米国での訴訟における提訴後・トライアル前のディスカバリ手続き全体について書かれた本。特許訴訟への対応を想定して書かれている部分もあるけど、それ以外の訴訟との関係でも有用なのではないかと思う。資料で関連用語の説明や、適用条文の原文、サンプルフォーム(英語)がついているのも理解を助けてくれると思う。
ディスカバリというといわゆるeディスカバリについて議論がなされがちだが、それ以外の部分も含めた、提訴後かつトライアル前の開示手続全体について、関連法規の原文にアクセスしやすい形を保ちつつ(今ならネットで検索は可能だがいちいちしないで済むのは便利)、重要な判例についてのサマリーも付しつつ、解説があるのがよい。また、FRCPに基づく話に終始しがちなところ、連邦法に基づくディスカバリとは別の州法に基づくディスカバリや、仲裁を含むその他の手続きにおけるディスカバリ類似の手続きについても、FRCPに基づくものとの差異のあり方の大まかな傾向等についてコメントがあるのも有用かもしれない。
前に紹介した関戸弁護士の本が訴訟手続き全体についての解説なので、この2冊を併用して読むのがよいのではないだろうか。

日本語の書籍ということで、日本企業が直面するであろう、日本企業特有の問題点についての一定の解説もなされている。例えば、「外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法」に基づく手続きについての話とかも、不勉強で、今まで知らなかった。あと、ディスカバリ違反に対する制裁との関係では、社内弁護士に対する制裁例もあり、適用規定上は日本企業の法務担当者で米国弁護士資格者も対象になりうる、というのは、自分自身、注意をしなければ、と思ったところ。

ひとつ気になったのは(前から気になっているのだが)、litigation holdが出てからあとについては、電子メールの自動消去プログラムの停止、をする必要があるというのだが、サーバー上にある場合には、正直難しいのではないかということ。関係者に含まれる特定個人についてのみ、そのプログラムを停止できるのか、技術に疎いのでよくわかっていないからそう思うのかもしれないが、もしできないとなると、一日数G単位でトラフィックがあるところで、全体を止めるということになりかねず、削除しないでデータを保管する受け皿をどうやってつくるのか(しかもholdの時点では、いつまで保管しなければいけないのかわからないはずだから、あとどれくらいディスク容量がいるのかも予測がつかないわけで…)、よくわからない。まあ、各自のローカルに落とさせて、という対応をするのだろうけれど…。

最後に余計かもしれない一言を。著者お二方は国際商事法務誌に、この内容の連載をもたれていたように記憶しているし、巻末の著者紹介でもその旨は触れられているのだが、この本がその連載を基にしているのかどうかについては、記載がない。この本自体も版元が別なので、その辺りで何か「大人の事情」があったのか、ちょっと気になった。