迷いの中最近読んだ雑誌から(2013年10月はじめ)

September 30, 2013

セミナー:メンタルヘルス対応

たまには、きちんとした法務らしいことを書いてみようかと(おいおい)。

当日の昼にリマインダーがPC上にでて思い出す、という危なっかしい状態だったけど、経営法友会のセミナーに出席。雇用者側の弁護士を長らくされている先生が、従業員のメンタルヘルスと労務対応、というような感じの内容を解説。

特に気になったところをメモしてみると次のような感じか。
  • 精神障害の労災認定基準が平成23年12月に制定されたが(資料)、迅速な労災認定を可能にするために、従前の「判断指針」よりも、個別具体的に規定が設けられている。ただし、その内容については、画一的に運用された場合、労働者にとって労災認定が得られやすい内容となっている。
  • 労災認定が得られやすいことそれ自体は、必ずしも問題というわけではないが、労災認定と会社に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求とが本来は別の問題であるにも拘らず、事実上リンクしているために、雇用者側にとっては労災認定がなされることが(表現としては問題があるかもしれないが)リスクとなりうる。裁判所も、労災認定基準に拘束されないはずなのに、それを尊重する傾向がある。
  • 長時間労働対策という面では、適正な把握と長時間労働の抑制が重要。前者については、前記の労災認定基準の中でも特に重視されていることもあり、労務時間管理については、いわゆる「適正把握基準」があることと合わせ考えると、自己申告ベースよりもタイムレコーダーなどにより客観的な形で行う方が安全だろう。
  • 最近の判例・裁判例を見る限り、裁判所も労災認定基準は重視しているし、加えて、裁判所は、メンタルヘルス対策及び労働時間管理の文脈では、労働者に対する会社側の積極的な関与を求めているとも理解できる(日本HP事件など:従業員のプライバシー保護との整合性との関係で疑問が残るが)。





企業の一法務担当者という観点からすれば、労災認定が簡単に出ることは、安全配慮義務違反の損害賠償につながる可能性がある以上、リスクという面があるのは否定しにくいように思う。
ただ、もう一方で、「ブラック企業」による労働者の酷使が喧伝されている中で、迅速な救済が得られるようにするという意味では、上記のような認定基準の運用はやむをえないのではないかという気がした。
むしろ問題は、それが本来要件も異なるはずの安全配慮義務違反の認定に安易につながっているところ、なのではなかろうか、という気もする。
ただし、この辺も、労災で救えない分の損害(慰謝料とか逸失利益とかは労災では出ないらしいので)を救うための措置と見るのであれば、現下の状況では、これまたやむを得ない面があるのではないかという気がしないでもない…。
  

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