アリコジャパンの競業避止義務違反が争われた裁判例を読んでみたので感想などをメモ。地裁では競業避止条項違反による退職金の不支給についての条項の有効性が否定されたが、高裁でも、その判断が維持されて控訴棄却となっていた。

(外資系企業の労務関係の事件というと、どうしても気になってしまうのだった...。)






事案を見ると原告は日本法人の執行役員ということなので、それなりに上のポジションの方のようで給与も、金融系としては高くないのかもしれないけれど、それなりの 金額になっている。とはいうものの、その他の実態からして労働者性は認められた。所詮と いうと語弊があるかもしれないけど、現地法人ということで、個人的には納得するところ。

今回問題になったのは、問題となった原告の転職行為が文言上、競業避止条項の違反になることにはあまり争いがなかったせいか、競業避止条項違反による退職金 の不支給についての条項の有効性であり、これについては、条項を定めた目的が目的に対して手段が過大で正当ではない(不正競争防止法上の営業秘密の存在の 主張もなかったところからすればやむを得ないのかもしれない)、競業禁止を定めた業務範囲が広範過ぎる、転職禁止期間が長すぎる(2年間が長いという判 断)、地域限定がないのも不適切、代替措置が十分だったとはいえない、等として、当該条項の有効性が否定された。これらの点についての判断は高裁でも維持 されている。

判断の内容については事案からすればそれほど驚くようなことはないのかもしれないけれど、個人的に気になったところが2点。

(1)2 年という競業避止期間が、新製品の設計販売のスピードに比して長すぎるとされているところ。業界の「中の人」ではないので、事実認定の当否についてはわからな いものの、競業避止期間については、2年が最大、いうような一般論めいた話も聞いたことがあったので、場合によっては2年でも長すぎるとされているところ が印象に残った。もっとも、本件においては、その他の点もあって、期間が2年なかったからといって、結論が変わったかというと疑問の余地がある(変わった かもしれないし、変わらなかったかもしれないという意味で)ようにも思うが。

(2)本筋と関係ないのだけれど、もともとの競業避止条項の解釈につ いても、当事者間で認識の齟齬があった点。いずれの解釈に従っても、今回の現職の転職が違反になるということのようで、本件訴訟の本筋とは関係してこない ものの、米国親会社で作ったものを翻訳してローカライズするという作業をよくする立場としてはその辺りも気になった。