下北沢にてCD/ラジオプレーヤーが壊れた

July 06, 2013

企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術/ 四方藤治 (著)


遅くなったが読み終わったので感想などをメモ。
一言で言うと、事業会社でM&Aに関わる法務担当者にとってはおそらく必読(メーカーであれば間違いなく必須)の一冊。もっとも、一定の知識があることを前提にしているので、いきなり読むのはシンドイだろうが...。(*)

日産で200件以上のM&A案件(ほとんどがクロスオーバー案件)に関わられた著者がM&Aに関する要所について解説するもの。守秘義務の問題があり、具体的な案件に関わる記載は出てこないものの、企業の中でM&Aを取り仕切っていないとかけないような実務上のポイントについての解説が有用。法務、財務、税務、人事、知財、環境などなどの個別の分野に断片化されず、統合的に俯瞰するような形での解説及び外部専門家の起用の仕方についての説明は、おそらく「中の人」でないと書けないであろう。


現場でまず有用なのは、第2章の「効率的なM&Aのための実務プロセス」だろう。個別のスキームごとにどういう点に気をつけるべきかを、プロジェクトのストラクチャー、対象事業の事業体制、法務、財務・税務、人事・労務などそれぞれの視点で見た場合の解説は、非常に有用だと思う。論点の指摘にとどまるところが大半だが、個別具体的な対応が必要なのが大半だろうから、それはそれで妥当なのだろう。あわせて「商流、物流、情報流、資金流」の4つの流れから業務プロセスを分析して事業内容を把握する手法についても有用だと思う。

加えて序章及び第1章におけるM&Aの基本的な考え方の押さえは、M&A活動(総合格闘技、というのは言いえて妙ではないかと思う)をしていく中で、見失いがちになりそうなところをしっかり抑えておく意味で重要だろうし、第3章の企業価値についての議論や、第4章のコーポレートガバナンスについての議論も、M&Aを考えるうえでの根幹に関わる部分についてのもので、僕自身はその内容の当否について論じられるものではないが、これまた読んでおいて読んでおくべき内容だと思う。

最後に個人的になるほどと思ったところをひとつだけメモ。

自動車メーカーと部品メーカーとの間での「系列」の解体がもたらした新しいディレンマとして指摘されている次の諸点は興味深かった。機能的な意味でM&Aを「組織デザインの再設計」と見る著者の立場からすれば、この種の問題が生じるのもある意味不可避なのではないかと思うのだけど、この種の問題は自動車に限らず製造業全般に程度の差こそあれ、共通で当てはまるのではないかと思うし、この種の取引で、この事情への理解を欠くと的外れな物言いに終始するのではないかと思う。
自動車メーカーと部品メーカーとの間には、何らかの長期的な関係を構成せざるをえない、次のような事情があります。

①流動的な競争市場の中で、すべての将来の状況を事前に想定し、また、当事者間ですべての条件を合意した「完全な契約」は存在しえないこと。
②取引期間が10年以上の長期であること(部品供給開始の前に、2~3年の車両開発期間があり、生産用の部品の供給打切り後、サービス用部品の供給期間が少なくとも5~6年ある)。
③車両開発は現行型より次期型へ連続することが多く、構成部品や機構の開発業務の関係も連続すること。
④自動車メーカーと部品メーカーのの間には共同開発関係が多く、長期的に密接で迅速な情報おnやり取りが不可欠なこと。
⑤関係特殊的投資が必要とされ、多くの部品が代替品の発見が容易でないこと。


*ある程度経験を積んでから読むほうがよりよく理解できるように思われる...ということをエラソウにかけるほど経験が僕自身にあるかどうかは自信がないが、M&A案件を何件か(数的には微々たる数だが)経験した今でなければ、おそらく内容の大半は理解できなかったと思うのも事実。


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dtk1970 at 10:48│Comments(0)書籍 | M&A

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