こちらのネットへのアクセスが限定的ということもあり、反応が遅れたのだが、某所で見かけた、プラットフォーム上での契約書の締結交渉、というアイデアについて、考えたことを五月雨式でメモしてみる。メモの内容が長くなったので、こちらで失礼する次第。



現時点での個人的な結論は、一定程度で広まるかもしれないけど(使うのがイカンと言うつもりはない。念のため)、全てを置き換えるのは難しいのではなかろうかというあたり。理由として考えるのは以下のとおり。現時点ではそもそもクラウドといっても内容についての標準化がどこまで進んでいるのかよく知らないけど、その辺を仮に何らかの手段としてクリアしても(ついでに、使う側のリテラシーの問題もクリアしたとしても…ってここも、そう簡単にクリアできるかどうかは疑問だけど)、残る問題がいくつかあると思う。

まず、そもそも第三者がその内容を知りうる状態におくことを良しとするかどうか、漏えいのリスクとの兼ね合いが問題なのではないか。プラットフォーム業者が行っているビジネスと競合するようなビジネスに関するものについては、その内容を知ったことにより、先を越されるリスクは排除しきれないのではないだろうか。中を見て先を越されたのではない、ということはおそらく証明しにくいか、証明不能なのではなかろうか。この辺は次の点もあわせて、会社としてのリスク管理体制というか、リスクに対する許容度如何というところがあるのではないだろうか。

もう一つは、プラットフォーマーという第三者に対するデータの差押え対応の問題。自分が当事者ではないから、あっさり開示に応じてしまう可能性もあり、それに対するリスクは、プラットフォームにおける技術とか品質の問題で何とかなる話ではないような気がする。

さらに、もっと素朴な疑問として、この種のサービスでは、ホントに自社に有利になるの?というのがある。おそらく、この種のサービスの利用が推奨されるのは、一定程度交渉ステップを踏めば合意に至るのが見えていて、そのステップを加速するのにこの種の仕組みが有用だから、ということになるのではなかろうか。ただ、契約交渉はすべてそうともかぎらないのではないか。

交渉上不利な立場にあるようなときに、契約外の制約要因から生じる時間の制約に基づく時間切れ(契約の履行が間に合わなくなる)のタイミングを使って、なんとか合意にこぎ着けるような種類の戦術や、仮に返事をする用意があっても、返事をするタイミングを意図的に遅らせるような交渉の戦術を使うことだって時にありうる(というか、そういうものも見たことがないではない)と思う。

そういう状況下で、この種のツールを使っても、時間いっぱいもめることには変わりはなく、逆に上記のような遅延戦術を弄して、論点にせずに済ませる、などの技が使いにくくなることにこそ、デメリットがあるという結果にもなりかねないのではなかろうか。交渉が加速された結果、余計に不利な立場に追い込まれることだってあり得ないとは思いにくいのである。

ある一定の範囲でそういう事態を想定した場合、そういうことが生じそうな特定の相手との間とはプラットフォームを使わずに、別の相手との間ではそれを使うという対応は、不一致を突かれた場合の説明がつきにくいので、一律拒否をデフォルトにせざるを得ないのではなかろうか。まあ、断る理由としては、既に挙げたもので十分な気がする。プラットフォーム側からの働きかけが仮にあっても、上記のような事態が何かあったら、プラットフォーム側で全部責任とってくれるとは正直思えない。そんな利用規約にはなっていないだろうから、それを理由に断るということもあるのではなかろうか。