ヨコメシ足の速さについて

January 31, 2013

変更の制限についてのメモ

前にエントリにした、「メーカーっぽい」条項についてのメモの続き。今回のお題は、別の文脈で既にネタにしたことがあったかもしれないが、製造工程などの変更に関する規定。製品の売買契約(及びその他の契約との複合形態のもの)において含まれる条項で、最終製品ではない、その一部になるようなものを作っている会社(僕の今の勤務先とかもそう)にとっては、実務的には重要な規定だと思われる。

具体的な規定の仕方の例を一つ挙げると、こちらの契約の次のようなもの。

9.2 Engineering or Manufacturing Changes.

(a) Supplier shall make no change to a Product that would affect the form, fit, or function of such Product without having obtained the prior written consent of CUSTOMER, which consent shall not be unreasonably withheld.


規定の内容について、もうちょっと具体的に言うと、製品の製造に関する一定事項の変更に際して、買い手側に事前連絡(または変更の承認)を要するというような規定。買い手側の品質確保の観点から規定されることが多いように思う。買う側での部品とかの選定には、テストに、長い時は1年以上とか平気でかかることもある。そこまで手間をかけたにも拘わらず、一旦採用された後で、勝手に製造プロセス等を変更されて、品質に影響が出 たのではたまらないから、その辺について状況を把握できるようにしておきたいというのは、買う側の論理からすれば、当然かもしれない。




一方で、売る側としては、上記の買う側の品質管理部署の人の言い分であるのに対して、買う側の購買部署は絶え間なくコスト削減を求めてくることが多い。コスト削減という意味では、人件費等を節約するために、特にプロセスが安定しているものについては、プロセスの国内から海外への移管、特に、よりコストの安いところ(中国から更にはChina plus oneの国)への移管ということも、このご時世では、選択肢に入れておく必要べきなのだろう。そういう状況下で、いちいち承認とかが必要でそれに1年とか時間を費やしたのではたまらないと言いたいところである。
(もちろん、コストだけの問題にかぎらず、災害対応で、製造プロセスの移管を余儀なくされるという事態も生じるのだが)。

もっとも、プロセスの移管の際にトラブルが起きる可能性があるのは事実なので、何も規定なし、というのも正直厳しいかもしれない…。

落とし所の考え方としては、相手方(通常は買主)に通知または承認を要する範囲について、上記のように形態、適合性、機能に影響が出るものに限る(これらの点に影響が出なければ通知または承認を要しない)とか、いわゆる4M (Man, Machine, Material, Method)にするとか、さらに製造場所や下請業者の変更までも含めるかというところで調整を試みるとか、それとは別に、承認を要する項目については、上記の例のように、不合理な不承認はしない、合理的な変更は承認する旨を記載するとかになるのだろうか。


このエントリーをはてなブックマークに追加
dtk1970 at 22:30│Comments(0)契約法務 

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
ヨコメシ足の速さについて