるところ。ビジネスのありようによっては、取れるリスク・とるべきリスクも異なると思うので、その辺についての考え方とかみ合った形で議論しないと、生産的な議論にならないように思われるし、個人的にはそういうことにならないよう常に自戒しているところではあるのだけど。
海外案件についての話は、法務担当者の生の声をこれまた丹念に拾っているあたりは、いつもながらにさすがというところ。こちらの現下の立ち位置との関係では、この種の話題については、一部を除いてすっかり縁遠くなってしまった感もあるが、それでもサードパーティ周りの話とかは興味深いというか、過去に関与した案件でこのあたりについて議論になったこともあり、参考になるなと思ったのでありました。
債権法改正の記事は、図表もわかりやすいし、このタイミングでこの内容の記事を出すというところは、執筆者・編集部双方の能力の素晴らしさを実感する。中間試案以後に「落ちた」項目についての言及があるのも有用。債権法改正については、「ヨーイドン」で各誌に記事が載ったので、図らずも各社の編集部の能力の差(書き手の見つけ方、お願いの仕方などなど)が如実に出たというところなのかもしれず。
独禁法の道標の、独禁法とリベートの話は、今まであまり業務上リベートについて考える機会がなかったので、リベートの持っている多面性・学際性(というべきか)とそれゆえの対応の難しさにまず驚かされた。
*1: クボタさんについては http://www.jpwa.or.jp/jpwa/pdf/kaihou04_09.pdf?20131001 を見つけた。 ついでに講演者の法務部長さんはどうなったんだろう、と思った(BLJには別の方が出ていたので)ら、総務部長になられていたんですな。 http://www.kubota.co.jp/new/2014/jinji14-5.pdf *
2: それを改善する試みについては、かの会社のトップがジェネラルカウンセル兼任であって、トップの理解があるから、できるという側面があるように思われることも、留意しておくべきことなのかもしれないが。こういう動きは、法務単体でできるようなことではないと思うので。
*3:まあ、それを上回る経済的、または、その他のメリットがあるということなのかもしれないけど、皆さんがそれのみで動くというのも、いろんな意味で問題があるように思うのだけど。
最後に例によって本家から目次の引用。
[特集]トラブル事例に学ぶ 海外案件のリスク要因
紛争・訴訟に至るトラブル
井口直樹 弁護士
サードパーティに関わるトラブル
武藤佳昭 弁護士
アジア現地企業との取引に関わるトラブル
江口拓哉 弁護士
知的財産に関わるトラブル
中町昭人 弁護士
[CASE01]契約時に予期できなかったトラブルと事後の改善策
機器メーカー 法務担当者
[CASE02]提携契約終了をめぐるトラブル
医薬品メーカー 法務担当者
[CASE03]紛争解決に必要な行動力
IT企業 法務部長
[CASE04]顧客と船会社の間でデッドロック
機械部品メーカー 法務担当者
[Focus]企業における弁護士・法科大学院修了生の採用動向
[ARTICLE]
法科大学院生との相互理解をいかに進めるか 企業法務の草の根活動事始め
中川裕一 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス 法務グループ リーガルマネジャー
[COMMENT]採用者側からの視点
有資格者も法務専門職の「一社員」として採用
コマツ 真壁 宏 法務部長
学部卒中心の採用に回帰する可能性も
メーカー 法務マネージャー
即戦力として30代経験弁護士がターゲットに
メーカー 法務部長
新卒者受入れの難しさを実感
IT 法務マネージャー
[INTERVIEW]法科大学院生に法務部門はどう見えているか ―企業からの5つの質問
奥邨弘司 慶應義塾大学法科大学院教授
[INTERVIEW]経験弁護士のインハウス転職事情
西田 章 弁護士
[COMMENT]法律事務所から企業に移った弁護士
小規模事務所からの転職 これからも企業で働きたいと思える理由
IT / 外資系コンサルティング / 情報・通信
中規模事務所からの転職 未経験分野の求人に挑戦し希望を実現
メーカー
大規模事務所からの転職 時間管理で感じる変化
メーカー
法務部門 CLOSEUP
クボタ 法務部
山浦勝男 法務部長
緊急解説
民法改正 要綱仮案のポイント
有吉尚哉 弁護士 / 善家啓文 弁護士
実務解説
権利無効等のリスクに特許(ノウハウ)ライセンス契約でどう対応すべきか
清水扶美 弁護士
ビジネスを促進する 独禁法の道標
リベートをめぐる独禁法上の問題
島崎伸夫 東京国税局 調査第一部 国際調査審理官・弁護士
裁判例から学ぶ 対症法務と予防法務
責任財産の保全策 ─債権者代位権(3)
滝澤孝臣 日本大学法科大学院教授・弁護士
英文契約書 応用講座
損害賠償額の制限
山本孝夫 明治大学法学部元専任教授
STRATEGIC ENGLISH
賢く謝る
大森都史春 英国系IT会社 ジェネラルカウンセル
Global Business Law Seminar
企業の内部不正調査に有効な
コンピュータ・フォレンジック技術・手法と活用事例(上)
守本正宏 UBIC 代表取締役社長
連載
Opinion
櫻井敬子 学習院大学法学部教授
INSIGHT
小林健一 日本経済新聞社
Q&A 法務相談の現場から
高瀬亜富 弁護士
企業会計法Current Topics
弥永真生 筑波大学大学院教授
源流からたどる 翻訳法令用語の来歴
古田裕清 中央大学法学部教授
牛島信のローヤー進化論
牛島 信 弁護士
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編集後記・次号予告
dtk1970 at 23:00│Comments(0)│雑誌