点し火のように/Sing Like Talking概要付き、を読んでみる(6)

April 13, 2013

憲法の創造力 (NHK出版新書 405) / 木村 草太 (著)


「キヨミズ准教授の法学入門」で言及されていた「次回作」が出たので買って読んでみた。時事ネタを使った憲法入門という感じ。 新宿紀伊国屋で買ったのだが、店内アナウンスでも宣伝していて、ちょっとびっくり。 一般向けの憲法入門書ということになっており、確かに憲法の知識はなくても読めるとは思うけど、前提としている一般的な教養レベルは高いような気がするので、注意が必要かもしれない。




それぞれの章では、時事ネタから憲法のそれぞれのエリアの論点へ話が及び、その論点に対するよくある見方に対し多様な角度からのコメントが提示されている。その意味で著者が願う「楽しい読書体験」は提供できていると思う。

個人的に興味深かったところをいくつか、メモしておく。

序章:権利保障のコスト、ということへの言及は、考慮すべきことの割りにどこまで考慮されていたのか疑問に思えるところなので、興味深かった。

第1章:君が代訴訟で、教職員に対するパワハラという観点が出てくるとは…と思ったのは確か。でも、指摘には納得。

第2章:一票の格差訴訟については、投票価値の平等の観点から個人的には支持するものであるが、その一方で、その背後には、不平等により優遇される地方住民に対する、優遇されない都市住民の不信や不満があるという指摘には一定程度納得。ただ、平等であることそれ自体に価値を見出している場合は、そういう議論以前の問題ではないのか、という気がするのも事実。

第3章:裁判員制度が苦役である可能性については、強く同意する。職業裁判官と違い、待遇が恵まれているわけでも、身の安全が確保されているわけでも、所得の面でも恵まれるわけでもないのに、重い決定をする責任を背負わされて、決定過程では接したくもない不愉快な情報に接することを余儀なくされる可能性があり、さらには面倒な守秘義務まで負う、裁判員は苦役であると見るほうが自然だと思うので。

第4章:政教分離との関係では、日本的な多神教が、それ以外の宗教に対する無意識の冒涜を生じさせたり、国家により利用される可能性があるというのは、納得。

第5章:生存権保障と東日本大震災対応に関して、社会住宅の確保と提供が25条1項の要請と見るべきという指摘には納得。尊厳の実現まで含めての生存権保障と見るのがやはり妥当なのだろう。
救貧政策については、指摘には納得だけど、もうひとつ、救貧政策には、食い詰めて犯罪を犯すという結果になるのを防ぐ可能性があり、それゆえに救貧政策の対象者ではない社会全体に恩恵をもたらすという面があるのではないか。

第6章:公務員の政治活動の禁止については、公的領域の私物化を取り締まれば十分という指摘に納得。

終章:9条が、現在では国際法の基本原則を確認するもので、異常なものではないという指摘は、なるほどと思うのと、それだけにとどまらず、日本国が非武装を選択できる世界の創造を要求しているという奥平教授の指摘の紹介は、その実現可能性は何とも論評できないけど、興味深い。

文献案内:岩波の芦部先生の本について「内容が薄く、曖昧で煮詰まっていない記述も多い」と斬っているのがさすがというかなんというか。

最後に、入門書ということであれば特に、だけど、憲法の全文を掲載してもよかったのではないか。確かにネットに出ているけど、法律の専門書じゃないんだから、いちいちネットを検索することを読者に求めるのはどうなんだろうという気がした。



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dtk1970 at 18:42│Comments(0)書籍 | 公法系

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